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2005.12.16

最高裁判所判例 平成17年12月13日 第三小法廷判決 平成17年(受)第1398号 社員総会決議無効確認等請求事件

判例 平成17年12月13日 第三小法廷判決 平成17年(受)第1398号 社員総会決議無効確認等請求事件
要旨: 公共嘱託登記土地家屋調査士協会の総会において社員の除名決議をするに当たり除名事由が具体的に特定して示されたとはいえないとして決議が無効とされた事例

内容:  件名 社員総会決議無効確認等請求事件 (最高裁判所 平成17年(受)第1398号 平成17年12月13日 第三小法廷判決 棄却)
 原審 東京高等裁判所 (平成17年(ネ)第72号)

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人松田壯吾,同豊島健司の上告受理申立て理由について
1 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,土地家屋調査士法63条1項(平成14年法律第33号による改正前は土地家屋調査士法17条の6第1項)が規定する公共嘱託登記土地家屋調査士協会である。
 上告人は,「官庁,公署その他政令で定める公共の利益となる事業を行う者(以下「官公署等」という。)による不動産の表示に関する登記に必要な調査若しくは測量又はその登記の嘱託若しくは申請の適正かつ迅速な実施に寄与することにより,公共の利益となる事業の成果の速やかな安定を図り,登記に関する手続の円滑な実施に資し,もって不動産に係る国民の権利の明確化に寄与すること」を目的として,民法34条により設立の許可を受けた社団法人であり,平成14年7月当時は,横浜地方法務局の管轄区域内に事務所を有する土地家屋調査士によって構成されていた。
 (2) 被上告人は,厚木市に事務所を有する土地家屋調査士であり,上告人の社員であった。被上告人は,上告人の県央西支所に所属していた。
 (3) 上告人の定款10条は,社員の除名について,「社員が次の各号の一に該当する場合には,総会において,社員の過半数が出席し,出席した社員の4分の3以上の賛成による決議で除名することができる。ただし,その社員に対し,決議の前に弁明の機会を与えなければならない。」と規定し,1号において「本協会の定款,規則又は総会の決議に違反したとき。」を,2号において「本協会の名誉を傷つけ又は著しい損害を加えたとき。」を,それぞれ除名事由と定めている。
 (4) 上告人は,平成14年7月25日に,第18回臨時総会(以下「本件総会」という。)を開催し,被上告人を除名する旨の決議(以下「本件決議」という。)をした。
 (5) 本件決議に至る経緯は,次のとおりであった。
 ア 上告人は,平成14年6月29日に開催された理事会において,本件総会を開催することを決定し,社員に対して,同年7月8日付けの「第18回臨時総会開催について(通知)」と題する書面(以下「本件総会開催通知」という。)と「第18回臨時総会議案書」と題する書面(以下「本件総会議案書」という。)を送付した。
 本件総会開催通知には,「会議の目的事項」として「決議事項 第1号議案 社員除名の件」と記載されていた。また,本件総会議案書には,「第1号議案 社員除名の件」という見出しの下に,「社員の氏名及び所属支所等」として被上告人の氏名,所属支所及び調査士登録番号が記載され,「提案理由」として「当社員は,社団法人神奈川県公共嘱託登記土地家屋調査士協会定款第10条第2号前段に該当することによる。」と記載され,「根拠条文」として定款10条の規定内容がそのまま記載されていた。本件総会開催通知及び本件総会議案書には,被上告人の除名事由に当たる具体的な事実は何ら記載されておらず,本件総会開催前には,被上告人を含む上告人の社員に対して,被上告人の除名事由に当たる具体的な事実が知らされることはなかった。
 イ 本件総会は,平成14年7月25日午後2時から午後3時45分まで開催された。当時の社員493名のうち,本件総会の出席者は,418名(委任状による出席者266名,会場出席者152名)であった。
 ウ 本件総会において,まず,A社員が,口頭で,被上告人の除名事由に当たる事実について説明した。A社員が説明した事実は,別紙(ア)〜(キ)の各事実であった(以下,別紙(ア)〜(キ)のそれぞれの事実を「除名事由(ア)」などという。)。
 エ その後,質疑応答及び被上告人による約20分間の弁明が行われた。被上告人は,弁明において,本件総会開催通知に除名事由の具体的な事実を記載した書面を添付して送付すべきであるなどと主張した。
 オ そして,採決が行われ,被上告人を除名する件は,賛成407票(委任状266票を含む。),反対2票,白票9票で可決された(本件決議)。
 2 本件は,被上告人が,本件決議には重大な手続的瑕疵があるから本件決議は無効であるなどとして,本件決議の無効確認と被上告人が上告人の社員であることの確認を求める事案である。
