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2006.01.29

最高裁判所判例 平成18年01月19日 第一小法廷判決 平成16年(行ヒ)第275号 裁決取消請求事件

判例 平成18年01月19日 第一小法廷判決 平成16年(行ヒ)第275号 裁決取消請求事件
要旨:
1 国税徴収法39条所定の第二次納税義務者は,本来の納税義務者に対する課税処分につき国税通則法75条に基づく不服申立てをすることができる
2 国税徴収法39条所定の第二次納税義務者が本来の納税義務者に対する課税処分につき不服申立てをする場合の不服申立期間の起算日は,当該第二次納税義務者に対する納付告知がされた日の翌日である

内容:  件名 裁決取消請求事件 (最高裁判所 平成16年(行ヒ)第275号 平成18年01月19日 第一小法廷判決 破棄自判)
 原審 東京高等裁判所 (平成16年(行コ)第58号)

主    文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人田中清ほかの上告受理申立て理由について
 1 本件は,A社から同社の保有する株式の譲渡を受けた上告人が,同社に対する法人税の決定及び無申告加算税賦課決定(以下「本件課税処分」という。)に基づく同社の滞納国税につき,国税徴収法39条に基づく第二次納税義務の納付告知(以下「本件告知」という。)を受けたため,それから2か月以内に本件課税処分に対する異議申立てをしたところ,国税通則法77条1項所定の不服申立期間を経過した後にされた申立てであることを理由に異議申立て却下の決定を受け,審査請求に対しても,これを却下する裁決(以下「本件裁決」という。)を受けたため,本件裁決の取消しを求めている事案である。
 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 麹町税務署長は,A社に対し,平成14年3月29日付けで本件課税処分を行い,同年4月3日,本件課税処分の通知書が同社に到達した。
 (2) 東京国税局長は,上告人に対し,同年6月7日,A社の本件課税処分に基づく滞納国税につき,国税徴収法39条に基づく第二次納税義務の納付通知書を発し,同月8日,上記納付通知書が上告人に到達して,本件告知がされた。
 (3) 上告人は,同年8月6日,本件告知に対して異議申立てをするとともに,本件課税処分に対しても異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をした。
 (4) 東京国税局長は,同年10月11日,本件告知に係る異議申立てについて納付限度額変更の異議決定をしたが,本件異議申立てについては,同月17日,不服申立期間は本件課税処分がA社に送達された日の翌日から起算して2か月を経過する同年6月3日までであり,本件異議申立ては不服申立期間を経過した後にされたものであるとして,国税通則法83条1項に基づき,これを却下する旨の決定をした。
 (5) そこで,上告人は,同年11月8日,本件課税処分について審査請求をしたが(なお,同日,本件告知についても審査請求をしている。),被上告人は,同15年4月7日,本件異議申立ては不服申立期間を経過した後にされた不適法なものであり,本件課税処分に係る審査請求は適法な異議申立てを経ないでされた不適法なものであるとして,国税通則法92条に基づき,これを却下する旨の本件裁決をした。
 (6) なお,A社も,同14年7月22日,本件課税処分に対する異議申立てをし,同年10月17日,東京国税局長から,不服申立期間を経過した後にされた申立てであるとして,これを却下する旨の決定を受けたため,同年11月15日,本件課税処分について審査請求をしたが,同年12月2日,上記審査請求を取り下げている。
 3 第1審は,第二次納税義務者は,本来の納税義務者に対する課税処分(以下「主たる課税処分」という。)の取消しを求めるにつき法律上の利益を有し,その適否を争う地位を認められるべきものであるところ,第二次納税義務者が主たる課税処分に対して不服申立てをする場合の不服申立期間の起算日は,主たる課税処分が本来の納税義務者に告知された日の翌日ではなく,第二次納税義務者に納付告知がされ,第二次納税義務が発生した日の翌日と解すべきであるなどとして,上記事実関係の下において,本件異議申立ては不服申立期間内にされた適法なものであると判断し,上告人の請求を認容して,本件裁決を取り消した。
 4 これに対し,原審は,第二次納税義務者は,以下の理由により,本来の納税義務者の納税義務(以下「主たる納税義務」という。)の存否又は数額を争って主たる課税処分に対する不服を申し立てる適格を有しないとして,本件裁決に違法はないと判断し,上告人の請求を棄却すべきものとした。
 (1) 第二次納税義務制度は,本来の納税義務者との間に実質的な一体性を肯定しても公平に反しないような利害共通の関係がある第三者に補充的に納税義務を負担させるものであり,権利救済の面においても,主たる納税義務を争う第二次納税義務者の訴権は,本来の納税義務者によっていわば代理行使されるものとみて,主たる納税義務の徴収手続上の一処分としての性格を有する第二次納税義務の納付告知により,第二次納税義務者に対し,本来の納税義務者との間で確定した主たる納税義務の存否及び数額を所与のものとしてその履行責任を負担させるというものである。
