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2006.01.29

最高裁判所判例 平成18年01月23日 第二小法廷決定 平成16年(あ)第272号 贈賄被告事件

判例 平成18年01月23日 第二小法廷決定 平成16年(あ)第272号 贈賄被告事件
要旨:
 県立医科大学の教授兼同大学附属病院診療科部長が,教育指導している医師を他の病院へ派遣することにつき,賄賂罪における職務関連性が認められた事例

内容:  件名 贈賄被告事件 (最高裁判所 平成16年(あ)第272号 平成18年01月23日 第二小法廷決定 棄却)
 原審 大阪高等裁判所 (平成14年(う)第1649号)

主    文
本件上告を棄却する。
         

理    由

 弁護人野村公平ほかの上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は事実誤認,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論にかんがみ,職権で判断する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,本件の事実関係は次のとおりである。
 (1) 奈良県立医科大学(以下「奈良医大」という。)は,奈良県の条例に基づき設置された公立大学であり,同大学附属病院(以下「附属病院」という。)は,その付属施設である。奈良医大の各臨床医学教室と附属病院の各診療科とは,臨床医学教室での医学の教育研究と診療科での診療を通じた医療の教育研究とを同時に行うべく,1対1で対応しており,人的構成上も,臨床医学教室の教授が対応する診療科の部長を務め,臨床医学教室の助教授がそれに対応する診療科の副部長を務めることとされているなど,いわば一体の組織として構成され,機能している。
 (2) Aは,本件当時,奈良医大の救急医学教室教授であるとともに,附属病院救急科部長であり,教育公務員特例法等の規定により教育公務員とされ,地方公務員としての身分を有していたが,救急医学教室及び救急科に属する助教授以下の教員,医員及び臨床研修医等の医師を教育し,その研究を指導する職務権限を有していた。
 (3) 奈良医大においても,他の多くの大学の医学部・附属病院と同様,臨床医学教室及び診療科に対応して,医局と呼ばれる医師の集団が存在するところ,奈良医大の医局は,長たる教授のほか,助教授以下の教員,医員,臨床研修医,大学院生,専修生及び研究生等により構成されており,大学の臨床医学教室又は附属病院の診療科に籍を置いている者が大半であるが,籍を置かない者もいる。そして,教授は,自己が長を務める医局を主宰,運営する役割を担い,当該医局の構成員を教育指導し,その人事についての権限を持っている。
 (4) Aもまた,奈良医大において,救急医学教室及び救急科に対応する医局に属する助教授以下の教員の採用や昇進,医員,非常勤医師及び臨床研修医の採用,専修生及び研究生の入学許可等につき,実質的な決定権を掌握していたほか,関連病院,すなわち,医局に属する医師の派遣を継続的に受けるなどして医局と一定の関係を有する外部の病院への医師派遣についても,最終的な決定権を有しており,Aにとって,自己が教育指導する医師を関連病院に派遣することは,その教育指導の上でも,また,将来の救急医学教室の教員等を養成する上でも,重要な意義を有していた。
 2 以上の事実関係の下で,Aがその教育指導する医師を関連病院に派遣することは,奈良医大の救急医学教室教授兼附属病院救急科部長として,これらの医師を教育指導するというその職務に密接な関係のある行為というべきである。そうすると,医療法人理事長として病院を経営していた被告人が,その経営に係る関連病院に対する医師の派遣について便宜ある取り計らいを受けたことなどの謝礼等の趣旨の下に,Aに対して金員を供与した本件行為が贈賄罪に当たるとした原判断は正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)

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