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2005.02.03

会計帳簿閲覧謄写,株主総会議事録等閲覧謄写,社員総会議事録等閲覧謄写請求事件(最高裁判決)

判例 平成16年07月01日 第一小法廷判決 平成15年(受)第1104号 会計帳簿閲覧謄写,株主総会議事録等閲覧謄写,社員総会議事録等閲覧謄写請求事件

『要旨:
 1 商法293条ノ6の規定に基づく会計帳簿等の閲覧謄写請求における当該請求の理由を基礎付ける事実の立証の要否(消極)
2 株式の譲渡制限のある株式会社において,株式を他に譲渡しようとする株主が,株式の適正な価格を算定する目的でした会計帳簿等の閲覧謄写請求は,特段の事情が存しない
限り,商法293条ノ7第1号所定の拒絶事由に当たらない』

『内容:件名 会計帳簿閲覧謄写,株主総会議事録等閲覧謄写,社員総会議事録等閲覧謄写請求事件 (最高裁判所 平成15年(受)第1104号 平成16年07月01日 第一小法廷判決 破棄差戻し)  原審 東京高等裁判所 (平成14年(ネ)第3362号)』

『 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 商法及び有限会社法は,株主又は社員が会社に対し会計帳簿等の閲覧謄写を請求するための要件として,株式会社については総株主の議決権の100分の3以上,有限会社については総社員の議決権の10分の1以上を有することのほか,理由を付した書面をもって請求をすることを要求している(商法293条ノ6第1項,第2項,有限会社法44条ノ2第1項,46条本文)。そして,上記の請求の理由は,具体的に記載されなければならないが,上記の請求をするための要件として,その記載された請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することについての立証を要すると解すべき法的根拠はない。
 上告人が,本件会計帳簿等の閲覧謄写請求をするに当たり,その理由として書面に記載した前記の理由?@,?B,?Cを,上記の具体的な記載とみることができるか否かについて検討するに,まず,前記の理由?@の記載についてみると,同記載は,前記被上告人4社がC社に対する多額の無担保融資である本件貸付けをしたことが,違法,不当であり,本件貸付けの時期,内容(貸付け条件,弁済期等)等を調査する必要があることをいうものと解されるから,前記被上告人4社の本件貸付けに係る会計帳簿等の閲覧謄写を請求する理由の記載として,その具体性に欠けるところはないというべきである。
 次に,前記の理由?Bの記載についてみると,同記載は,前記被上告人2社が多額の本件美術品を購入したことが,違法,不当であるとして,本件美術品の購入の時期,内容(代金,相手方等)等を調査する必要があることをいうものと解されるから,前記被上告人2社の本件美術品購入に係る会計帳簿等の閲覧謄写を請求する理由の記載としてCその具体性に欠けるところはないというべきである。
 また,前記の理由?Cの記載についてみると,同記載は,被上告人Y1がDに対して1株1円という安値で本件株式譲渡をしたことが,違法,不当であるとして,同被上告人における本件株式譲渡に係る会計処理の内容及び譲渡された本件C社株の取得価格等を調査する必要があることをいうものと解されるから,被上告人Y1の本件株式譲渡に係る会計処理及び譲渡された本件C社株の取得価格等に係る会計帳簿等の閲覧謄写を請求する理由の記載として,その具体性に欠けるところはないというべきである。
 そして,上記の各請求につき,第1号所定の拒絶事由に該当すると認めるべき相当の理由があると解すべき事情は存しない。また,Aが本件貸付けに深く関与していたとしても,そのことをもって直ちに上告人の前記の理由?@による本件会計帳簿等の閲覧謄写請求が信義則に違反するものということはできない。
 そうすると,以上と異なる見解に立って,上告人の上記各理由による本件会計帳簿等の閲覧謄写の請求が許されないものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 (2) 次に,上告人の前記の理由?Aによる本件会計帳簿等の閲覧謄写請求についてみるに,遺産分割協議のためという点はともかくとして,理由?Aは,相続税支払のための売却に備え,上告人が相続により取得した本件株式等の時価を適正に算定するために,本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要があるという理由も掲げており,その具体性に欠けるところはない。そこで,株式等の売却に備えてその時価を算定するための会計帳簿等の閲覧謄写請求が,第1号所定の拒絶事由に該当するかどうかについて検討する。
 商法及び有限会社法においては,株式の譲渡につき定款で取締役会の承認を要する旨を定めている株式会社の株主が株式を譲渡しようとするとき,又は有限会社の社員がその持分を社員以外の者に譲渡しようとするときには,当該株主又は社員は,会社に対し,所定の事項を記載した書面をもって特定の相手方に対する譲渡を承認すべきこと又はこれを承認しないときには他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求するものとされ,この指定の請求がされた場合において,取締役会又は社員総会は,その譲渡を承認しないときは,他に譲渡の相手方を指定しなければならず,指定された者との間で売買価格についての協議が調わないときは,当事者は,裁判所に対して,売買価格の決定を請求することができるなど,株式又は持分の譲渡制限に伴う一連の手続が定められている(商法204条ノ2,204条ノ3,204条ノ3ノ2,204条ノ4,有限会社法19条)。上記のとおり,株式の譲渡につき定款で制限を設けている株式会社又は有限会社において,株主又は社員が,その有する株式又は持分を他に譲渡し,その対価を得ようとする場合には,会社との関係で上記の手続を執ることが要求され,会社が指定した者との間での売買価格についての協議を行うこと等も定められているのであるが,当該株主又は社員において,上記の手続に適切に対処するためには,その有する株式又は持分の適正な価格を算定するのに必要な当該会社の資産状態等を示す会計帳簿等の閲覧等をすることが不可欠というべきである。
 したがって,株式の譲渡につき定款で制限を設けている株式会社又は有限会社において,その有する株式又は持分を他に譲渡しようとする株主又は社員が,上記の手続に適切に対処するため,上記株式等の適正な価格を算定する目的でした会計帳簿等の閲覧謄写請求は,特段の事情が存しない限り,株主等の権利の確保又は行使に関して調査をするために行われたものであって,第1号所定の拒絶事由に該当しないものと解するのが相当である。
 そうすると,上記特段の事情の存することがうかがえない本件においては,上告人が,前記の理由?Aにおいて,相続により取得した本件株式等の売却に備え,その適正な価格を算定するために必要であるとして行った本件会計帳簿等の閲覧謄写請求は,第1号所定の拒絶事由に該当しないものというべきである。以上と異なる見解に立って,上記の請求が第1号所定の拒絶事由に該当するとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 5 以上によれば,原判決のうち上告人敗訴部分は破棄を免れない。論旨は,上記の趣旨をいうものとして理由がある。そして,本件については,閲覧謄写を認めるべき会計帳簿等の範囲等について更に審理を尽くさせる必要があるから,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。』

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