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2006.01.29

最高裁判所判例 平成18年01月24日 第三小法廷判決 平成15年(受)第1653号 生命保険証券及び傷害保険証券返還等請求事件

判例 平成18年01月24日 第三小法廷判決 平成15年(受)第1653号 生命保険証券及び傷害保険証券返還等請求事件
要旨:
1 日賦貸金業者の貸付けについて,借用証書の記載内容が,貸金業法17条1項に規定する書面の記載事項である「各回の返済期日」の記載として正確性又は明確性を欠くので,借主に交付された上記借用証書の写しは上記書面に該当しないとされた事例
2 日賦貸金業者に貸金業法43条1項の規定が適用されるためには,平成12年法律第112号による改正前の出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律(昭和58年法律第33号)附則9項所定の各要件が実際の貸付けにおいて現実に充足されていることが必要である

内容:  件名 生命保険証券及び傷害保険証券返還等請求事件 (最高裁判所 平成15年(受)第1653号 平成18年01月24日 第三小法廷判決 破棄差戻し)
 原審 福岡高等裁判所 (平成14年(ネ)第929号)

主    文
原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         

理    由

 第1 事案の概要
 1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 被上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)3条所定の登録を受けて貸金業を営む貸金業者であり,平成12年法律第112号による改正前の出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律(昭和58年法律第33号)附則(以下「出資法附則」という。)9項所定の業務の方法による貸金業のみを行う日賦貸金業者である。
 (2) 被上告人は,利息年109.5%,支払期日に約定の元本及び利息の支払を1回でも怠ったときは,当然に期限の利益を失い,直ちに残元本全部と利息,損害金を支払うとの条項(以下「本件期限の利益喪失条項」という。)を含む約定で,次のとおり,上告人に金銭を貸し付けた(以下,これらの貸付けを,番号に従い,「本件�@貸付け」などといい,「本件各貸付け」と総称する。)。本件�B貸付けは,本件�A貸付けの約定の返済期間の途中で,残元本に貸増しが行われ,貸増し後の元本の合計金額を契約金額として,新たに契約が締結されたものであり,また,本件�C〜�G貸付けについても,同様に,その直前の貸付けの約定の返済期間の途中で,貸増しが行われたものである。
 �@ 平成10年 4月14日  40万円
 �A 平成10年10月29日  40万円
 �B 平成11年 5月14日  40万円
 �C 平成11年 8月 6日  50万円
 �D 平成11年12月25日  50万円
 �E 平成12年 1月 7日 100万円
 �F 平成12年 4月13日 100万円
 �G 平成12年 8月18日 100万円
 (3) 被上告人は,上告人に対し,本件各貸付けに際し,借用証書の写しをそれぞれ交付したところ,本件�B〜�E貸付けの各借用証書には,「契約手渡金額」欄があり,同欄の下部には「上記のとおり借用し本日この金員を受領しました。」との記載があるにもかかわらず,上記「契約手渡金額」欄には,上記各貸付けに係る契約の際に被上告人から上告人に実際に手渡された金額ではなく,実際に手渡された金額とその直前の貸付けの残元本の金額との合計金額が記載されていた。
 (4) 本件�@〜�C貸付けにおいては,日曜日,第2土曜日,第3土曜日,国民の祝日,年末年始休暇(毎年12月31日から翌年1月5日までの6日間)及び夏期休暇(毎年8月13日から同月17日までの5日間)には,集金をしない旨の合意があったにもかかわらず(以下,集金をしない旨の合意のある日のことを「集金休日」という。),本件�@貸付けの借用証書には,集金休日の記載はなく,また,本件�A〜�C貸付けの各借用証書には,日曜日,第2土曜日,第3土曜日,国民の祝日及び「その他取引をなさない慣習のある休日」を集金休日とする旨の記載がされていた。
 (5) 上告人は,本件�E貸付けに係る契約を締結した平成12年1月7日,被上告人に対し,被担保債権を上告人と被上告人との間の金銭消費貸借取引及び金銭準消費貸借取引に基づく債務並びに金銭消費貸借取引及び金銭準消費貸借取引に基づき将来発生する一切の債務,存続期間を契約日より10年などとして,上告人が保険契約者となっている第1審判決別紙1保険目録記載1の生命保険契約と同目録記載2の傷害保険契約の各保険金請求権等に根質権(以下「本件根質権」という。)を設定し,上記各契約の各保険証券(以下「本件各保険証券」という。)を交付した。
