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2005.02.05

貸金請求控訴事件(福岡高裁判決)

H17. 1.27 福岡高等裁判所 平成16年(ネ)第752号 貸金請求控訴事件

H17. 1.27 福岡高等裁判所 平成16年(ネ)第752号 貸金請求控訴事件

『判示事項の要旨:利息年133.3パーセントを超える消費貸借契約について貸付けの態様等を考慮して,利息の合意のみならず,消費貸借契約自体も公序良俗に違反するとして無効とした事例』

事件番号  :平成16年(ネ)第752号
事件名   :貸金請求控訴事件
裁判年月日 :H17. 1.27
裁判所名  :福岡高等裁判所
部     :第5民事部
結果    :原判決取消
原審裁判所名:大分地方裁判所
原審事件番号:平成15年(ワ)第497号
原審結果  :請求認容


第3 当裁判所の判断
1 本件各契約の成立については,当事者間に争いがない。
2 そこで,本件各契約がいずれも公序良俗に違反する契約として無効である,との当審における控訴人の主張(抗弁)の当否について判断する。
 (1) 証拠(各項の末尾に記載のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(当裁判所に顕著な事実及び争いのない事実を含む。)。証拠(原審証人A)中,この認定に反する部分は,同証人が後記認定事実及び証拠(乙6)から明らかなように,出資法に違反する違法行為を重ねてきた者であることからすると,到底信用できない。
 ア 被控訴人は,貸金業規制法3条1項が定める登録を受けないで貸金業を営んでいる者である。Aは,平成14年1月12日被控訴人と離婚したが,その後本件各契約当時においても被控訴人と同居中であり,被控訴人が貸金に関する借用書を作成する際や弁済金を受領する際に立ち会ったり,さらには被控訴人に代わって弁済金を受領するなどして被控訴人の無登録貸金業に加担していた。他方,控訴人は,難聴を患う,昭和9年生まれの本件各契約当時68歳という老齢であり,貸金業者であるEからの借受金債務約400万円を初めとして多くの債務を負っていた(甲6,乙6,原審証人A,原審控訴人本人)。
 イ 平成14年8月29日の本件貸金(1)以前に,控訴人は,BやAから,「控訴人の借金をBが全部払うから借りてあげてよ。組織の金が入ったら返す」などといわれたので,これを信用し,被控訴人との間で,本件貸金(1)の債務につき本件保証契約を締結するに至った。その際,BやAの立会のもとで作成された金銭消費貸借契約証書(甲2)の利息の利率欄は白地のままであったが,被控訴人から控訴人らに対して月1割の利息が要求されたので,その旨合意された。そこで,同日,利息として35万円の天引き後,残金315万円がBに交付され,これをBとAが分け合った。また,控訴人は,Aらからいわれるがままに,被控訴人に対し,所有土地を担保として提供し,不履行の際には被控訴人に対してこれを譲渡する旨を記載した覚書(甲4),同土地の登記済証,実印が押印された白紙委任状(甲5)及び印鑑登録証明書(甲3の2)を交付したばかりでなく,控訴人の夫が所有する不動産の登記済証,同人の印鑑登録証明書,委任状等を交付した(甲2,3の2,4,5,乙5,原審控訴人)B
 ウ 同年10月29日,控訴人は,BやAから,本件貸金(1)の10月分の利息35万円が払えないので,被控訴人から150万円を借りて欲しい旨言われていたので,被控訴人から本件貸金(2)である150万円を借り受けた。その際,本件貸金(1)と同様に,Aの立会のもとで作成された金銭消費貸借契約証書(甲1)の利息の利率欄は白地のままであったが,被控訴人から控訴人に対して月1割の利息が要求されたので,その旨合意された。そこで,同日,利息として15万円の天引き後,残金135万円のうち35万円が本件貸金(1)の利息の支払いに充当され,100万円が同年9月26日に被控訴人が控訴人に対して貸し付けた100万円(以下「別件貸金」という。)の支払いに充当された。(甲1,7,原審証人A,原審控訴人本人)。
 エ 原判決添付の別表の「当事者間に争いがない弁済」欄記載の弁済額及び充当先は,当事者間に争いがない。これに関して,被控訴人は,平成15年8月7日付け支払督促申立書において,本件貸金(1)及び本件貸金(2)に対する弁済は合計75万円であった旨主張し,さらに,督促異議手続における訴状に代わる準備書面においても,上記一覧表番号11ないし16に記載の弁済のみを主張していた。そして,控訴人は,このほかにも,平成14年11月20日に返済として130万円をBを通じてAに交付したが,Aは,これは控訴人,C,D及びBらの小口の借入れに対する弁済として受領した旨説明する。(原審証人A,原審控訴人本人)。
 オ 被控訴人は,貸金業を営むにおいて帳簿を作成しておらず,本件貸金(1)及び本件貸金(2)に関しても同様であり,それぞれの上記契約書を入れている封筒に各弁済の日付と金額がメモ書きされているにすぎない。また,上記の弁済金についても,被控訴人は,控訴人にその受領書を一切交付しなかった(甲8の1,2,原審証人A,原審控訴人本人)。
   なお,控訴人が,原審において,本件貸金(1)及び本件貸金(2)には利息の割合及び利息の支払期なしとの被控訴人の主張をいずれも認める旨の陳述をしていることは明らかである。しかし,これは,被控訴人の請求が貸金元金に限定されていたことから,あえて争わなかったにすぎないものと解されるが,そもそも上記利息に関する被控訴人の主張事実は,本訴請求においてはいうまでもなく間接事実にすぎないから,その「認める」旨の陳述をもって,上記利息に関する被控訴人の主張事実について,いわゆる自白の拘束力が生じるものでないことは当然である。したがって,当裁判所が上記のとおり認定することに何ら問題はない。
