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2005.11.22

最高裁判所判例 平成17年11月08日 第三小法廷判決 平成17年(オ)第153号、平成17年(受)第178号 詐害行為取消請求事件

判例 平成17年11月08日 第三小法廷判決 平成17年(オ)第153号、平成17年(受)第178号 詐害行為取消請求事件
要旨: 更生会社の管財人が旧会社更生法(平成14年法律第154号による改正前のもの)78条1項1号に該当する行為についてした否認の効果は,当該行為の目的物が複数で可分であったとしても,目的物すべてに及ぶ

内容:  件名 詐害行為取消請求事件 (最高裁判所 平成17年(オ)第153号、平成17年(受)第178号 平成17年11月08日 第三小法廷判決 棄却)
 原審 東京高等裁判所 (平成15年(ネ)第5534号)

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 第1 上告代理人河合伸一ほかの上告受理申立て理由及び上告補助参加代理人高井章吾ほかの上告受理申立て理由第1の2について
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) A(以下「A」という。)は,ゴルフ場の経営等を目的とする株式会社であり,ゴルフ場の土地建物として第1審判決別紙物件目録記載の294筆の土地と3棟の建物(以下「本件各不動産」と総称する。)を所有していた。
 (2) Aは,B(以下「B」という。)の100%子会社であったことから,BのC銀行に対する債務を担保するために,Bから対価を取得することなく,平成5年1月27日,C銀行との間で,本件各不動産を共同担保として極度額を総額200億円とする根抵当権を設定することを合意した。この合意に従って,Aは,C銀行との間で,同日,本件各不動産を共同担保として,債務者をB,根抵当権者をC銀行,債権の範囲を銀行取引,手形債権,小切手債権とし,極度額を46億円とする根抵当権及び極度額を5億円とする根抵当権の各設定契約並びに同根抵当権の極度額を5億円から154億円に変更する根抵当権変更契約を一体のものとして締結し,それぞれ,第1審判決別紙登記目録記載1〜3の各根抵当権設定登記手続及び根抵当権変更の付記登記手続をした(以下,上記の極度額が46億円の根抵当権と極度額が5億円から154億円に変更された根抵当権とを併せて「本件根抵当権」と総称し,上記の各根抵当権設定契約と根抵当権変更契約とを併せて「本件根抵当権設定等契約」と総称し,また,上記の各根抵当権設定登記と根抵当権変更の付記登記とを併せて「本件根抵当権設定等登記」と総称する。)。
 (3) Aは,約327億5436万4000円に相当する積極財産及び約132億4056万4000円に相当する消極財産を有していたが,本件根抵当権の設定により,その債務及び責任の総額がその積極財産の総額を約4億8620万円上回ることとなった。C銀行は,Bに対して240億円以上の債権を有していたものの,本件根抵当権以外には極度額合計72億円の根抵当権を有するにとどまっており,また,BやAは,その当時,経常損益の赤字が続き,固定資産の売却益を計上しても未処理損失の計上を続けているような財務状況にあったことから,本件根抵当権の設定は,Aの債権者が完全な弁済を受けることを不可能にするものであり,また,A及びC銀行はその事実を知っていた。
 (4) 本件根抵当権は,平成14年3月13日,C銀行からDを経て,上告人に譲渡され,それに伴い,第1審判決別紙登記目録記載4〜7の各付記登記手続がされた。
 (5) Bは,東京地方裁判所において,平成10年7月3日和議開始の決定を受け,平成11年3月10日和議認可の決定を受けていたが,平成14年7月22日再生手続開始の決定を受けた。
 (6) Aは,東京地方裁判所において,平成14年8月2日再生手続開始の決定を受けていたが,平成15年1月30日再生手続廃止の決定を受け,同年2月7日更生手続開始の決定を受け,被上告人がその管財人に選任された。
 (7) 本訴は,当初,第1審判決別紙会員目録記載のEゴルフクラブの会員らが,Aに対して有する預託金返還請求権を被保全債権として,本件根抵当権設定等契約が民法424条1項の詐害行為に当たると主張して,C銀行に対し,本件根抵当権設定等登記の抹消登記手続を請求するなどした訴訟であったが,上記のとおり,本件根抵当権がC銀行から上告人へと譲渡されたことから,上告人がC銀行から訴訟を引き受けて本訴に参加し,C銀行は本訴から脱退した。また,上記のとおり,Aが再生手続開始の決定を受けたことから,民事再生法上の監督委員が,民事再生法140条1項に基づき,上記会員らから本訴の訴訟手続を受継したが,その後,Aが更生手続開始の決定を受けたことから,被上告人が,旧会社更生法(平成14年法律第154号による改正前のもの。以下同じ。)93条2項,69条1項に基づき,上記監督委員から本訴の訴訟手続を受継した。
