« 最高裁判所判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成15年(受)第1103号 所有権移転登記抹消登記手続請求事件 | トップページ | 最高裁判所判例 平成18年02月24日 第二小法廷判決 平成17年(受)第882号 損害賠償請求事件 »

2006.03.01

最高裁判所判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成16年(行ヒ)第326号 法人税更正処分等取消請求事件

判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成16年(行ヒ)第326号 法人税更正処分等取消請求事件
要旨: 外国税額控除制度を濫用する取引に基づいて生じた所得について外国の法令により課された法人税に相当する税を法人税法(平成10年法律第24号による改正前のもの)69条の定める外国税額控除の対象とすることはできないとされた事例

内容:  件名 法人税更正処分等取消請求事件 (最高裁判所 平成16年(行ヒ)第326号 平成18年02月23日 第一小法廷判決 破棄自判)
 原審 大阪高等裁判所 (平成14年(行コ)第82号)

主    文
1 原判決中,別紙処分目録記載の各処分の取消請求に係る部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消し,被上告人の請求を棄却する。
2 前項並びに第1審判決主文第1,2及び7項の部分に関する訴訟の総費用は被上告人の負担とし,その余の訴訟の総費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人都築弘ほかの上告受理申立て理由について
 1 本件は,銀行業を営む被上告人訴訟被承継人(以下「本件銀行」という。)が,外国において我が国との関係で二重課税を生じさせるような取引を行って外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を納付した上で,外国税額の控除について定める法人税法(平成10年法律第24号による改正前のもの。以下同じ。)69条の規定を適用して,我が国において納付すべき法人税の額から上記外国法人税の額を控除して申告をしたところ,当時の所轄税務署長である東税務署長から上記控除は認められないとして法人税の更正並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定を受けたので,被上告人が,東税務署長の事務を承継した上告人との間で,これを争っている事案である。
 2 原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) A社に係る取引
 ニュージーランドで設立された法人であるA社は,ケイマン諸島に子会社であるB社を設立し,同社によって調達した資金をニュージーランド国内に持ち込み運用しようとした。この場合に,B社からA社に対して直接に資金を貸し付ける方法を採ったときは,ニュージーランドの税制によればA社からB社に支払われる利息に対して15%の割合の源泉税が課されることになる。そこで,本件銀行とA社及びB社の間で,本件銀行の外国税額控除の余裕枠を利用して上記源泉税の負担を軽減すべく,昭和63年12月15日付けで次のような内容の各契約が締結され,これらが実行された。
 ア 本件銀行とA社との間のローン契約
 上記ローン契約は,本件銀行がA社に対して160億円を貸し付け,A社がロンドン銀行間資金市場での貸出レートに年利0.185%を加算した利率による利息を本件銀行に支払うことを内容とする契約であり,同契約によれば,A社は,上記利息を支払う際,ニュージーランドにおいて課される15%の割合の源泉税額を控除して支払うことができるとされていた。
 イ 本件銀行とB社との間の預金契約
 上記預金契約は,本件銀行が上記アのローン契約に基づき貸付けが実行される日に,B社から160億円の預入れを受けること,B社は上記アのローン契約に基づくA社の支払債務が全額弁済されるまで預金の払戻し,引き出し及び振替等の処分をすることができないこと,本件銀行はA社から上記アの貸付金利息の支払を受けることを条件に,A社から受領した貸付金利息(源泉税額控除後のもの)に上記アの源泉税額を加算した金額から本件銀行の取得する年利0.185%の利ざやを控除した金額を預金利息としてB社に支払うことを内容とする契約である。
 (2) C社に係る取引
 ルクセンブルク大公国で設立された法人であるD社の支配下にある企業グループは,調達した資金をクック諸島に持ち込み,クック諸島で設立されたグループ法人であるC社に運用させることとし,その方法として,バーミューダ諸島にE社を設立して同社に資金調達をさせ,C社に貸し付けることとした。この場合に,E社からC社に直接に資金を貸し付ける方法を採ったときは,クック諸島の税制によればC社からE社に支払われる利息に対して15%の割合の源泉税が課されることになる。そこで,本件銀行とC社及びE社の間で,本件銀行の外国税額控除の余裕枠を利用して上記源泉税の負担を軽減すべく,昭和63年9月29日付けで次のような内容の各契約が締結されたほか,同年12月21日付けで,貸付金利率,預金利率及び与信枠設定手数料額を除いて同一の内容の各契約が締結され,これらが実行された。
 ア 本件銀行とC社との間のローン契約
 上記ローン契約は,本件銀行がC社に対し,2億米国ドルの与信枠を設定し,年利11.37%(この取引をあっせんしたF社が取得する利得の割合0.08%を含む。)で貸付けを行うことを内容とする契約であり,同契約によれば,C社は,当該貸付金利息を支払う際,クック諸島において課される15%の割合の源泉税額を控除して支払うことができるとされていた。また,同契約によれば,C社は,本件銀行に対し,与信枠設定手数料として20万米国ドルを支払うこととされていた。
 イ 本件銀行とE社との間の預金契約
 上記預金契約は,E社が上記アのローン契約に係る資金を本件銀行に供給するために,本件銀行のC社に対する貸付金額と同額の資金を本件銀行に預け入れること,本件銀行が上記アのローン契約に係る貸付金元本の弁済を受けた範囲以外には預金元本を払い戻す義務を負わないこと,本件銀行はE社に対して年利11%の預金利息を支払うことを内容とする契約である。
 (3) G社に係る取引
