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2005.06.18

平成17年04月26日 第三小法廷判決 平成15年(受)第1771号 弁護士費用請求事件

判例 平成17年04月26日 第三小法廷判決 平成15年(受)第1771号 弁護士費用請求事件
要旨:
 地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第4号の規定による訴訟が訴えの取下げにより終了した場合は同条7項にいう「勝訴(一部勝訴を含む。)
した場合」には当たらない

内容:  件名 弁護士費用請求事件 (最高裁判所 平成15年(受)第1771号 平成17年04月26日 第三小法廷判決 破棄自判)
 原審 名古屋高等裁判所 (平成14年(ネ)第436号)

            

主    文
原判決のうち上告人の敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき被上告人らの控訴をいずれも棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。
         

理    由

 上告代理人西沢博ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
 1 阿児町(以下「町」という。)の住民であった被上告人らは,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)242条の2第1項4号に基づき,町に代位して,町長の職にあった者らに対して損害賠償を請求する住民訴訟(以下「前訴」という。)を提起したが,前訴が第1審に係属中に,前訴で被告とされていた者らの1人が被上告人らの請求する損害額につき,弁護士費用相当額を除く全額を町に支払ったので,被上告人らは前訴を取り下げた。本件は,被上告人らが,町の訴訟承継人である上告人に対し,同条7項の規定に基づき,前訴につき訴訟代理人であった弁護士に報酬を支払うべきときに当たるとして,その報酬額の範囲内で相当と認められる額(以下「弁護士報酬相当額」という。)の支払を請求する事案である。
 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 町の住民であった被上告人らは,平成12年,弁護士を訴訟代理人として,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,町に代位して,町長の職にあったA及び企画課長の職にあったBを被告として,町史印刷製本費の増加による損害452万5500円及び弁護士費用95万円の合計547万5500円並びにこれに対する遅延損害金の支払を求める前訴を提起した。
 (2) 前訴が第1審に係属中の平成13年8月16日,Bは,被上告人らが請求していた町史印刷製本費の増加による損害452万5500円及びこれに対する遅延損害金の合計額483万7478円を「町史印刷製本費戻し入れ金」として町に支払った。
 (3) 被上告人らは,平成13年8月30日,前訴を取り下げ,前訴の被告らは,同日,これに同意した。
 3 原審は,被上告人らの請求を60万円及びこれに対する遅延損害金の支払を命ずる限度で一部認容すべきものとした。原判決の理由の要旨は,次のとおりである。
 (1) 地方自治法242条の2第7項の立法趣旨からすると,同項にいう「勝訴した場合」とは,公権的判断である裁判所の勝訴判決がされた場合に限定されるべき理由はなく,住民訴訟の提起及び追行によって,普通地方公共団体が違法な財務会計上の行為により生じた損害の補てんを受けて実質的に勝訴判決を得た場合と同視できる経済的利益を受けた場合をも含むものと解するのが相当である。
 (2) 被上告人らは,前訴の被告の1人が町に対して被上告人らが請求した町史印刷製本費の増加分の出費を返還したことから,前訴の訴えを取り下げたものと認めることができ,町は,被上告人らが前訴において実質的に勝訴判決を得た場合と同視できる経済的利益を受けたものというべきである。したがって,被上告人らが提起した前訴における訴訟活動は,地方自治法242条の2第7項の「勝訴した場合」に当たる。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 地方自治法242条の2第7項は,同条1項4号の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において,弁護士に報酬を支払うべきときは,普通地方公共団体に対し,その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができると定めている。当該訴訟の提起及び追行が契機となって普通地方公共団体が経済的利益を受けることとなった場合であっても,当該訴訟が果たして,また,どの程度これに寄与したかを判断して,弁護士報酬相当額の支払請求を認めるか否かを決することは必ずしも容易ではない。そこで,同法は,同号の規定による訴訟が住民全体の利益のために提起されるものであり,訴えを提起した者の個人的な権利利益の保護救済を求めて提起されるものではないという特質も考慮して,上記の支払請求をすることができる場合について客観的に明確な基準を設けることによって,その判断を画一的に行うこととしたものと解することができる。このような同条1項4号及び7項の規定の趣旨及び文言に照らせば,同条1項4号の規定による訴訟を提起した者が,同条7項に基づき普通地方公共団体に対して弁護士報酬相当額の支払を請求するには,その者が当該訴訟につきその完結する時において勝訴(一部勝訴を含む。)したということができることを要するものと解するのが相当である。そうすると,訴訟は,訴えの取下げがあった部分については,初めから係属していなかったものとみなされる(民訴法262条1項)のであるから,地方自治法242条の2第1項4号の規定による訴訟が提起されたことを契機として普通地方公共団体が当該訴訟に係る損害について補てんを受けた場合であっても,その訴えが取り下げられたことにより当該訴訟が終了したときは,同条7項にいう「第1項第4号の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」には当たらないと解するのが相当である。
 前記事実関係によれば,前訴が提起されて第1審に係属中に,被上告人らが請求していた町史印刷製本費の増加による損害に相当する金額について町は補てんを受けたが,被上告人らは前訴につき訴えを取り下げ,前訴の被告らはこれに同意したというのである。そうすると,損害の補てんを理由としてであれ,前訴が訴えの取下げにより終了したものである以上,被上告人らは上告人に対して弁護士報酬相当額の支払請求をすることはできないというべきである。
 5 以上によれば,本件請求を一部認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,理由があり,原判決のうち上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,被上告人らの請求を棄却した第1審判決は正当であるから,被上告人らの控訴をいずれも棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖)

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