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2006.01.29

最高裁判所判例 平成18年01月17日 第三小法廷決定 平成16年(あ)第2154号 建造物損壊被告事件

判例 平成18年01月17日 第三小法廷決定 平成16年(あ)第2154号 建造物損壊被告事件
要旨:
 公園内の公衆便所の外壁にラッカースプレーでペンキを吹き付け「戦争反対」等と大書した行為が,刑法260条前段にいう建造物の「損壊」に当たるとされた事例

内容:  件名 建造物損壊被告事件 (最高裁判所 平成16年(あ)第2154号 平成18年01月17日 第三小法廷決定 棄却)
原審 東京高等裁判所 (平成16年(う)第646号)

主    文
       本件上告を棄却する。
         

理    由

 弁護人西村正治の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,適法な上告理由に当たらない。
 被告人本人の上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,適法な上告理由に当たらない。
所論にかんがみ,建造物損壊罪の成否につき,職権で判断する。
 1 原判決の是認する第1審判決の認定によれば,本件の事実関係は以下のとおりである。
 (1) 本件建物は,区立公園内に設置された公衆便所であるが,公園の施設にふさわしいようにその外観,美観には相応の工夫が凝らされていた。被告人は,本件建物の白色外壁に,所携のラッカースプレー2本を用いて赤色及び黒色のペンキを吹き付け,その南東側及び北東側の白色外壁部分のうち,既に落書きがされていた一部の箇所を除いてほとんどを埋め尽くすような形で,「反戦」,「戦争反対」及び「スペクタクル社会」と大書した。
 (2) その大書された文字の大きさ,形状,色彩等に照らせば,本件建物は,従前と比べて不体裁かつ異様な外観となり,美観が著しく損なわれ,その利用についても抵抗感ないし不快感を与えかねない状態となり,管理者としても,そのままの状態で一般の利用に供し続けるのは困難と判断せざるを得なかった。ところが,本件落書きは,水道水や液性洗剤では消去することが不可能であり,ラッカーシンナーによっても完全に消去することはできず,壁面の再塗装により完全に消去するためには約7万円の費用を要するものであった。
 2 以上の事実関係の下では,本件落書き行為は,本件建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせたものであって,その効用を減損させたものというべきであるから,刑法260条前段にいう「損壊」に当たると解するのが相当であり,これと同旨の原判断は正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)

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