 (6) 本件�D貸付けの借用証書には,「この契約には,従前の契約番号400754号の残元金32万9920円が含まれています。」との記載があるが,上記契約番号の貸付けの残元本の金額は32万8920円であった。
 (7) 本件�B貸付けについては,契約締結時の契約内容においては,返済期間が100日以上と定められていたところ,約定の返済期間の途中で,残元本に貸増しが行われ,貸増し後の元本の合計金額を契約金額として,新たに本件�C貸付けに係る契約が締結され,本件�B貸付けに係る債務が消滅したために,同債務については,返済期間が100日未満となったものであり,また,本件�D,�E貸付けについても,同様に,契約締結時の契約内容においては,返済期間が100日以上と定められていたところ,約定の返済期間の途中で,残元本に貸増しが行われ,貸増し後の元本の合計金額を契約金額として,新たにその直後の貸付けに係る契約が締結され,旧債務が消滅したために,旧債務については,返済期間が100日未満となったものである。
 (8) 本件各貸付けについては,いずれも,契約締結時の契約内容においては,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により取り立てる日数が,返済期間の全日数の100分の70以上と定められていたところ,実際の貸付けにおいては,本件�@,�B,�C貸付けについては,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により取り立てた日数が,返済のされなかった日を除いても,返済期間の全日数の100分の70以上であり,本件�A,�E〜�G貸付けについては,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により取り立てた日数が,返済のされなかった日を含めれば,返済期間の全日数の100分の70以上であったが,返済のされなかった日を除けば,返済期間の全日数の100分の70未満であり,また,本件�D貸付けについては,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により取り立てた日数(返済のされなかった日はない。)は,返済期間の全日数の100分の70未満であった。
 (9) 上告人は,被上告人に対し,本件各貸付けの弁済として,第1審判決別紙2「取引履歴(債務者 兼武良行)」の「年月日」欄記載の各年月日に,「支払額」欄記載の各金銭を支払った(以下,これらの支払を「本件各弁済」と総称する。)。
 (10) 本件各弁済後に,上告人が破産したことなどにより,本件根質権によって担保される債権の元本は確定した。
 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件各弁済のとおり支払われた利息等のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額(以下,単に「利息の制限額」という。)を超える部分(以下「制限超過部分」という。)等を元本に充当すると過払金が生じており,本件根質権の確定元本額も0円となることから,被上告人は,本件各保険証券を占有する権原を失ったものであるなどとして,本件各保険証券の返還を求める事案である。
 3 原審は,本件各弁済には貸金業法43条1項の規定が適用されるから,本件各貸付けの債務は残存しており,被上告人は本件各保険証券を占有する権原を失っていないなどとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。
 第2 上告代理人松尾紀男の上告受理申立て理由第2の1(2)の点,第2の2(1)の点,第2の2(3)のうち貸金業法17条1項の解釈適用の誤りをいう点,第2の2(6)のうち本件�D貸付けの借用証書の不備をいう点について
 1 原審は,次のとおり判断するなどして,本件各貸付けについては,貸金業法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面が交付されたものといえるとした。
 (1) 本件�B〜�E貸付けの各借用証書の「契約手渡金額」欄には,各貸付けに係る契約の際に被上告人から上告人に実際に手渡された金額ではなく,実際に手渡された金額とその直前の貸付金の残元本の金額との合計金額が記載されているが,借用証書には,別途,従前の貸付けの債務の残高が記載されているのであるから,これらの借用証書であっても,貸金業法17条1項3号の「貸付けの金額」の記載要件を充足する。
 (2) 本件�@貸付けの借用証書には,年末年始休暇や夏期休暇の期間等を集金休日とする旨の記載が欠けているが,上記期間等が集金休日であることについては,社会通念上推知することができるのであるから,この借用証書であっても,貸金業法17条1項所定の要件を具備した書面といえる。本件�A〜�C貸付けの借用証書についても同様のことがいえる。
