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2005.02.02

所得税更正処分取消請求事件(最高裁判決)

判例 平成17年02月01日 第三小法廷判決 平成13年(行ヒ)第276号 所得税更正処分取消請求事件

 『要旨:受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる』

『内容:件名 所得税更正処分取消請求事件 (最高裁判所 平成13年(行ヒ)第276号 平成17年02月01日 第三小法廷判決 破棄自判) 原審 東京高等裁判所 (平成13年(行コ)第12号)』

『4 しかしながら,原審の上記3(1)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 譲渡所得の金額について,法は,総収入金額から資産の取得費及び譲渡に要した費用を控除するものとし(33条3項),上記の資産の取得費は,別段の定めがあるものを除き,その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額としている(38条1項)。この譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものである(最高裁昭和41年(行ツ)第102号同47年12月26日第三小法廷判決・民集26巻10号2083頁,最高裁昭和47年(行ツ)第4号同50年5月27日第三小法廷判決・民集29巻5号641頁参照)。そして,上記「資産の取得に要した金額」には,当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか,当該資産を取得するための付随費用の額も含まれると解される(最高裁昭和61年(行ツ)第115号平成4年7月14日第三小法廷判決・民集46巻5号492頁参照)。
他方,法60条1項は,居住者が同項1号所定の贈与,相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算について,その者が引き続き当該資産を所有していたものとみなす旨を定めている。上記の譲渡所得課税の趣旨からすれば,贈与,相続又は遺贈であっても,当該資産についてその時における価額に相当する金額により譲渡があったものとみなして譲渡所得課税がされるべきところ(法59条1項参照),法60条1項1号所定の贈与等にあっては,その時点では資産の増加益が具体的に顕在化しないため,その時点における譲渡所得課税について納税者の納得を得難いことから,これを留保し,その後受贈者等が資産を譲渡することによってその増加益が具体的に顕在化した時点において,これを清算して課税することとしたものである。同項の規定により,受贈者の譲渡所得の金額の計算においては,贈与者が当該資産を取得するのに要した費用が引き継がれ,課税を繰り延べられた贈与者の資産の保有期間に係る増加益も含めて受贈者に課税されるとともに,贈与者の資産の取得の時期も引き継がれる結果,資産の保有期間(法33条3項1号,2号参照)については,贈与者と受贈者の保有期間が通算されることとなる。
このように,法60条1項の規定の本旨は,増加益に対する課税の繰延べにあるから,この規定は,受贈者の譲渡所得の金額の計算において,受贈者の資産の保有期間に係る増加益に贈与者の資産の保有期間に係る増加益を合わせたものを超えて所得として把握することを予定していないというべきである。そして,受贈者が贈与者から資産を取得するための付随費用の額は,受贈者の資産の保有期間に係る増加益の計算において,「資産の取得に要した金額」(法38条1項)として収入金額から控除されるべき性質のものである。そうすると,上記付随費用の額は,法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において「資産の取得に要した金額」に当たると解すべきである。
(2) 前記事実関係によれば,本件手数料は,上告人が本件会員権を取得するための付随費用に当たるものであり,上告人の本件会員権の保有期間に係る増加益の計算において「資産の取得に要した金額」として収入金額から控除されるべき性質のものということができる。したがって,本件譲渡所得金額は,本件手数料が「資産の取得に要した金額」に当たるものとして,これを計算すべきである。
そうすると,上告人の平成9年分の所得税については,総合課税の対象となる長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額が1182万4000円となり,総所得金額が3296万9202円となるから,本件更正のうちこの総所得金額を超える部分及び本件賦課決定は違法である。
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上告人の請求には理由があるから,第1審判決を取り消して,同請求を認容することとする。』

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