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2005.07.20

最高裁判例 平成17年07月15日 第二小法廷判決 平成14年(行ヒ)第207号 勧告取消等請求事件

判例 平成17年07月15日 第二小法廷判決 平成14年(行ヒ)第207号 勧告取消等請求事件
要旨: 医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる

内容:  件名 勧告取消等請求事件 (最高裁判所 平成14年(行ヒ)第207号 平成17年07月15日 第二小法廷判決 一部破棄差戻し,一部棄却)
 原審 名古屋高等裁判所金沢支部 (平成13年(行コ)第18号)

判例 平成17年07月15日 第二小法廷判決 平成14年(行ヒ)第207号 勧告取消等請求事件
要旨:
 医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は抗告訴訟の対象と
なる行政処分に当たる

内容:  件名 勧告取消等請求事件 (最高裁判所 平成14年(行ヒ)第207号 平成17年07月15日 第二小法廷判決 一部破棄差戻し,一部棄却)
 原審 名古屋高等裁判所金沢支部 (平成13年(行コ)第18号)

主    文
       1 原判決のうち,被上告人が上告人に対して平成9年10月1日付けでした病院開設の中止勧告の取消請求に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。
       2 前項の部分につき,本件を富山地方裁判所に差し戻す。
       3 上告人のその余の上告を棄却する。
       4 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人濱秀和ほかの各上告受理申立て理由について
 1 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,富山県高岡市内において病院の開設を計画し,被上告人に対し,平成9年3月6日付けで,病床数を400床とする病院開設に係る医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの。以下同じ。)7条1項の許可の申請(以下「本件申請」という。)をした。
 (2) 被上告人は,上告人に対し,同年10月1日付けで,医療法30条の7の規定に基づき,「高岡医療圏における病院の病床数が,富山県地域医療計画に定める当該医療圏の必要病床数に達しているため」という理由で,本件申請に係る病院の開設を中止するよう勧告した(以下,この勧告を「本件勧告」という。)。
 (3) 上告人は,被上告人に対し,同月3日付けで,本件勧告を拒否するとともに,速やかに本件申請に対する許可をするよう求める文書を送付した。
 (4) 被上告人は,上告人に対し,同年12月16日付けで,本件申請について許可する旨の処分(以下「本件許可処分」という。)をした。また,同日付けで,富山県厚生部長名で,上告人に対し,「医療法を遵守し,富山県地域医療計画の達成の推進に協力すること」等の遵守事項の記載に加えて「中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合には,厚生省通知(昭和62年9月21日付け保発第69号厚生省保険局長通知)において,保険医療機関の指定の拒否をすることとされているので,念のため申し添える。」との記載(以下「本件通告部分」という。)がされた文書が送付された(以下,同保険局長通知を「昭和62年保険局長通知」という。)。
 2 本件は,上告人が,本件勧告は医療法30条の7に反するもので違法であり,また,本件通告部分のある文書と共にされた本件許可処分は本件勧告に従わない場合には保険医療機関の指定申請を拒否することを予告するいわば負担付きの許可であると主張して,被上告人に対し,本件勧告の取消し又は「本件許可処分中の中止勧告部分」と上告人が主張する本件通告部分の取消しを請求する事案である。
 3 原審は,次のとおり判断し,本件訴えをいずれも却下すべきものとした。
 (1) 上告人が本件勧告に従わなかったとしても,それにより必然的に保険医療機関の指定が拒否されるわけではないから,本件勧告は,行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらない。
 (2) 本件通告部分は,当時の保険医療機関の指定権限が国の機関委任事務として都道府県知事に属していたことから,単に処分庁の意思を事前に通知したもので,法令に基づくものとは認められないことに加え,この通告自体によって,上告人にいかなる不利益も生ずるとは認められないから,行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらない。
 4 原審の上記判断のうち3の(2)については,富山県厚生部長名の本件通告部分をもって被上告人がした病院開設中止勧告と解することはできないから,その取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断を是認することができるが,原審の上記判断のうち3の(1)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 医療法は,病院を開設しようとするときは,開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない旨を定めているところ(7条1項),都道府県知事は,一定の要件に適合する限り,病院開設の許可を与えなければならないが(同条3項),医療計画の達成の推進のために特に必要がある場合には,都道府県医療審議会の意見を聴いて,病院開設申請者等に対し,病院の開設,病床数の増加等に関し勧告することができる(30条の7)。そして,医療法上は,上記の勧告に従わない場合にも,そのことを理由に病院開設の不許可等の不利益処分がされることはない。
 他方,健康保険法(平成10年法律第109号による改正前のもの)43条ノ3第2項は,都道府県知事は,保険医療機関等の指定の申請があった場合に,一定の事由があるときは,その指定を拒むことができると規定しているが,この拒否事由の定めの中には,「保険医療機関等トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」との定めがあり,昭和62年保険局長通知において,「医療法第三十条の七の規定に基づき,都道府県知事が医療計画達成の推進のため特に必要があるものとして勧告を行ったにもかかわらず,病院開設が行われ,当該病院から保険医療機関の指定申請があった場合にあっては,健康保険法四十三条ノ三第二項に規定する『著シク不適当ト認ムルモノナルトキ』に該当するものとして,地方社会保険医療協議会に対し,指定拒否の諮問を行うこと」とされていた(なお,平成10年法律第109号による改正後の健康保険法(平成11年法律第87号による改正前のもの)43条ノ3第4項2号は,医療法30条の7の規定による都道府県知事の勧告を受けてこれに従わない場合には,その申請に係る病床の全部又は一部を除いて保険医療機関の指定を行うことができる旨を規定するに至った。)。
 (2) 上記の医療法及び健康保険法の規定の内容やその運用の実情に照らすと,医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は,医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には,相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく,保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから,保険医療機関の指定を受けることができない場合には,実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると,この勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。後に保険医療機関の指定拒否処分の効力を抗告訴訟によって争うことができるとしても,そのことは上記の結論を左右するものではない。
 したがって,本件勧告は,行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるというべきである。
 5 以上のとおりであるから,本件通告部分の取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断は是認することができるが,本件勧告の取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の限度で理由があり,原判決のうち本件勧告の取消請求に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消して本件を富山地方裁判所に差し戻すとともに,上告人のその余の上告を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 福田 博 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋)

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