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2005.11.22

最高裁判所判例 平成17年11月11日 第二小法廷決定 平成17年(許)第22号 担保不動産競売申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

判例 平成17年11月11日 第二小法廷決定 平成17年(許)第22号 担保不動産競売申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
要旨:根抵当権者が競売の申立ての際に提出した登記事項証明書に,当該根抵当権の登記のほかに譲渡担保を原因とする同人への所有権移転登記が記載されていても,同登記事項証明書は,民事執行法181条1項3号の文書に当たる

内容:  件名 担保不動産競売申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 (最高裁判所 平成17年(許)第22号 平成17年11月11日 第二小法廷決定 破棄自判)
 原審 名古屋高等裁判所金沢支部 (平成16年(ラ)第101号)

主    文
原決定を破棄し,原々決定を取り消す。
本件を金沢地方裁判所に差し戻す。
         

理    由

 抗告代理人藤井正大の抗告理由について
 1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
 (1) A株式会社(以下「A」という。)は,原々決定別紙物件目録1〜19記載の不動産(以下,これらを併せて「本件不動産」という。)を所有していた。
 (2) Aは,平成2年7月25日,B株式会社(以下「B」という。)に対し,本件不動産について,Bを根抵当権者,Aを債務者,極度額を3億3000万円,債権の範囲を金銭消費貸借取引,売買取引,保証委託取引,立替払委託取引,手形債権,小切手債権とする根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)を設定し,同日付けでその旨の根抵当権設定登記がされた。
 (3) Bは,平成6年8月23日,株式会社C(以下「C」という。)に対し,本件根抵当権及びその被担保債権を譲渡し,本件不動産について,同日付けでCに対する根抵当権移転登記がされた。
 (4) Aは,平成6年11月29日,Cに対し,本件不動産について,本件根抵当権の被担保債権を含むCのAに対する債権の担保として,Cを権利者とする譲渡担保権(以下「本件譲渡担保権」という。)を設定し,同日付けでCに対する譲渡担保を原因とする所有権移転登記がされた。
 (5) Cは,平成13年2月26日,抗告人に対し,本件根抵当権,本件譲渡担保権及びそれらの被担保債権を譲渡し,本件不動産について,同日付けで抗告人に対する根抵当権移転登記(以下,本件根抵当権に関する上記(2)の根抵当権設定登記,上記(3)の根抵当権移転登記及び本項の根抵当権移転登記を併せて「本件根抵当権登記」という。)及び譲渡担保の売買を原因とする所有権移転登記(以下「本件所有権移転登記」という。)がされた。
 (6) 平成13年2月26日当時,本件不動産には,本件根抵当権以外の制限物権は設定されていなかった。
 (7) 抗告人は,平成16年11月18日,本件不動産について,本件根抵当権の実行としての競売の申立て(以下「本件申立て」という。)をした。
 2 原審は,概要次のとおり判示して,本件申立てを却下した原々決定に対する抗告人の抗告を棄却した。
 民事執行法(以下「法」という。)181条1項(平成16年法律第124号による改正前のもの。以下同じ。)が同項各号所定の文書(以下「法定文書」という。)が提出されたときに限り不動産担保権の実行を開始するとしている趣旨は,担保権の存在は法定文書によってのみ証明できることとし,法定文書以外のものによる証明を許さないことにより,執行裁判所が法定文書による証明の有無を審理するだけで速やかに不動産担保権の実行開始の判断ができるようにすることにあるから,法定文書は,担保権の存在の蓋然性を強く推定させる文書であることを要し,提出された文書の記載上,担保権の存在の蓋然性を強く推定させるものでない場合には,法定文書に当たらないと解するのが相当である。
 抗告人が本件申立てにおいて法181条1項3号所定の法定文書として提出した本件不動産の登記事項証明書(旧不動産登記法(平成16年法律第123号による改正前のもの)151条ノ4により本件不動産の登記簿謄本とみなされる。以下「本件登記事項証明書」という。)には,抗告人を本件不動産の所有者兼本件根抵当権の根抵当権者とする記載がされている。この記載によれば,本件根抵当権は混同により消滅したこととなるから,本件登記事項証明書は,担保権の存在の蓋然性を強く推定させる文書に当たるものということはできない。したがって,本件申立ては,法定文書の提出を欠くものとして却下すべきである。
 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 法181条1項柱書きは,「不動産担保権の実行は,次に掲げる文書が提出されたときに限り,開始する。」と規定し,法182条は,「不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいては,債務者又は不動産の所有者(中略)は,担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。」と規定している。以上の各規定によれば,法は,担保権実行の申立ての要件としては,換価権の原因である担保権の存在を証明するものとして定める法定文書の提出を要求する一方,法定文書の提出さえあれば,担保権の存在について実体判断をすることなく,競売手続の開始を決定することとし,担保権の不存在,消滅等の実体上の事由は,債務者又は不動産所有者の側からの指摘を待って,執行抗告等の手続で審理判断するという構成を採っているものと解される。
 抗告人は,本件申立てにおいて,法181条1項3号の「担保権の登記(中略)のされている登記簿の謄本」として本件登記事項証明書を提出しているところ,本件登記事項証明書には抗告人を根抵当権者とする本件根抵当権登記が記載されているのであるから,本件登記事項証明書は同号所定の法定文書に当たるというべきである。
 なお,本件登記事項証明書には本件所有権移転登記の記載もあるが,その登記原因は「譲渡担保の売買」であり,譲渡担保権を取得したというだけでは本件不動産の所有権が確定的に抗告人に移転しているということはできない。したがって,本件所有権移転登記があるからといって,本件根抵当権が混同により消滅したということもできないし,本件登記事項証明書が法定文書に当たらないものということもできない。
 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原決定は破棄を免れない。そして,上記説示したところによれば,本件申立てを却下した原々決定は不当であるから,これを取り消した上,本件を金沢地方裁判所に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)

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