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2005.12.16

最高裁判所判例 平成17年11月24日 第一小法廷判決 平成15年(受)第278号 配当異議事件

判例 平成17年11月24日 第一小法廷判決 平成15年(受)第278号 配当異議事件
要旨: 根抵当権の実行としての競売の申立書に被担保債権及び請求債権の表示としてされた「金8億円 但し,債権者が債務者に対して有する下記債権のうち,下記記載の順序にしたがい上記金額に満つるまで。」との記載が被担保債権の一部について担保権の実行をする趣旨の記載ではないとされた事例

判例 平成17年11月24日 第一小法廷判決 平成15年(受)第278号 配当異議事件
要旨: 根抵当権の実行としての競売の申立書に被担保債権及び請求債権の表示としてされた「金8億円 但し,債権者が債務者に対して有する下記債権のうち,下記記載の順序にしたがい上記金額に満つるまで。」との記載が被担保債権の一部について担保権の実行をする趣旨の記載ではないとされた事例

内容:  件名 配当異議事件 (最高裁判所 平成15年(受)第278号 平成17年11月24日 第一小法廷判決 破棄自判)
 原審 大阪高等裁判所 (平成14年(ネ)第1353号)

主    文
1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 神戸地方裁判所伊丹支部平成12年(ケ)第233号不動産競売事件において,同裁判所が平成13年11月27日に作成した配当表中,順位2番の各債権者に対する「配当実施額等(円)」欄記載の金額を,別表の同各債権者に対応する「変更後の配当額」欄記載の金額にそれぞれ変更する。
3 訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。
         

