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2005.02.27

書類閲覧等請求事件(最高裁判決)

判例 平成16年10月04日 第二小法廷判決 平成14年(受)第1289号 書類閲覧等請求事件


『要旨:清算の結了した株式会社の利害関係人は,商法429条の規定に基づき,同条後段所定の保存者に対し,同条前段所定の帳簿及び重要な資料の閲覧又は謄写の請求をすることはできない』

内容:  件名 書類閲覧等請求事件 (最高裁判所 平成14年(受)第1289号 平成16年10月04日 第二小法廷判決 破棄自判)
 原審 東京高等裁判所 (平成13年(ネ)第6349号)

主    文
1 原判決のうち上告人敗訴部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。
2 被上告人の原判決別紙保管書類リスト記載の帳簿等の閲覧及び謄写の請求を棄却する。  
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         

理    由

上告代理人米川耕一,同櫻井滋規の上告受理申立て理由第2について
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 株式会社A(以下「訴外会社」という。)は,平成10年11月15日に開催された株主総会の決議により解散し,上告人がその清算人に就任したが,平成11年6月14日には,その清算が結了した。
 (2) 上告人は,平成13年5月25日,商法429条後段の規定に基づき,東京地方裁判所により,訴外会社に係る同条前段所定の帳簿並びにその営業及び清算に関する重要な資料(以下「帳簿・重要資料」という。)の保存者に選任され,原判決別紙保管書類リスト記載の総勘定元帳,確定申告書控え,株主総会議事録,取締役会議事録等(以下「本件保管帳簿等」という。)を保管している。
 (3) 訴外会社の設立時から解散時まで,被上告人はその株主であり,Bはその代表取締役であった。
 2 本件は,被上告人が,上告人に対し,商法429条の規定に基づき,又は訴外会社の代表取締役であったBと被上告人との間で成立したと主張する帳簿等の閲覧謄写についての合意に基づき,本件保管帳簿等の閲覧及び謄写を求めるなどの請求をする事案である。
 3 原審は,次のとおり判示して,被上告人の請求のうち商法429条の規定に基づく本件保管帳簿等の閲覧及び謄写の請求を認容すべきものとした。
 商法429条は,文言上は,利害関係人の保存者に対する帳簿・重要資料についての閲覧謄写請求権を規定していない。しかしながら,同条が解散した株式会社の帳簿・重要資料を保存することとした趣旨は,当該会社の存続中における業務執行や解散後の清算手続の適否を利害関係人において検証し,その権利ないし利益が侵害された場合には,清算人に対し,その責任を追及することを容易にし,ひいては当該会社の存続中における業務執行や解散後の清算手続の適正化に資することにあるとみられるから,当該会社とかつて利害関係を有した株主等の利害関係人は,同条により,保存者に対し,帳簿・重要資料の閲覧及び謄写を請求することができるものと解すべきである。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 商法429条は,その前段において,解散した株式会社の帳簿・重要資料を清算結了の登記をした後10年間保存することを要する旨を定め,その後段において,その保存者は,清算人その他の利害関係人の請求により裁判所が選任する旨を定めている。
 帳簿・重要資料には,商法上作成が義務付けられている会計帳簿等はもとより,確定申告書の控え,株主総会議事録,取締役会議事録,更には,営業,清算に関し授受をした信書又はその控え等に至るまで,営業及び清算に関する重要資料全般が含まれるが,同条は,当該株式会社の清算に関して後日紛争が生じた場合等に備え,これらの資料を一定期間証拠資料として保存する義務を保存者に課したものと解される。
 商法は,帳簿・重要資料に含まれる株式会社の会計帳簿等については,一定期間の保存義務を課すとともに(36条),総株主の議決権の100分の3以上を有する株主に限り,理由を付した書面により閲覧又は謄写の請求をすることができるものとし(293条ノ6),当該株式会社が,この請求を拒否し得る場合についても明確に定めている(293条ノ7)。また,株主総会議事録,取締役会議事録についても,その閲覧又は謄写の請求については,備置き義務を定めた規定とは別に,請求者の範囲,その要件等を定めた規定が置かれている(244条6項において準用する263条3項,260条ノ4第6項)。そして,当該株式会社が解散した後においても,同法430条2項の規定により,上記各規定が清算人に準用され,清算中における会計帳簿等の閲覧又は謄写の請求について,解散前と同様の制約が定められている。
 上記のとおり,商法は,帳簿・重要資料に含まれる上記資料の閲覧又は謄写の請求については,当該株式会社の解散の前後を問わず,保存義務や備置き義務を定めた規定とは別に,対象となる資料の種類に応じて,請求者の範囲,その要件等を定めた規定を置いている。ところが,清算結了後の帳簿・重要資料の保存義務を定めた同法429条の規定は,前記のとおり,上記保存義務と保存者の選任について規定しているだけで,その閲覧又は謄写の請求について規定するところがなく,また,同法430条2項のような準用規定もない。このことと,上記の帳簿・重要資料には,会計帳簿等はもとより,営業及び清算に関する重要資料全般が含まれ,これらの資料の中には,当該株式会社又は第三者の営業秘密等の清算結了後においても秘匿することを要する情報が記載された資料が存在し得ること等にかんがみると,商法は,清算結了後の株式会社の帳簿・重要資料についての閲覧又は謄写の請求については,これを認めていないものと解するのが相当である。
 したがって,清算の結了した株式会社の利害関係人は,商法429条の規定に基づき,同条後段所定の保存者に対し,帳簿・重要資料の閲覧又は謄写の請求をすることはできないものというべきである。
 5 以上と異なる見解に立って,被上告人の上告人に対する商法429条の規定に基づく本件保管帳簿等の閲覧及び謄写の請求を認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決のうち上告人敗訴部分は破棄を免れない。また,仮に,訴外会社の代表取締役であったBと被上告人との間で帳簿等の閲覧謄写についての被上告人主張の合意があったとしても,同条の規定により選任された保存者である上告人が,これに拘束されると解すべき根拠はないから,上記合意に基づく閲覧及び謄写の請求も,理由がないことは明らかである。
 そこで,原判決のうち上告人敗訴部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消した上,本件保管帳簿等の閲覧及び謄写の請求を棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 津野 修)

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