3 前記事実関係によれば,上告人は,官公署等による登記に関する手続の円滑な実施に資すること等を目的とする公共嘱託登記土地家屋調査士協会であるから,上告人の内部規律に関しては,宗教法人や学校法人の内部規律とは異なり,上告人の裁量的判断にゆだねられる余地は少ない。とりわけ,社員の除名といった法律関係を終了させる処分は,当該社員の存在が上告人の目的に反し,又はその目的を阻害するといった明確な事実があったときに許容されるものである(最高裁平成11年(受)第722号同13年4月26日第一小法廷判決・裁判集民事202号205頁参照)。また,公共嘱託登記土地家屋調査士協会は,正当な理由がない限り,土地家屋調査士が加入することを拒めない(平成14年法律第33号による改正前の土地家屋調査士法17条の6第4項)のであり,このように加入拒否について法律上制限があることからしても,上告人において,上記のような除名の要件を満たさない社員の除名が許されないことは明らかである。上告人が,定款10条で,社員の除名について,除名事由や除名の手続を定めているのも,上記のような趣旨によるものと解される。
 そうすると,上告人においては,除名の決議に当たって,除名の対象者を含む上告人の社員に対して,除名事由に当たる事実を具体的に特定して示し,除名の対象者に対し,当該具体的な事実について必要かつ十分な弁明の機会を与えるとともに,議決権者である社員が当該具体的な事実に基づいて除名事由の存否を的確に判断することができるようにすべきであるということができる。
 4 これを本件についてみると,次のようにいうことができる。
 (1) 前記事実関係によれば,本件総会当日まで,被上告人を含む上告人の社員に対して,除名事由に当たる具体的な事実が全く示されていない。被上告人に対する除名事由に当たる事実は,別紙(ア)〜(キ)のとおり複雑で多岐にわたるものであることをも考慮すると,本件総会当日まで,被上告人を含む上告人の社員に対して,除名事由に当たる具体的な事実が全く示されていない以上,被上告人は,当該具体的な事実について必要かつ十分な弁明を行うことができず,また,議決権者である社員も,当該具体的な事実に基づいて除名事由の存否を的確に判断することができないものと解される。
 (2) しかも,前記事実関係によれば,本件総会において,被上告人を含む上告人の社員に対して,口頭で,除名事由に当たる事実の説明がされたものの,その事実は,次のとおり,不明確なもので,除名事由に当たる事実が具体的に特定して示されたということはできない。
 ア 除名事由(ア)について
 被上告人が平成11年度厚木市道路用地測量業務で知り得た情報の具体的な内容が全く示されておらず,被上告人にどのような平成11年度厚木市道路用地測量業務委託契約17条に違反する行為があったか明らかでない。
 イ 除名事由(イ)について
 被上告人が上告人の県央西支所の社員のほとんどがコンクリートによる根巻きを怠っているかのような発言をし,厚木市から受託した業務においてコンクリートによる根巻きを怠ったことについての具体的な事実関係が明らかでない。
 ウ 除名事由(ウ)について
 被上告人が厚木市の指示書に従っていない成果品を納入し,厚木市に対し直接苦情の申立てをし,厚木市の行政指導を無視した発言を繰り返したことについての具体的な事実関係が明らかでない。
 エ 除名事由(エ)について
 被上告人が平成13年度厚木市道路用地測量業務で知り得た情報の具体的な内容が全く示されておらず,被上告人にどのような平成13年度厚木市道路用地測量業務委託契約17条に違反する行為があったか明らかでない。
オ 除名事由(オ)について
 �@の「隣地境界の調整不足」及び�Aの「厚木市から,支所長や役員が呼び出され,これらの者の個々の業務に支障を来したこと」についての具体的な事実関係が明らかでない。
 カ 除名事由(カ)について
被上告人が出した質問書及びその添付書類の内容が具体的に明らかにされておらず,被上告人が総会議事録,常任理事会議事録等を持ち出し,それを質問書に利用したことが,どうして上告人の名誉を毀損することになるのか明らかでない。
 キ 除名事由(キ)について
 被上告人が提起した訴訟の内容が全く明らかにされておらず,訴訟の提起がどうして上告人の名誉を毀損することになるのか明らかでない。
 (3) 以上によれば,上告人は,本件決議に当たって,被上告人を含む上告人の社員に対して,除名事由に当たる事実を具体的に特定して示し,被上告人に対し,当該具体的な事実について必要かつ十分な弁明の機会を与えるとともに,議決権者である社員が当該具体的な事実に基づいて除名事由の存否を的確に判断することができるようにしたものということはできない。
 5 したがって,本件決議は,無効というべきである。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)