 2 被上告人は,本訴において,本件根抵当権設定等契約が旧会社更生法78条1項1号に規定する更生債権者又は更生担保権者(以下「更生債権者等」という。)を害することを知ってした行為に当たると主張して,否認権を行使し(以下,同号に規定する行為があったことを理由として行使する否認権を「1号否認権」という。),上告人に対し,本件各不動産すべてについて,本件根抵当権設定等登記の旧会社更生法による否認登記手続を請求するなどしている。これに対し,上告人及び上告補助参加人は,1号否認権と民法424条所定の詐害行為取消権とは制度趣旨を同じくするものであるから,被上告人が旧会社更生法による否認登記手続を求めることができるのは,本件各不動産のうち,本件根抵当権の設定によってAの有していた積極財産の総額を上回ることとなった債務及び責任の額である約4億8620万円に相当する部分にとどまるべきであると主張している。
 3 そこで検討すると,(1) 1号否認権は,更生手続が開始されたことを前提に,裁判所により選任され,更生会社の総財産についての管理権を有する管財人が,旧会社更生法78条1項1号に該当する行為により逸出した更生会社の一般財産を原状に回復させ,更生債権者等に対する弁済原資を確保するとともに,更生会社の事業の維持更生を図る目的の下に,その職責上行使するものであって,一般の債権者が民法424条に基づき個別的に自らの債権の確保を図るために詐害行為取消権を行使する場合の取消債権者の債権額のような限界は存在しないこと,(2) 更生債権及び更生担保権については,届出,調査の期日における調査,確定の訴え等の旧会社更生法所定の手続によって確定すべきものとされている(旧会社更生法125条,126条,135条,147条等)し,届出期間内に届出をしなかった更生債権者及び更生担保権者であっても,更生手続に参加することが一切できなくなるわけではなく,期間後の届出が許される場合もある(同法127条,138条等)上,更生会社に属する一切の財産の価額等については,財産評定等の旧会社更生法所定の手続によって確定すべきものとされている(同法177条等)ので,管財人が1号否認権を行使する時点では,更生債権,更生担保権,更生会社に属する財産の価額等がすべて確定しているわけではないことに照らすと,管財人が1号否認権を行使する場合には,旧会社更生法78条1項1号に該当する行為の目的物が複数で可分であったとしても,目的物すべてに否認の効果が及ぶと解するのが相当である。
 4 そうすると,本件根抵当権設定等契約が旧会社更生法78条1項1号に規定する更生債権者等を害することを知ってした行為に当たるとして,本件各不動産すべてについて,本件根抵当権設定等登記の旧会社更生法による否認登記手続請求を認容すべきものとした原審の判断は,結論において正当であり,是認することができる。所論引用の各判例は,事案を異にし,本件に適切ではない。論旨は採用することができない。
 第2 上告代理人河合伸一ほか及び上告補助参加代理人高井章吾ほかの各上告理由について
 前記のとおり,1号否認権の行使に当たっては,旧会社更生法78条1項1号に該当する行為の目的物が複数で可分であったとしても,目的物すべてに否認の効果が及ぶと解するのが相当であるが,このように解される同号の規定が憲法29条に違反するものでないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和40年(ク)第464号同45年12月16日大法廷決定・民集24巻13号2099頁,最高裁平成12年(オ)第1965号,同年(受)第1703号同14年2月13日大法廷判決・民集56巻2号331頁)の趣旨に徴して明らかである。上記憲法29条違反のあることを前提とする上告補助参加代理人高井章吾ほかのその余の違憲の主張は,その前提を欠く。論旨はいずれも採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 堀籠幸男)
            

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