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2005.02.21

不当利得金返還請求事件(最高裁判決)

判例 平成16年10月26日 第三小法廷判決 平成16年(受)第458号 不当利得金返還請求事件


『要旨: 不当利得返還請求訴訟において不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないと主張して請求を争うことが信義誠実の原則に反するとされた事例』

内容:  件名 不当利得金返還請求事件 (最高裁判所 平成16年(受)第458号 平成16年10月26日 第三小法廷判決 棄却)
 原審 仙台高等裁判所秋田支部 (平成15年(ネ)第66号)

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人脇山弘の上告受理申立て理由1,2について
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) Aは,第1審判決別紙預金目録記載の各金融機関(以下「本件各金融機関」という。)に対し,同目録記載の各預金債権(原審が訂正した後のもの。以下,これらの預金債権を「本件各預金債権」といい,これらの預金を「本件各預金」という。)を有していた。
 (2) Aは,平成3年4月30日,死亡した。上告人及び被上告人は,Aの子であり,本件各預金債権を各2分の1の割合で法定相続した。
 (3) 上告人は,第1審判決別紙預金目録記載の各払戻年月日に,本件各金融機関から本件各預金の払戻しを受けたが,その際,本件各預金のうち被上告人の法定相続分である2分の1に当たる金員(以下「被上告人相続分の預金」という。)については,何らの受領権限もないのに,その払戻しを受けたものである。
 2 本件は,被上告人が,上告人は被上告人相続分の預金を無権限で払戻しを受けて取得し,これにより被上告人は被上告人相続分の預金相当額の損失を被ったなどと主張して,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,被上告人相続分の預金相当額等の支払を求める事案である。
 これに対し,上告人は,本件各金融機関は被上告人相続分の預金の払戻しについて過失があるから,上記払戻しは民法478条の弁済として有効であるとはいえず,したがって,被上告人が本件各金融機関に対して被上告人相続分の預金債権を有していることに変わりはないから,被上告人には不当利得返還請求権の成立要件である「損失」が発生していないなどと主張して,被上告人の上記請求を争っている。
 3 そこで検討すると,(1) 上告人は,本件各金融機関から被上告人相続分の預金について自ら受領権限があるものとして払戻しを受けておきながら,被上告人から提起された本件訴訟において,一転して,本件各金融機関に過失があるとして,自らが受けた上記払戻しが無効であるなどと主張するに至ったものであること,(2) 仮に,上告人が,本件各金融機関がした上記払戻しの民法478条の弁済としての有効性を争って,被上告人の本訴請求の棄却を求めることができるとすると,被上告人は,本件各金融機関が上記払戻しをするに当たり善意無過失であったか否かという,自らが関与していない問題についての判断をした上で訴訟の相手方を選択しなければならないということになるが,何ら非のない被上告人が上告人との関係でこのような訴訟上の負担を受忍しなければならない理由はないことなどの諸点にかんがみると,上告人が上記のような主張をして被上告人の本訴請求を争うことは,信義誠実の原則に反し許されないものというべきである。
 4 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。所論引用の判例は事案を異にし本件に適切ではない。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖)

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