 (2) そうであるとすれば,納付告知を受けた第二次納税義務者は,あたかも主たる納税義務について徴収処分を受けた納税義務者と同一の立場に立つものであるということができ,本来の納税義務者とは別に,主たる課税処分について不服を申し立て又は訴えを提起する固有の利益は有しないものと解するのが相当である。
 5 しかしながら,上告人が主たる課税処分である本件課税処分に対する不服を申し立てる適格を有しないとした原審の判断は,是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 国税徴収法39条は,滞納者である本来の納税義務者が,その国税の法定納期限の1年前の日以後にその財産について無償又は著しく低い額の対価による譲渡,債務の免除その他第三者に利益を与える処分を行ったために,本来の納税義務者に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められるときは,これらの処分により権利を取得し,又は義務を免れた第三者に対し,これらの処分により受けた利益が現に存する限度において,本来の納税義務者の滞納に係る国税の第二次納税義務を課している。
 同条に定める第二次納税義務は,本来の納税義務者に対する主たる課税処分等によって確定した主たる納税義務の税額につき本来の納税義務者に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められる場合に,前記のような関係にある第三者に対して補充的に課される義務であって,主たる納税義務が主たる課税処分によって確定されるときには,第二次納税義務の基本的内容は主たる課税処分において定められるのであり,違法な主たる課税処分によって主たる納税義務の税額が過大に確定されれば,本来の納税義務者からの徴収不足額は当然に大きくなり,第二次納税義務の範囲も過大となって,第二次納税義務者は直接具体的な不利益を被るおそれがある。他方,主たる課税処分の全部又は一部がその違法を理由に取り消されれば,本来の納税義務者からの徴収不足額が消滅し又は減少することになり,第二次納税義務は消滅するか又はその額が減少し得る関係にあるのであるから,第二次納税義務者は,主たる課税処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり,その取消しによってこれを回復すべき法律上の利益を有するというべきである。
 そうすると,国税徴収法39条所定の第二次納税義務者は,主たる課税処分につき国税通則法75条に基づく不服申立てをすることができるものと解するのが相当である。
 確かに,一般的,抽象的にいえば,国税徴収法上第二次納税義務者として予定されるのは,本来の納税義務者と同一の納税上の責任を負わせても公平を失しないような特別な関係にある者であるということができるが,その関係には種々の態様があるのであるし,納付告知によって自ら独立した納税義務を負うことになる第二次納税義務者の人的独立性を,すべての場面において完全に否定し去ることは相当ではない。特に,本件で問題となっている国税徴収法39条所定の第二次納税義務者は,本来の納税義務者から無償又は著しく低い額の対価による財産譲渡等を受けたという取引相手にとどまり,常に本来の納税義務者と一体性又は親近性のある関係にあるということはできないのであって,譲渡等による利益を受けていることをもって,当然に,本来の納税義務者との一体性を肯定して両者を同一に取り扱うことが合理的であるということはできない。また,第二次納税義務が成立する場合の本来の納税義務者は,滞納者であるから,自己に対する主たる課税処分に瑕疵があり,これに不服があるとしても,必ずしも時間や費用の負担をしてまで主たる課税処分に対する不服申立て等の争訟に及ぶとは限らないのであり,本来の納税義務者によって第二次納税義務者の訴権が十分に代理されているとみることは困難である。なお,主たる納税義務が申告によって確定する場合には,第二次納税義務者が本来の納税義務者の申告自体を直接争う方法はないのであるが,そのことから逆に,行政権の違法な行使によって権利利益の侵害が生ずる場合にまで,これを争う方法を否定する結論を導くべきであるとは考えられない。
 (2) 第二次納税義務は,本来の納税義務者に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められるときに,初めて,その義務が成立するものであり,主たる課税処分の時点では,上記のような第二次納税義務が成立する要件が充足されるかどうかが未確定であることも多い。したがって,本来の納税義務者以外の第三者がそのような段階で主たる課税処分の存在を知ったとしても,当該第三者において,それが自己の法律上の地位に変動を及ぼすべきものかどうかを認識し得る状態にはないといわざるを得ない。他方,第二次納税義務者となる者に主たる課税処分に対する不服申立ての適格を肯定し得るのは,納付告知を受けて第二次納税義務者であることが確定したか,又は少なくとも第二次納税義務者として納付告知を受けることが確実となったと客観的に認識し得る時点からであると解される。そうであるのに,不服申立ての適格を肯定し得ない段階で,その者について不服申立期間が進行していくというのは背理というべきである。
