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2005.07.20

最高裁判例 平成17年07月19日 第三小法廷判決 平成17年(行ツ)第73号 選挙無効請求事件

判例 平成17年07月19日 第三小法廷判決 平成17年(行ツ)第73号 選挙無効請求事件
要旨:
 衆議院小選挙区選出議員の選挙に係る選挙訴訟係属中に当該選挙において当選人となった議員が辞職したことにより選挙訴訟の訴えの利益が失われる場合

内容:  件名 選挙無効請求事件 (最高裁判所 平成17年(行ツ)第73号 平成17年07月19日 第三小法廷判決 破棄自判)
 原審 東京高等裁判所 (平成15年(行ケ)第551号)

主    文
原判決を破棄する。
本件訴えを却下する。
訴訟の総費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 1 本件訴えは,平成15年11月9日に施行された衆議院議員の総選挙のうち東京都第4区における小選挙区選出議員の選挙(以下「本件選挙」という。)について,その選挙人である上告人が公職選挙法204条の規定に基づき提起した選挙訴訟であるところ,本件選挙において当選人となったA(以下「A」という。)が同17年3月15日付けで衆議院議員を辞職したことは,当裁判所に顕著である。
 2 公職選挙法204条の規定による選挙訴訟は,選挙の規定に違反して執行された選挙を無効とすることにより(同法205条),その効果を将来に向かって失わせ,再選挙を行わせること(同法109条)を目的とするものである。衆議院小選挙区選出議員の選挙につき選挙訴訟が提起されている場合において,その選挙において当選人となった議員が辞職したときに当該選挙訴訟の訴えの利益が消滅するかどうかについては,次のとおり解するのが相当である。
 まず,当該選挙において同法95条2項の規定の適用を受けた得票者で当選人とならなかったものがあり,同法112条1項の規定による繰上補充として新たに当選人が定められることになる場合においては,選挙訴訟の訴えの利益が失われないことはいうまでもない。また,辞職した議員の当選の効力に関し同法208条1項の規定による当選訴訟が係属しているか,又はその出訴期間が経過しておらず,その訴訟の結果いかんによって,同法96条の規定による当選人の更正決定により新たに当選人が定められる可能性がある場合においても,選挙訴訟の訴えの利益は失われないというべきである。さらに,選挙訴訟において選挙の一部が無効とされた場合には,無効とされた開票区において従前の候補者による再選挙が行われ,その得票数と無効とされなかった開票区の得票数とを合算して得票総数を計算し(同法80条3項),これにより新たに当選人が定められることになるのであって,選挙の一部が無効とされた場合に行われる再選挙と議員の欠員が生じた場合に行われる補欠選挙(同法113条1項)とでは,その実質が異なるものであるから,選挙訴訟の結果選挙の一部のみが無効とされる可能性がある限り,選挙訴訟の訴えの利益は失われないというべきである。
 以上に対し,当該選挙に関し,辞職した議員以外の者が繰上補充等により当選人となる可能性がなく,選挙訴訟の結果選挙の一部のみが無効とされる可能性もない場合には,その選挙が有効であるとしても無効であるとしても,その選挙区において新たに選挙を行わなければならないことに変わりはなく,また,選挙無効の判決が確定しても,その選挙の効果は将来に向かって失われるにすぎないのであるから,その選挙が有効であるか無効であるかを決することに法的な意味はなく,その議員の辞職により選挙訴訟の訴えの利益は消滅するものと解すべきである。
 3 ところで,公職選挙法33条の2第7項は,衆議院議員及び参議院議員の再選挙又は補欠選挙は,その選挙を必要とするに至った選挙についての選挙訴訟若しくは当選訴訟(以下,併せて「選挙訴訟等」という。)の出訴期間内又は選挙訴訟等が係属している間は,これを行うことができない旨規定している。同項は,選挙訴訟等の出訴期間内又は選挙訴訟等が係属している間に再選挙又は補欠選挙を行ったとしても,選挙訴訟等の結果いかんによっては,元の選挙の効力の全部若しくは一部が失われ,又は当選人に異動が生じて,再選挙又は補欠選挙の前提が変わってしまい,再選挙又は補欠選挙が無駄になったり,解決困難な問題が生ずるおそれがあるので,そのような事態を避けるために設けられているものである。しかしながら,同項の趣旨は上記のところに尽きるのであって,元の選挙についての選挙訴訟等が提起されることなくその出訴期間が経過するか,又は,その出訴期間が経過するとともに,係属した選挙訴訟等が訴えの却下等により係属しなくなったときは,同項の適用の余地はなくなるのである。同項は,選挙訴訟等の訴えの利益を基礎付けるものではなく,前記のとおり一定の場合に衆議院小選挙区選出議員の辞職により選挙訴訟の訴えの利益が消滅すると解することの妨げとなるものではない。
 4 以上の見地に立って本件についてみると,記録によれば,本件選挙においてAと得票数が同じで公職選挙法112条1項の規定による繰上補充の対象となる者はなく,また,Aの当選の効力に関し同法208条1項の規定による当選訴訟が現在係属しておらず,その出訴期間が経過していることは明らかであるから,本件選挙に関しては,繰上補充等によりA以外の者が当選人となる可能性はない。さらに,東京都第4区は,大田区のうち東京都第3区に属しない区域を選挙区とするものであって(同法別表第1),1開票区から成る選挙区であるから,本件選挙の一部のみが無効とされる可能性もない。そうであるとすれば,本件訴えについては,Aの辞職により訴えの利益が消滅したというべきである。本件訴えは衆議院小選挙区選出議員の選挙区及び議員定数に関する同法の規定が憲法に違反することを理由として提起されたものではあるが,公職選挙法204条の規定に基づく選挙訴訟として提起されているものである以上,本件訴えが上記の憲法違反を理由に提起されていることが,上記の判断を左右するものではない。
 そうすると,本案の判断をした原判決は失当であることに帰するから,原判決を破棄し,本件訴えを却下すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)
            

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