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2005.03.06

総代会決議無効確認等請求事件(最高裁判決)

判例 平成16年10月26日 第三小法廷判決 平成14年(受)第973号 総代会決議無効確認等請求事件


『要旨: 信用金庫の理事を信用金庫法38条所定の手続によることなく解任することはできない』

内容:  件名 総代会決議無効確認等請求事件 (最高裁判所 平成14年(受)第973号 平成16年10月26日 第三小法廷判決 一部破棄差戻し,一部棄却)
 原審 大阪高等裁判所 (平成11年(ネ)第1424号)

主    文
1 原判決のうち,被上告人が平成8年10月21日開催の総代会においてした上告人を理事から解任する旨の決議の無効確認請求及び取消請求に関する部分,被上告人が上記総代会においてしたA,B,C,D及びEを理事に選任する旨の決議の取消請求に関する部分,被上告人の理事としての地位に基づく報酬請求及び報酬相当額の損害賠償請求に関する部分並びに上記の上告人を理事から解任する旨の決議に係る不法行為による損害賠償請求に関する部分を破棄する。
2 上記各部分につき,本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
3 上告人のその余の上告を棄却する。
4 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人吉田薫,同小槻浩史の上告受理申立て理由第1について
1 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 平成8年10月2日に開催された被上告人の理事会において,上告人を代表理事の地位から解任し非常勤理事とする旨の緊急動議が提出されて,可決承認され,同月14日,代表理事の変更登記手続がされた。
(2) 被上告人の理事会は,同月11日に,上告人の理事の地位からの解任及び新役員の選任を議題として被上告人の総代会を開催することを決議し,上記理事会の決議に基づき臨時総代会(以下「本件総代会」という。)が招集された。
(3) 同月21日に開催された本件総代会において,被上告人の理事会が提出した議案に基づき,上告人を理事の地位から解任する旨の決議(以下「本件総代会決議1」という。)並びにA,B,C,D及びEを理事に,Fを監事にそれぞれ選任する旨の決議(以下「本件総代会決議2」という。)がされた。
なお,本件総代会決議1は,上記のとおり,被上告人の理事会が提出した議案に基づいてされたものであり,信用金庫法(以下「法」という。)38条所定の役員解任の手続によるものではなかった。
2 本件は,上告人が,被上告人に対し,(1) 本件総代会決議1については,法38条所定の役員解任の手続によらなかったという無効事由があり,また,解任につき正当事由がなかったという無効事由又は取消事由があると主張して,主位的に無効確認を,予備的に取消しを求め,(2) 本件総代会決議2については,本件総代会決議1が無効であるか又は取り消された場合には被上告人の理事の数は定款で定める定数を上回ることになるから,無効事由又は取消事由があると主張して,主位的に無効確認を,予備的に取消しを求め,(3) 本件総代会決議1が無効であるか又は取り消された場合には,理事としての地位に基づき報酬の支払を求め,仮に本件総代会決議1が有効である場合には,被上告人が上告人をやむを得ない事由がないのに解任したことを理由に報酬相当額の損害賠償を求め,さらに,(4) 上告人を理事の地位から解任したことなどが被上告人の不法行為に当たるとして損害賠償を求めるなどの請求をする事案である。
3 原審は,次のとおり判断して,上記請求をいずれも棄却すべきものニした。
(1) 法39条は,商法257条の規定を準用していないが,他方,同法254条3項の規定を準用していることから,信用金庫である被上告人とその理事との関係は,委任に関する規定によって規律されると解される。そうすると,被上告人は,委任に関する一般的規定である民法651条1項の規定に基づき,原則として,理事である上告人を,いつでも,理由のいかんにかかわらず解任することができるものというべきである。
(2) 信用金庫は,株式会社と比較して,各会員の個性や自主性が重視される面があるとしても,実際の業態,会員数,社会的な地位及び役割等に照らすと,その理事の解任の手続が法38条所定の役員解任の手続に限定されるほど,株式会社との間に差異があるものとは解されない。一般的に,信用金庫においても,法38条所定の役員解任の手続のほかに理事会の発議による理事の解任を必要とする場合が存することは否定し得ないのであって,同条は,ともすると無視され,困難を伴いがちな少数会員からの役員解任請求の行使方法を,特に明文をもって手続的に保障したものにすぎず,それ以外の解任手続を否定する趣旨まで含むものとは解されない。
(3) 上記のとおり,信用金庫の理事の解任は,法38条所定の役員解任の手続によらなければならないものではなく,民法651条1項の規定に基づき,いつでも,理由のいかんにかかわらず解任することができるのであるから,本件総代会決議1には,無効事由,取消事由のいずれも認められない。
(4) 本件総代会決議1による上告人の理事の地位からの解任が有効である以上,本件総代会決議2には無効事由,取消事由のいずれも存しないことになる。また,上告人は,理事としての地位に基づいて報酬を請求することはできない。
