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2006.03.01

最高裁判所判例 平成18年02月17日 第二小法廷決定 平成17年(許)第39号 文書提出命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

判例 平成18年02月17日 第二小法廷決定 平成17年(許)第39号 文書提出命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
要旨: 銀行の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書であって一般的な業務遂行上の指針等が記載されたものが民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないとされた事例

内容:  件名 文書提出命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 (最高裁判所 平成17年(許)第39号 平成18年02月17日 第二小法廷決定 棄却)
 原審 東京高等裁判所 (平成17年(ラ)第1307号)

主    文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
         

理    由

 抗告代理人小田木毅ほかの抗告理由について
 1 記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。
 本件の本案訴訟(横浜地方裁判所平成16年(ワ)第1459号貸金等請求事件)は,銀行である抗告人が,相手方らに対し,消費貸借契約及び連帯保証契約に基づき合計11億5644万円余の支払を求めるものである。
 相手方らは,上記本案訴訟において,(1) 抗告人と相手方らとの取引(本件取引)は融資一体型変額保険に係る融資契約に基づく債務を旧債務とする準消費貸借契約であるところ,同融資契約は錯誤により無効である,(2) 仮に本件取引が消費貸借契約であったとしても,融資一体型変額保険に係る融資契約は錯誤により無効であり,同契約に関して相手方らが抗告人に支払った金員について,相手方らは不当利得返還請求権を有するので,同請求権と抗告人の本訴請求債権とを対当額で相殺すると主張して争っている。
 本件は,相手方らが,融資一体型変額保険の勧誘を抗告人が保険会社と一体となって行っていた事実を証明するためであるとして,抗告人が所持する原々決定別紙文書目録(ただし,原決定により訂正されたもの)1ないし7記載の各文書(本件各文書)につき文書提出命令を申し立てた事件である。相手方らは,本件各文書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない同号の文書に該当すると主張した。
 2 ある文書が,その作成目的,記載内容,これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解するのが相当である(最高裁平成11年(許)第2号同年11月12日第二小法廷決定・民集53巻8号1787頁参照)。
 これを本件各文書についてみると,記録によれば,本件各文書は,いずれも銀行である抗告人の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から,各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書であって,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や抗告人の高度なノウハウに関する記載は含まれておらず,その作成目的は,上記の業務遂行上の指針等を抗告人の各営業店長等に周知伝達することにあることが明らかである。
 このような文書の作成目的や記載内容等からすると,本件各文書は,基本的には抗告人の内部の者の利用に供する目的で作成されたものということができる。しかしながら,本件各文書は,抗告人の業務の執行に関する意思決定の内容等をその各営業店長等に周知伝達するために作成され,法人内部で組織的に用いられる社内通達文書であって,抗告人の内部の意思が形成される過程で作成される文書ではなく,その開示により直ちに抗告人の自由な意思形成が阻害される性質のものではない。さらに,本件各文書は,個人のプライバシーに関する情報や抗告人の営業秘密に関する事項が記載されているものでもない。そうすると,本件各文書が開示されることにより個人のプライバシーが侵害されたり抗告人の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって抗告人に看過し難い不利益が生ずるおそれがあるということはできない。
 3 以上のとおりであるから,本件各文書は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」には当たらないというべきである。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)

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