 (2) ところで,本件のような,貸金業規制法3条1項に定める登録を受けない貸金業者が行う出資法違反の高金利による貸金問題である,いわゆる「闇金融」を巡っては,平成9年から10年にかけては中小零細事業者等を対象にしたいわゆる「システム金融」の問題が,また,平成13年から14年にかけては一般消費者を対象にして10日で2ないし3割という違法金利で貸し付けするいわゆる「都イチ金融」の問題や電柱の張り紙などに掲載した携帯電話で融資の受付を行ういわゆる「090金融」の問題がそれぞれ発生し,その結果,これらの被害者である多重債務者の自殺,あるいは多重債務者による返済目的の財産犯罪の多発など大きな社会問題となったことは,当裁判所に顕著である。これらの問題を受けて,その間の平成11年法155号による改正で,出資法5条の高金利の処罰規定における金利は,「40.004パーセント」から「29.2パーセント」に引き下げられたが,これらの問題が改善された兆しは認められなかった。そこで,平成15年7月25日に成立した平成15年法136号は,新たに貸金業規制法42条の2の規定を設けて,貸金業を営む者が業として行う金銭消費貸借契約において,原則年109.5パーセントを超える利息の契約をしたときは,当該消費貸借契約は無効としたほか,出資法5条の高金利の処罰規定の法定刑を「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれの併科」から「5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれの併科」へ,また,貸金業規制法47条の無登録営業等に対する法定刑を「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれの併科」から「5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれの併科」へなどと引き上げたのである。他方,本件貸金(1)及び本件貸金(2)の利息の約定は月1割であるから,その年利率は120パーセントになるが,いずれも貸付時において天引きがされているから,結局,天引き後の金額を元金とする実質年利率が133.3パーセントを超えることは計算上明らかである。この利率が,出資法5条2項が定める貸金業者に対して刑事罰が科される上記金利年29.2パーセントをはるかに超え,さらに同条1項が定める何人に対しても刑事罰が科される上限金利年109.8パーセントをも超えるものであることはいうまでもない。したがって,被控訴人が上記無登録者として営む貸金業の一つである本件貸金(1)及び本件貸金(2)は,いずれも上記改正前の行為であっても,その約11か月から9か月前という時期からして,極めて違法性の高い犯罪行為であることに変わりはないことになる。このような出資法違反の貸金行為は,上記のような「闇金融」を巡る問題状況,特にそれによって引き起こされた数々の大きな社会問題が上記平成15年法136号による改正の前後を問わずに変わりないことからすると,もはやそのこと自体でもって,既に公序良俗に反する行為といっても過言ではないといわなければならない。
   これに加えて,上記認定のとおり,本件各契約当時,控訴人は老齢で難聴の障害を持っていたこと,本件各契約は,多重債務で困っていた控訴人がBやAの甘い言葉を簡単に信用した結果であること,特に,本件保証契約に際し,安易に登記済証,印鑑登録証明書,白紙委任状等の重要書類を交付していることなどからすると,控訴人に,金銭消費貸借契約に関する知識,高金利の借入れや連帯保証が持つ危険性に対する認識を著しく欠いていることは明らかである。そして,控訴人は,本件各契約により現金を何ら取得したものではないことがうかがえる。これに対し,上記認定のとおり,被控訴人は,控訴人との間で複数の貸付けや連帯保証を併存させているが,本件各契約を含めてこれらについて帳簿等の記録を残していないばかりでなく,控訴人に対し,本件各契約の詳細な契約書や弁済金に関する受取証書を一切交付していないのである。その結果,上記認定からも明らかなように,本件各契約の内容や弁済の経過は極めて不明確なものとなっているため,控訴人は,自らの本件各契約の債務残額や弁済の充当関係などを的確に認識することができず,被控訴人から指示されるままに借入れと返済を繰り返していたことがうかがわれる。その意味で,上記認定のAが本件各契約で果たした役割や控訴人とAとの関係からすると,被控訴人は,Aとともに,むしろこのような不明朗な貸付け状況や控訴人の知識の乏しさに乗じて,違法な高金利による利益を得ようとしていたものと推認するのが相当である。
   結局,以上を総合すると,被控訴人が,控訴人の窮迫,無思慮に乗じて犯罪行為に該当する本件各契約を成立させたことは明らかであるから,本件各契約は,公序良俗に反する契約として無効である,といわなければならない。
3 結論
以上のとおり,被控訴人の本件各契約に基づく本訴請求は,本件各契約が無効である以上,その余の点を判断するまでもなく,いずれも理由がないことに帰するので,これらを棄却するのが相当である。
よって,被控訴人の本訴請求を認容した原判決を取り消し,被控訴人の本訴請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。

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