 殊に国税徴収法39条所定の第二次納税義務者は,前記のとおり,本来の納税義務者から無償又は著しく低い額の対価による財産譲渡等を受けたという取引相手にとどまり,常に本来の納税義務者と一体性又は親近性のある関係にあるということはできないのであって,第二次納税義務を確定させる納付告知があるまでは,不服申立ての適格があることを確実に認識することはできないといわざるを得ない。その反面,納付告知があれば,それによって,主たる課税処分の存在及び第二次納税義務が成立していることを確実に認識することになるのであって,少なくともその時点では明確に「処分があったことを知った」ということができる。
 そうすると,国税徴収法39条所定の第二次納税義務者が主たる課税処分に対する不服申立てをする場合,国税通則法77条1項所定の「処分があったことを知った日」とは,当該第二次納税義務者に対する納付告知(納付通知書の送達)がされた日をいい,不服申立期間の起算日は納付告知がされた日の翌日であると解するのが相当である。
6 以上によれば,上告人は,本件課税処分につき国税通則法75条1項所定の不服申立ての適格を有するところ,平成14年6月8日に同月7日付けの東京国税局長による納付通知書の送達を受け,同年8月6日に本件異議申立てを行っているのであるから,本件異議申立ては同法77条1項所定の不服申立期間内にされた適法なものであり,本件審査請求が適法な異議申立てを経ていないことを理由としてこれを却下した本件裁決は,取り消されるべきである。
 そうすると,上告人の不服申立ての適格を否定して本件異議申立てを不適法とし,本件裁決を適法とした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記説示によれば,上告人の請求を認容した第1審判決は正当であるから,被上告人の控訴を棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官泉�コ治の意見がある。
裁判官泉�コ治の意見は,次のとおりである。
私は,本件異議申立ては国税通則法77条1項所定の不服申立期間内にされた適法なものであるとの多数意見の結論に同調するものであるが,その理由を異にする。以下に,私の見解を述べることとする。
 国税局長又は税務署長は,納税者の国税を第二次納税義務者から徴収しようとするときは,その者に対し,徴収しようとする金額,納付の期限その他必要な事項を記載した納付通知書により告知しなければならない(国税徴収法32条)。この納付通知書による告知(以下「納付告知処分」という。)は,本来の納税義務者に対する課税処分(主たる課税処分)により確定した国税を徴収するためのものではあるが,単なる徴収手続上の一処分にとどまるものではなく,本来の納税義務者とは別人格の第二次納税義務者に対し,新たに納税義務を成立させ確定させる性質も有している。第二次納税義務者の納税義務は,この納付告知処分によって成立し確定するのである。納付告知処分の要件の一つとして主たる課税処分が組み込まれてはいるが,第二次納税義務者の納税義務と,本来の納税義務者の納税義務とは別個独立のものである。したがって,第二次納税義務者は,自己の第二次納税義務の成立自体にかかわる問題として,納付告知処分の内容に組み込まれた主たる課税処分の違法性を,独自に争うことができるというべきである。主たる課税処分の公定力は,第二次納税義務者が自己に課せられた納税義務,すなわち第二次納税義務を争うために,その要件の一部を構成する主たる課税処分の違法性を主張することを妨げるものではない。換言すると,第二次納税義務者は,独自に,納付告知処分の取消請求の中で主たる課税処分の違法性を主張することができると解すべきである。そうすると,第二次納税義務者は,自己の法的利益を守るため,主たる課税処分の取消し自体を請求するまでの必要がなく,主たる課税処分の取消訴訟の原告適格を有しないというべきである。
 最高裁昭和48年(行ツ)第112号同50年8月27日第二小法廷判決・民集29巻7号1226頁は,納付告知処分を受けた第二次納税義務者は,主たる納税義務について徴収処分を受けた本来の納税義務者と同様の立場に立つものであって,納付告知処分の取消訴訟において,確定した主たる納税義務の存否又は数額を争うことができないというが,第二次納税義務の独立性を認めず,第二次納税義務者の納税義務が納付告知処分により成立し確定することを無視するものであって,変更されるべきである。
 しかし,本件は,納付告知処分が争われている事案ではなく,上記判決の変更を議論するのに適切な事案ともいえないところ,上記判決が変更されない以上,第二次納税義務者として,主たる課税処分の違法を理由に第二次納税義務の成立確定を争うためには,主たる課税処分そのものの取消しを請求するほかないから,第二次納税義務者に主たる課税処分の取消訴訟の原告適格を認めるべきであり,したがって,その前置手続である異議申立て及び審査請求をすることを認めるべきである。そして,第二次納税義務者は,納付告知処分によって成立確定した自己の納税義務の取消しを求めるために,主たる課税処分の違法性を主張するものであり,本来,納付告知処分の取消訴訟において主たる課税処分の違法を争うことができるのであるから,上記異議申立てに係る国税通則法77条1項所定の不服申立期間は,第二次納税義務者が納付告知処分のあったことを知った日の翌日から起算すべきである。
(裁判長裁判官 才口千晴 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 �コ治 裁判官 島田仁郎)

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