(5) 被上告人が上告人を理事の地位から解任したことには,やむを得ない事由があったと認められるから,これがないことを前提とする上告人の報酬相当額の損害賠償請求は,その理由がない。
(6) 上記のとおり,本件総代会決議1による上告人の理事の地位からの解任が有効であり,その解任にはやむを得ない事由があったことなどからすると,上告人を被上告人の理事から解任したことなどが不法行為に当たるとはいえない。
4 しかしながら,原審の上記判断のうち,信用金庫の理事の解任は法38条所定の役員解任の手続によらずにすることができるから,本件総代会決議1には無効事由がないとの判断及びこれを前提とする判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
信用金庫は,会員の出資による協同組織の非営利法人であり(法1条),会員は,当該信用金庫の地区内に住居又は事業所を有する者(一定規模以上の事業者を除く。)及びその地区内において勤労に従事する者で,定款で定めるものに限られ(法10条),加入及び持分の譲渡については信用金庫の承諾を要し(法13条,15条),会員が定款で定める事由に該当する場合には総会の議決によって除名されること(法17条3項),信用金庫は,預金等の受信業務は会員以外の者からのものも行うことができるが,貸出業務は原則として会員に対してのみ行うことができるものとされていること(法53条),会員は出資口数にかかわらず平等に一箇の議決権を有すること(法12条)など,会員を構成員とする協同組織体としての特色を有している。
法は,信用金庫が上記の特色を有する協同組織の非営利法人であることから,その役員(理事及び監事をいう。以下同じ。)の解任手続について,法38条の規定を置き,次のとおり,役員の地位の安定等に配慮した特別の手続を定めている。
すなわち,法38条は,役員の解任の請求は,会員が総会員の5分の1以上の連署をもってすることができ,その請求につき総会において出席者の過半数の同意があったときは,その請求に係る役員は,その職を失うものとし(1項),上記請求は,法令又は定款に違反したことを理由とする場合を除き,理事の全員又は監事の全員について,同時にしなければならないものとしている(2項)。また,上記請求は,解任の理由を記載した書面を信用金庫に提出してしなければならず,当該信用金庫は,上記請求を議する総会の会日の7日前までに,当該役員に対し上記書面を送付し,かつ,総会において弁明する機会を与えなければならないものとしている(3項,4項)。
以上のとおり,法は,38条において,信用金庫の上記特色を考慮して,信用金庫の役員解任の手続につき役員の地位の安定等に配慮した特別の手続を定めていること,そして,39条において,信用金庫の理事につき,商法の株式会社の取締役について定めた規定を多数準用しているが,同条は,取締役の解任手続を定めた商法257条の規定については,上記特別の手続を定めた趣旨,目的を考慮して,準用をしていないことにかんがみると,法は,信用金庫の理事の解任は,法38条の規定によらなければならないとしているものと解するのが相当である。
そうすると,本件総代会決議1は,前記のとおり,法38条の規定によらないで被上告人の理事会が提出した議案に基づいてされたものであり,およそ理事解任の決議の対象とはなり得ない議案についてされたものであるから,その決議の内容が法令に違反しており,無効というべきである。
5 以上によれば,本件総代会決議1には無効事由がないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。したがって,原判決のうち本件総代会決議1の無効確認請求及び取消請求に関する部分は破棄を免れない。そして,これらの請求に関する部分につき,訴えの利益の有無等を含め,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
本件総代会決議1が無効であることにより,新たに理事5名を選任した本件総代会決議2の内容は,定款所定の理事の定数が上告人の主張するとおりであるとすれば,これに違反することとなるが,定款違反は取消事由となるにとどまり,無効事由には該当しないから(法49条において準用する商法247条1項2号及び252条参照),本件総代会決議2のうち理事の選任に関する決議部分の無効確認請求を棄却した原審の判断は,結論において正当である。また,本件総代会決議2のうち監査役の選任に関する決議部分については,無効事由又は取消事由の主張はないから,その無効確認請求及び取消請求をいずれも棄却した原審の判断も,結論において正当である。したがって,これらの請求に関する上告を棄却することとする。
そして,上記のとおり,本件総代会決議2のうち理事の選任に関する決議部分には,上告人の主張する定款所定の理事の定数に違反するとの取消事由が存し得るので,原判決のうち同決議の取消請求に関する部分は破棄を免れない。また,前記説示したところによれば,原判決のうち,本件総代会決議1が無効であることなどを理由とする被上告人の理事としての地位に基づく報酬請求及び報酬相当額の損害賠償請求並びに本件総代会決議1に係る不法行為による損害賠償請求をいずれも棄却した部分も破棄を免れない。そして,これらの請求に関する部分につき,訴えの利益の有無等を含め,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖)

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