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2005.11.22

最高裁判所判例 平成17年11月17日 第一小法廷判決 平成15年(行ヒ)第231号 損害賠償代位請求事件

判例 平成17年11月17日 第一小法廷判決 平成15年(行ヒ)第231号 損害賠償代位請求事件
要旨: 地方自治法237条2項の議会の議決があったというためには,当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたことを要する

内容:  件名 損害賠償代位請求事件 (最高裁判所 平成15年(行ヒ)第231号 平成17年11月17日 第一小法廷判決 破棄差戻し)
 原審 仙台高等裁判所 (平成14年(行コ)第19号)

主    文
原判決を破棄する。
 本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
         

理    由

 上告代理人佐藤欣哉ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
 1 本件は,山形県の小国町(以下「町」という。)の住民である上告人らが,被上告人が町長在職中に町の財産である砂利を低廉な価格で第三者に譲渡したことにより,町が損害を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき,町に代位して,被上告人に対し損害賠償を求めている事案である。
 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 株式会社A(以下「A社」という。)は,平成10年及び同11年に町の所有地から砂利を無償で採取し,これを株式会社Bに売却した。
 (2) A社による上記の砂利採取に関し,被上告人は,町長として,平成12年3月8日,A社との間で次のとおり合意した(以下,この合意を「本件合意」といい,本件合意に係る町からA社に対する砂利の譲渡を「本件譲渡」という。)。
 ア A社が平成10年に採取した砂利が2万0150m3であることを確認し,A社は町に対し砂利採取料として1m3当たり20円,合計40万3000円を支払う。
 イ A社が平成11年に採取した砂利が2万4460m3であることを確認し,A社は町に対し砂利採取料として1m3当たり20円,合計48万9200円を支払う。
 (3) A社は,平成12年3月10日,町に対し,本件合意に基づく砂利採取料合計89万2200円を支払った。
 (4) 町議会は,平成12年3月17日,本件合意に基づきA社から町に支払われた砂利採取料を財産収入として計上した平成11年度の一般会計補正予算(以下「本件補正予算」という。)を可決した。町議会における本件補正予算の審議においては,議員から1m3当たり20円という本件譲渡の単価が適正な対価といえるのかどうか質問があり,これに対し,町長側においては,近傍区域の類似の取引事例における単価を参考にして上記単価を決定したことなどを説明した。
 (5) 被上告人は,本件譲渡が適正な対価によるものであると主張するとともに,仮に本件譲渡が適正な対価によらないものであったとしても,本件補正予算の可決をもって地方自治法237条2項の議会の議決を欠いた瑕疵は治癒されたと主張している。
 3 原審は,本件譲渡が適正な対価によるものであるかどうかにつき判断することなく,要旨次のとおり述べて,本件譲渡については地方自治法237条2項の議会の議決を欠いた違法はないとして,上告人らの請求を棄却すべきものとした。
 (1) 普通地方公共団体が地方自治法237条2項の議会の議決を経ずに財産の譲渡又は貸付け(以下,両者を併せて「譲渡等」という。)をした後,議会が,その対価に着目して当該譲渡等の必要性及び妥当性について審議し,これを妥当なものとして認める趣旨の議決をしたときは,仮に当該譲渡等が適正な対価によらないものであったとしても,同項の議会の議決を欠いた瑕疵は治癒されると解するのが相当である。そして,この場合において,同項の議会の議決があったというためには,議会において当該譲渡等が適正な対価によらないものであるとの認識を持って議決することまでは必要なく,実質的に対価の妥当性が審議されていればそれで足りるというべきである。
 (2) 町議会は,本件補正予算の審議において,対価との関連で本件譲渡の必要性及び妥当性について審議し,これを妥当なものと認めた上,本件補正予算を可決したのであるから,仮に本件譲渡が適正な対価によらないものであったとしても,本件補正予算の可決をもって地方自治法237条2項の議会の議決があったということができるのであって,同項の議会の議決を欠いた瑕疵は治癒されたというべきである。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 地方自治法237条2項は,条例又は議会の議決による場合でなければ,普通地方公共団体の財産を適正な対価なくして譲渡し,又は貸し付けてはならない旨規定している。一方,同法96条1項6号は,条例で定める場合を除くほか,財産を適正な対価なくして譲渡し,又は貸し付けることを議会の議決事項として定めている。これらの規定は,適正な対価によらずに普通地方公共団体の財産の譲渡等を行うことを無制限に許すとすると,当該普通地方公共団体に多大の損失が生ずるおそれがあるのみならず,特定の者の利益のために財政の運営がゆがめられるおそれもあるため,条例による場合のほかは,適正な対価によらずに財産の譲渡等を行う必要性と妥当性を議会において審議させ,当該譲渡等を行うかどうかを議会の判断にゆだねることとしたものである。このような同法237条2項等の規定の趣旨にかんがみれば,同項の議会の議決があったというためには,当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたことを要するというべきである。議会において当該譲渡等の対価の妥当性について審議がされた上当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたというだけでは,当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上議決がされたということはできない。
 これを本件についてみると,原審は,町議会が本件補正予算を可決するに当たり本件譲渡が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上その議決がされた事実を確定しておらず,原審が確定した事実関係の下においては,本件補正予算の可決をもって本件譲渡につき地方自治法237条2項の議会の議決があったということはできない。
 5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件譲渡の対価が適正な対価といえるのかどうかなどについて更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すのが相当である。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 横尾和子 裁判官 泉 �コ治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)
            

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