 2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 貸金業法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が利息の制限額を超え,利息制限法上,制限超過部分につき,その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,貸金業に係る業務規制として定められた貸金業法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守したときには,利息制限法1条1項の規定にかかわらず,その支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める貸金業法の趣旨,目的と,同法に上記業務規制に違反した場合の罰則が設けられていること等にかんがみると,同法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものである。
 貸金業法43条1項の規定の適用要件として,貸金業者は同法17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)を貸付けの相手方に交付しなければならないものとされているが,17条書面には同法17条1項所定の事項のすべてが記載されていることを要するものであり,それらの一部が記載されていないときは,同法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきであって,有効な利息の債務の弁済とみなすことはできない(最高裁平成14年(受)第912号同16年2月20日第二小法廷判決・民集58巻2号380頁,最高裁平成15年(オ)第386号,同年(受)第390号同16年2月20日第二小法廷判決・民集58巻2号475頁参照)。
 そして,貸金業法17条1項が,貸金業者につき,貸付けに係る契約を締結したときに,17条書面を交付すべき義務を定めた趣旨は,貸付けに係る合意の内容を書面化することで,貸金業者の業務の適正な運営を確保するとともに,後日になって当事者間に貸付けに係る合意の内容をめぐって紛争が発生するのを防止することにあると解される。したがって,17条書面の貸金業法17条1項所定の事項の記載内容が正確でないときや明確でないときにも,同法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきであって,有効な利息の債務の弁済とみなすことはできない。
 (2) 17条書面には「貸付けの金額」を記載しなければならないが(貸金業法17条1項3号),前記事実関係によれば,本件�B〜�E貸付けの各借用証書には,「契約手渡金額」欄があり,同欄の下部には,「上記のとおり借用し本日この金員を受領しました。」との記載があるにもかかわらず,上記「契約手渡金額」欄には,上記各貸付けに係る契約の際に被上告人から上告人に実際に手渡された金額ではなく,実際に手渡された金額とその直前の貸付金の残元本の金額との合計金額が記載されていたというのであるから,これらの借用証書の上記事項の記載内容は正確でないというべきである。そうすると,これらの借用証書の写しの交付をもって,本件�B〜�E貸付けについて17条書面の交付がされたものとみることはできない。このことは,借用証書に別途従前の貸付けの債務の残高が記載されているとしても,左右されるものではない。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 (3) 17条書面には「各回の返済期日及び返済金額」を記載しなければならないが(貸金業法17条1項8号(平成12年法律第112号による改正前のもの),貸金業の規制等に関する法律施行規則(以下「施行規則」という。)13条1項1号チ),前記事実関係によれば,本件�@貸付けの借用証書においては,集金休日の記載がされていなかったというのであるから,この借用証書の上記事項の記載内容は正確でなく,また,本件�A〜�C貸付けの借用証書においては,「その他取引をなさない慣習のある休日」を集金休日とする旨の記載がされていたというのであるから,これらの借用証書の上記事項の記載内容は明確でないというべきである。そうすると,これらの借用証書の写しの交付をもって,本件�@〜�C貸付けについて17条書面の交付がされたものとみることはできない。