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2005.02.05

損害賠償請求事件(最高裁判決)

判例 平成16年06月01日 第三小法廷判決 平成12年(行ヒ)第125号 損害賠償請求事件

『要旨: 地方公共団体の長が地方自治法96条1項5号に規定する議会の議決が得られなかった1個の工事請負契約を議会の議決を要しない規模の3個の工事請負契約に分割して締結したことについて,これを適法とした原審の判断に審理不尽の違法があるとされた事例』

『内容:  件名損害賠償請求事件 (最高裁判所 平成12年(行ヒ)第125号 平成16年06月01日 第三小法廷判決 破棄差戻し)原審仙台高等裁判所秋田支部 (平成11年(行コ)第1号)』

『公共事業に係る工事の実施方法の決定は,予算の執行権限を有する普通地方公共団体の長が,財政状況,国等から交付される補助金の額や交付条件,公共事業の性質や実施状況,工事の必要性や緊急性,工事の実施場所や内容,住民らの要望等の諸般の事情を総合考慮して高度な経済的,政治的判断として行うものである。
 ところで,法96条1項5号は,「その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること」については,長ではなく,議会の議決によるものとしている。その趣旨は,政令等で定める種類及び金額の契約を締結することは普通地方公共団体にとって重要な経済行為に当たるものであるから,これに関しては住民の利益を保障するとともに,これらの事務の処理が住民の代表の意思に基づいて適正に行われることを期することにあるものと解される。そうすると,長による公共事業に係る工事の実施方法等の決定が当該工事に係る請負契約の締結につき同号を潜脱する目的でされたものと認められる場合には,当該長の決定は違法であると解するのが相当である。
 前記事実関係等によれば,被上告人は,本件工事の実施方法として,まず(一)の工事の内容により,次いで(二)の工事の内容により,2度にわたってその予定価格が本件条例2条に定める金額を超える1個の請負契約を締結して実施することを決定し,当該契約を締結することについての議案を町議会に提出したが,2度とも否決された後,(二)の工事と実質的に同じ工事につき一の工事の予定価格がいずれも5000万円未満となる本件設計変更をした上,本件各契約を締結したというのである。このような経過に照らすと,被上告人は,(二)の工事と同じ内容の工事を実施するに当たり,専ら法96条1項5号の適用を回避する意図で本件設計変更をした上で本件各契約を締結したとみるべきではないかとも考えられ,仮にそうであるとすると,被上告人が本件各契約を締結したことは,同号を潜脱する目的で行った違法なものといわざるを得ない。しかしながら,被上告人が本件設計変更をして(三)の工事の内容による本件工事の実施を決定したのがC本件工事を実施する高度の必要性があり,その実施に不可欠で既に交付決定を受けていた補助金を利用するためには本件工事に係る請負契約を締結して本件工事を平成8年度内(平成9年3月31日まで)に完了させるほかなく,工期の短縮等の手段として工区を三つに分割することが,本件工事の内容,性質,実施場所等に照らして合理的であったなどの特段の理由に基づくものと認められる場合には,被上告人が本件各契約を締結したことについて,同号を潜脱する目的で行った違法なものということはできない。
 以上の点について,原審は,前記3の各事情を挙げて被上告人が本件各契約を締結したことには一応合理的でやむを得ない理由があると判断しているが,本件記録によっても,本件工事の実施場所もこれをどのように三つの工区に分割することにしたのかも判然としない上,原審が挙げる上記諸事情の中には,本件工事が複数の工区に分割して契約するのに適したものかどうか,町が国等に対して本件工事に係る補助金の繰越し等についてどのような折衝をしたか,工区の分割によりどの程度工期が短縮されるかなど,上記諸事情の基礎となる事実関係について具体的な認定を伴わないものがあり,原審が上記の観点から検討を尽くしているものとはいい難い。そうすると,原審の上記判断には,審理不尽の結果,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。論旨は,この趣旨をいうものとして理由がある。
 5 以上によれば,原判決は破棄を免れず,上記特段の理由の有無について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。』

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