理    由

 上告代理人井上愛朗ほかの上告受理申立て理由について
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) A,B,被上告人Y1(旧商号はC),被上告人Y2(旧商号はD),被上告人Y3(旧商号はE),F(旧商号はG),被上告人Y4(旧商号はH),被上告人Y5(旧商号はI,旧々商号はJ)及び被上告人Y6は,それぞれ,平成11年4月22日,Kとの間で,同社所有の兵庫県宝�C市山手台西1丁目2番1の宅地ほか101筆の土地(以下,これらを併せて「本件土地」という。)について,債務者を同社,極度額を別表の「極度額」欄記載の金額等とする順位1番の根抵当権の設定契約を締結し,同月28日,その旨の登記を了した。
 (2) 上告人は,平成12年3月17日,Aから,同社の上記根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)及びこれにより担保されていた被担保債権全部を譲り受け,同年4月13日,その旨の付記登記を了した。
 (3) 上告人は,神戸地方裁判所伊丹支部に対し,本件土地を目的とする本件根抵当権の実行としての競売を申し立て(以下,この申立てを「本件申立て」という。),平成12年12月28日,競売開始決定を得た。その際に提出された申立書(以下「本件申立書」という。)中の「担保権・被担保債権・請求債権目録」には,「担保権」として本件根抵当権が記載されており,「被担保債権及び請求債権」として,「金8億円 但し,債権者が債務者に対して有する下記債権のうち,下記記載の順序にしたがい上記金額に満つるまで。」との記載に続けて,上告人がKに対して有する7件の手形貸付に係る各約定遅延損害金債権及び各元本債権(以下,これらを併せて「本件手形貸付債権」という。)がその順に記載されている。
 (4) その後,本件土地につき代金を25億4385万1124円とする売却許可決定がされ,代金が納付された。上告人を含む本件土地の順位1番の各根抵当権者(以下「本件根抵当権者ら」という。)は,それぞれ,別表の「届出債権額等」欄記載の遅延損害金及び元金の各額を記載した債権計算書を提出した。
 (5) 上記裁判所は,平成13年11月27日の配当期日において,本件根抵当権者らに対して別表の「配当額」欄記載の各金額を配当する旨の配当表(以下「本件配当表」という。)を作成した。これらの配当額は,上記売却代金から手続費用2566万9864円を控除した金額を本件抵当権者らの各債権計算書に記載されたそれぞれの債権額(ただし,債権額が極度額を超えるものはそれぞれの極度額の金額により,上告人については本件申立書中の「被担保債権及び請求債権」の部分に記載されていた8億円による。)の割合に応じて按分したものである。
 (6) 上告人は,上記配当期日において,本件配当表中の上告人を除く本件根抵当権者らの各配当額のうち,別表の「変更後の配当額」欄記載の金額を超える部分について配当異議の申出をし,本件根抵当権者らに対する配当額を同欄記載の各金額に変更することを求める本件配当異議の訴えを提起した。
 (7) B及びFの本件土地の根抵当権に係る権利は,いずれも,会社分割及び合併を経て,被上告人Y7に承継された。
 2 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断し,上告人の請求を棄却すべきものとした。
 担保権者が,民事執行規則(平成15年最高裁判所規則第22号による改正前のもの。以下同じ。)170条4号の規定に従い,担保権の実行としての競売の申立書に被担保債権の一部について担保権の実行をする旨及びその範囲を記載した場合において,同順位で配当をすべき複数の債権者が存在し,かつ,その中に申立債権者が含まれているときは,当該債権者らに対する配当額の計算において基礎とすべき申立債権者の債権額は,担保権の実行の基礎として選択された被担保債権の一部の額によるべきである。そして,申立書中に被担保債権とその額を下回る請求債権の記載がある場合は,申立債権者が当該被担保債権のうち当該請求債権の範囲で担保権の実行を申し立てていることを示すものである。本件申立書には,被担保債権として本件手形貸付債権の額を下回る8億円が記載されているのであるから,上告人はその範囲で本件根抵当権の実行をする旨の申立てをしているものであり,請求債権8億円を上告人の債権額として配当額の計算が行われて作成された本件配当表は,正当である。
 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 民事執行規則170条は,担保権の実行としての競売の申立書には,「担保権及び被担保債権の表示」(2号),「担保権の実行又は行使に係る財産の表示」(3号),「被担保債権の一部について担保権の実行又は行使をするときは,その旨及びその範囲」(4号)等を記載しなければならないと規定し,同規則173条1項,23条1号は,不動産に関する競売の申立書には当該不動産の登記簿の謄本を添付しなければならないと規定している。
 上記1のとおり,上告人は,本件申立書により,本件土地に対して本件根抵当権の実行としての競売を申し立て,被担保債権の表示として本件手形貸付債権を記載しているところ,本件申立書添付の登記簿謄本には,本件根抵当権者らの順位1番の各根抵当権が記載されており,また,本件土地は,競売により25億4385万1124円で売却された価値を有するものである。そして,本件申立書には,上告人が被担保債権の一部について本件根抵当権の実行をする旨の明示の記載はない。
 ところで,本件申立書には,「被担保債権及び請求債権」として,「金8億円 但し,債権者が債務者に対して有する下記債権のうち,下記記載の順序にしたがい上記金額に満つるまで。」との記載に続けて本件手形貸付債権の記載がある。原審は,この記載は上告人が被担保債権である本件手形貸付債権のうち8億円の範囲で本件根抵当権の実行を申し立てる趣旨であると解した。しかし,先に述べた本件申立書(添付の不動産登記簿謄本を含む。)の全体の記載の中で上記「被担保債権及び請求債権」の部分の文言を見れば,同部分の記載は,被担保債権である本件手形貸付債権のうち8億円の範囲に限って本件根抵当権の実行を申し立てる趣旨のものとは解し難く,本件手形貸付債権の全部について本件根抵当権を実行し,本件手形貸付債権の全部を配当額の計算の基礎とした上で,本件手形貸付債権のうち「下記記載の順序にしたがい」8億円に満つるまでの配当を請求すること,換言すると,8億円までの範囲で配当を請求することを示す趣旨のものと解するのが相当である。すなわち,上記「被担保債権及び請求債権」の部分の記載は,民事執行規則170条4号の「被担保債権の一部について担保権の実行」をする旨及び「その範囲」を示す記載であると解することはできない。
 そうすると,本件申立てにおいて本件根抵当権の実行の基礎とされた被担保債権は,本件手形貸付債権の全部であるというべきであり,本件申立てに係る競売事件における配当額の計算の基礎となる上告人の債権額は,本件手形貸付債権の額とすべきである。
 4 以上によれば,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を免れない。論旨は,この趣旨をいうものとして理由がある。そして,前記事実関係によれば,本件手形貸付債権の額は63億6939万8436円,上告人を除く本件根抵当権者らの各被担保債権の額は別表の「届出債権額等」欄記載のとおりであり,以上の各被担保債権の額を基礎として本件根抵当権者らの配当額を計算すると,別表の「変更後の配当額」欄記載の各金額となる。そうすると,上告人の請求は理由があるから,これを棄却した第1審判決を取り消して,同請求を認容することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 �コ治 裁判官 島田仁郎)

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