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 (4) 17条書面には「貸付けに関し貸金業者が受け取る書面の内容」及び「当該契約に基づく債権につき物的担保を供させるときは,当該担保」を記載しなければならないが(貸金業法17条1項8号(平成12年法律第112号による改正前のもの),施行規則13条1項1号ハ,同号ル(ただし,本件�E,�F貸付けについては,同号ヌ(平成12年総理府令・大蔵省令第25号による改正前のもの))),前記事実関係によれば,上告人は,本件�E貸付けに係る契約を締結した平成12年1月7日,被上告人に対し,本件根質権を設定し,本件各保険証券を交付したというのであるから,本件�E〜�G貸付けの各借用証書には,本件各保険証券や本件根質権の内容等を記載しなければならず,これが記載されていないときには,貸金業法17条1項所定の事項の一部についての記載がされていないこととなるにもかかわらず,原審は,上記の点についての認定判断をしないで,これらの借用証書の写しの交付をもって,本件�E〜�G貸付けについて17条書面の交付がされたものと判断したものであるから,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 (5) 17条書面には「当該契約が,従前の貸付けの契約に基づく債務の残高を貸付金額とする貸付けに係る契約であるときは,従前の貸付けの契約に基づく債務の残高の内訳(元本,利息及び当該貸付けの契約に基づく債務の不履行による賠償額の別をいう。)」を記載しなければならないが(貸金業法17条1項8号(平成12年法律第112号による改正前のもの),施行規則13条1項1号ワ(平成12年総理府令・大蔵省令第25号による改正前のもの)),前記事実関係によれば,本件�D貸付けの借用証書においては,従前の貸付けの契約に基づく債務の残元本額の記載が誤っていたというのであるから,この借用証書の上記事項の記載内容は正確でないというべきである。そうすると,この借用証書の写しの交付をもって,本件�D貸付けについて17条書面の交付がされたものとみることはできない。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 3 以上によれば,上記の諸点についての論旨はいずれも理由があり,原判決は破棄を免れない。
 第3 上告代理人松尾紀男の上告受理申立て理由第2の2(7)の点について
 本件期限の利益喪失条項がその文言どおりの効力を有するとすれば,上告人は,支払期日に制限超過部分を含む約定利息の支払を怠った場合には,元本についての期限の利益を当然に喪失し,残元本全額及び経過利息を直ちに一括して支払う義務を負うことになるが,このような結果は,上告人に対し,期限の利益を喪失する不利益を避けるため,本来は利息制限法1条1項によって支払義務を負わない制限超過部分の支払を強制することとなるから,同項の趣旨に反し容認することができない。本件期限の利益喪失条項のうち,制限超過部分の利息の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,利息制限法1条1項の趣旨に反して無効であり,上告人は,支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。
 しかしながら,前記のとおり,貸金業法17条1項が,貸金業者に17条書面の交付義務を定めた趣旨は,貸付けに係る合意の内容を書面化することで,貸金業者の業務の適正な運営を確保するとともに,後日になって当事者間に貸付けに係る合意の内容をめぐって紛争が発生するのを防止することにあるのであるから,同項及びその委任に基づき定められた施行規則13条1項は,飽くまでも当事者が合意した内容を正確に記載することを要求しているものと解するのが相当であり,このことは,当該合意が法律の解釈適用によって無効又は一部無効となる場合であっても左右されるものではないと解される。
 そうすると,上告人と被上告人が合意した期限の利益喪失条項の内容を正確に記載している本件各貸付けの各借用証書は,貸金業法17条1項8号(平成12年法律第112号による改正前のもの),施行規則13条1項1号ヌ(ただし,本件�@〜�F貸付けについては,同号リ(平成12年総理府令・大蔵省令第25号による改正前のもの))所定の「期限の利益の喪失の定めがあるときは,その旨及びその内容」の記載に欠けるところはないというべきである。
 論旨は採用することができない。
 第4 上告代理人松尾紀男の上告受理申立て理由第2の2(2)(4)の各点について
 1 原審の判断は,次のとおりである。
 (1) 出資法附則9項2号所定の要件を具備するか否かは,契約締結時の契約内容によって判断されるべきであると解されるところ,本件各貸付けについては,いずれも,契約締結時の契約内容においては,返済期間が100日以上と定められていたのであるから,上記要件を具備する。
 (2) 出資法附則9項3号所定の要件については,日賦貸金業者が貸付けの相手方の営業所等において自ら集金する方法により金銭を取り立てた日数が,返済のされなかった日を含めて,返済期間の全日数の100分の70以上であれば,具備すると解されるところ,本件�@〜�C,�E〜�G貸付けについては,いずれも,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により金銭を取り立てた日数が,返済のされなかった日を含めれば,返済期間の全日数の100分の70以上であったのであるから,上記要件を具備するものであり,また,本件�D貸付けについては,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により金銭を取り立てた日数(返済のされなかった日はない。)は,返済期間の全日数の100分の70未満であったものの,その返済期間が年末年始の期間を含むものであったことなどに照らすと,上記要件を具備するものといえる。