(別紙)
(ア) 被上告人は,上告人から配分を受けた平成11年度厚木市道路用地測量業務で知り得た情報を基に,平成12年に20件以上にわたる公文書公開請求をし,住民監査請求を行い,厚木市長に対して住民訴訟を起こしたが,この行為は,「業務の処理上知り得た情報を第三者に漏らしてはならない」とする平成11年度厚木市道路用地測量業務委託契約17条に違反するものである。
(イ) 被上告人は,厚木市の職員に対し,上告人の県央西支所の社員のほとんどが,道路用地測量業務における境界標の埋設に関して,コンクリートによる根巻きを怠っているかのような発言をした。そのため,上告人は,厚木市から状況報告を求められ,上告人の県央西支所の役員が調査したところ,コンクリートによる根巻きを怠っているのは,被上告人が施工した現場のみであることが判明した。コンクリートによる根巻きを怠ったことは,厚木市との委託契約に明らかに反している。その後,役員の指導による修正が行われたが,被上告人には,反省のかけらも見られなかった。
(ウ) 被上告人は,上告人から配分を受けた平成13年度厚木市道路用地測量業務において,指示書に従っていない成果品を納入し,上告人の県央西支所の役員から訂正の指示を受けると,これを不服として厚木市に直接苦情の申立てをした。その後,厚木市の職員,上告人の県央西支所の役員,上告人の副理事長が参加して行われた再立会いの場においても,被上告人は,「道路後退幅の選択は地主の自由」などと厚木市の行政指導を無視した発言を繰り返した。
(エ) 被上告人は,上記(ウ)の再立会いを経て成果品を納品した後,「厚木市の建築指導に問題があるのではないか」ということで,連続して公文書公開請求を行い,苦情を申し立てる等の行為をしており,これらの行為は,「業務の処理上知り得た情報を第三者に漏らしてはならない」とする平成13年度厚木市道路用地測量業務委託契約17条に違反するものである。
(オ) �@被上告人は,平成9年度に上告人から配分を受けた道路用地測量業務において,隣地境界の調整不足から地主同士の裁判にまで発展させ,依頼主である厚木市に多大な迷惑をかけ,結果的に,上告人の県央西支所の役員が事態の収拾を図ることとなった。�A被上告人が問題を起こすと,厚木市から,再三再四,支所長や役員が呼び出され,これらの者の個々の業務にも支障を来していた。このままでは,厚木市から業務委託契約を破棄されるおそれがある。�B上告人の県央西支所では,平成13年10月,臨時社員全員協議会を開き,被上告人への配分停止と除名を上告人に上申する件を可決した。
(カ) 被上告人は,平成13年12月,上告人事務室において,総会議事録,常任理事会議事録等を上告人の理事長の許可なく無断で複写して持ち出し,これらの書類を添付書類として,厚木市長に対する質問書という形で利用した。上記常任理事会議事録に記載された常任理事会の内容には,厚木市の担当職員からの「県央西支所の社員に関する指導申入れ」というものもあったようだ。このことにより,厚木市に上告人の体質自体を疑われ,信用を失墜させ,上告人の名誉を著しく傷つけた。被上告人は,上告人から厳重注意の通告を受け,平成14年3月26日付けで退会勧告も出されている。
(キ) 被上告人は,上記(カ)の無断で持ち出した書類を悪用し,平成14年5月30日に理事長以下の上告人の役員を横浜地方裁判所に提訴するなど,上告人の組織そのものを否定している。
            

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