 2 しかしながら,原審の上記判断のうち,1の(2)の本件�@〜�C,�E〜�G貸付けに関する部分は是認することができるが,その余の部分は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 出資法附則8項が,日賦貸金業者について出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律5条2,3項の特例を設け,一般の貸金業者よりも著しく高い利息について貸金業法43条1項の規定が適用されるものとした趣旨は,日賦貸金業者が,小規模の物品販売業者等の資金需要にこたえるものであり,100日以上の返済期間,毎日のように貸付けの相手方の営業所又は住所において集金する方法により少額の金銭を取り立てるという出資法附則9項所定の業務の方法による貸金業のみを行うものであるため,債権額に比して債権回収に必要な労力と費用が現実に極めて大きなものになるという格別の事情があるからであると考えられる。そうすると,日賦貸金業者について貸金業法43条1項の規定が適用されるためには,契約締結時の契約内容において出資法附則9項所定の各要件が充足されている必要があることはもとより,実際の貸付けにおいても上記各要件が現実に充足されている必要があると解するのが相当である。
 (2) 前記事実関係によれば,本件�B貸付けについては,契約締結時の契約内容においては,返済期間が100日以上と定められていたところ,約定の返済期間の途中で,残元本に貸増しが行われ,貸増し後の元本の合計金額を契約金額として,新たに本件�C貸付けに係る契約が締結され,本件�B貸付けに係る債務が消滅したために,同債務については,返済期間が100日未満となったものであり,また,本件�D,�E貸付けについても,同様に,契約締結時の契約内容においては,返済期間が100日以上と定められていたところ,約定の返済期間の途中で,残元本に貸増しが行われ,貸増し後の元本の合計金額を契約金額として,新たにその直後の貸付けに係る契約が締結され,旧債務が消滅したために,旧債務については,返済期間が100日未満となったというのである。そうすると,本件�B,�D,�E貸付けについては,契約締結時の契約内容においては出資法附則9項2号所定の要件が充足されていたが,実際の貸付けにおいては上記要件が現実に充足されていなかったのであるから,貸金業法43条1項の規定の適用はない。
 (3) また,前記事実関係によれば,本件各貸付けについては,いずれも,契約締結時の契約内容においては,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により金銭を取り立てる日数が,返済期間の全日数の100分の70以上と定められており,本件�@〜�C,�E〜�G貸付けについては,実際の貸付けにおいても,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により金銭を取り立てた日数が,返済のされなかった日を含めれば,返済期間の全日数の100分の70以上であったが,本件�D貸付けについては,実際の貸付けにおいては,上告人の営業所等において被上告人が自ら集金する方法により金銭を取り立てた日数(返済のされなかった日はない。)は,返済期間の全日数の100分の70未満であったというのである。そして,出資法附則9項3号の文理に照らすと,日賦貸金業者が貸付けの相手方の営業所等において自ら集金する方法により金銭を取り立てた日数が,返済のされなかった日を含めて,返済期間の全日数の100分の70以上であれば,実際の貸付けにおいて同号所定の要件が現実に充足されているといえると解すべきである。そうすると,本件�@〜�C,�E〜�G貸付けについては,契約締結時の契約内容において出資法附則9項3号所定の要件が充足されていることはもとより,実際の貸付けにおいても上記要件が現実に充足されていたといえるのであるから,この点において貸金業法43条1項の規定の適用が否定されるものではないが,本件�D貸付けについては,契約締結時の契約内容において出資法附則9項3号所定の要件が充足されていたものの,実際の貸付けにおいては上記要件が現実に充足されていなかったのであるから,貸金業法43条1項の規定の適用はない。
 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 3 以上によれば,論旨は,上記の限度で理由があり,原判決は破棄を免れない。
 第5 結論
 以上のとおりであるから,原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)

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