 ニュージーランドで設立された法人であるH社は,投資家から集めた資金をクック諸島に持ち込んで利用するに当たり,クック諸島にG社を設立し,さらにバーミューダ諸島にI社を設立して,同社が投資家から資金を調達することとした。この場合に,I社からG社に直接に資金を貸し付ける方法を採ったときは,クック諸島の税制によればG社からI社に支払われる利息に対して15%の割合の源泉税が課されることになる。そこで,本件銀行とG社及びI社の間で,本件銀行の外国税額控除の余裕枠を利用して上記源泉税の負担を軽減すべく,平成元年3月25日付けで,本件銀行とG社との間のローン契約及び本件銀行とI社との間の預金契約がそれぞれ締結され,これらが実行された。これらの各契約の内容は,契約当事者,貸付金利率,預金利率及び与信枠設定手数料額を除いて,それぞれ前記(2)アのローン契約及び前記(2)イの預金契約と同一である。
 (4) 前記(1)の取引によって,B社は,ニュージーランドにおける源泉税の支払を免れるという利益を得ることとなり,前記(2)及び(3)の各取引によって,E社及びI社は,クック諸島における源泉税の支払を免れるという利益を得ることとなる。他方,本件銀行は,前記(1)ないし(3)の各取引(以下「本件各取引」という。)によってそれぞれ所定の割合による利ざやを取得する一方,これらの取得額を上回るニュージーランド又はクック諸島における源泉税を負担することとなり,取引自体によっては損失を生ずるが,我が国で外国税額控除を受けることによって最終的には利益を得ることができる。しかし,これらの各取引の結果,我が国において本来納付されるべき税額のうち上記各外国税額控除の対象となるものは納付されないことになる。
 (5) 本件銀行は,本件各取引における各ローン契約に基づきニュージーランド又はクック諸島において源泉税を納付したとして,東税務署長に対し,平成3年4月1日から同4年3月31日まで及び同年4月1日から同5年3月31日までの各事業年度の所得に対する法人税の額からそれぞれ外国税額の控除をして申告した。これに対し,東税務署長は,上記各事業年度の法人税につき,上記外国税額の控除は認められないとして,各更正並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定をした。
 3 原審は,上記事実関係等の下において,本件各取引に係る外国法人税について法人税法69条が適用されるべきであり,これに反する別紙処分目録記載の各処分(以下「本件各処分」という。)は違法であると判断した。その理由の要旨は,次のとおりである。
 (1) 本件各取引の事業目的は,取引の当事者ごとに分けて考慮すべきであり,A社,B社等の外国法人にとっては,本件銀行の外国税額控除の余裕枠を利用してニュージーランド又はクック諸島における源泉税の負担を軽減することにあるが,本件銀行にとっては,あくまで貸付金による利ざやを得ることにあり,外国税額控除の余裕枠の利用はそのための手段又は前提にすぎない。本件各取引において,各当事者が選択した法的形式と法的効果は一致しており,これを仮装行為であると解することは困難であり,本件各取引が真実の法律関係でないと解することも相当でない。
 (2) 本件銀行にとって,外国税額控除の余裕枠を利用したことは,コストを引き下げた融資を行うための手段又は前提にすぎなかったのであるから,本件各取引について,本件銀行にとって外国税額控除の余裕枠を利用すること又はこれを創出すること以外におよそ事業目的がないとか,それ以外の事業目的が極めて限局されたものであるということはできない。したがって,本件各取引が外国税額控除の制度の濫用であるとは必ずしも断言できず,本件各取引に係る外国法人税が法人税法69条の定める外国税額控除の対象とならないということはできない。
 4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 法人税法69条の定める外国税額控除の制度は,内国法人が外国法人税を納付することとなる場合に,一定の限度で,その外国法人税の額を我が国の法人税の額から控除するという制度であり,我が国の企業の海外における経済活動の振興を図るという政策的要請の下に,国際的二重課税を防止し,海外取引に対する課税の公平と税制の中立性を維持することを目的として設けられたものである。
 ところが,本件各取引は,これを全体として見ると,本来は内国法人が負担すべきでない外国法人税について,内国法人である本件銀行が対価を得て引き受け,これを自らの外国税額控除の余裕枠を利用して我が国において納付されるべき法人税額を減らすことによって回収することを内容とするものであることは明らかである。これは,我が国の外国税額控除の制度をその本来の趣旨及び目的から著しく逸脱する態様で利用することにより納税を免れ,我が国において納付されるべき法人税額を減少させた上,この免れた税額を原資とする利益を取引関係者が分け合うために,本件銀行にとっては外国法人税を負担することにより損失が生ずるだけの取引をあえて行うものというべきであって,我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものにほかならない。そうすると,本件各取引は,外国税額控除の制度を濫用するものであり,これに基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることはできないというべきである。
 5 以上によれば,本件各処分が違法であるとしてこれを取り消すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決のうち本件各処分の取消請求に係る部分は破棄を免れない。そして,被上告人の上記請求はいずれも理由がないから,同部分に関する第1審判決を取り消し,同請求をいずれも棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 横尾和子 裁判官 泉 �コ治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)

(別紙)
         処 分 目 録
 1 東税務署長が,本件銀行の平成3年4月1日から同4年3月31日までの事業年度の法人税についてした,
 (1) 平成9年3月31日付け更正のうち差引所得に対する法人税額が569億4216万5100円を超える部分
 (2) 平成7年6月22日付け過少申告加算税賦課決定(同16年11月4日付け変更決定による変更後のもの)
 (3) 平成7年6月22日付け重加算税賦課決定(1648万円(賦課した重加算税額5768万円のうち過少申告加算税に相当する額)を超える部分を除く。)
 2 東税務署長が,本件銀行の平成4年4月1日から同5年3月31日までの事業年度の法人税についてした,
 (1) 平成9年3月31日付け更正のうち差引所得に対する法人税額が709億9436万0100円を超える部分
 (2) 平成7年6月22日付け過少申告加算税賦課決定
 (3) 平成7年6月22日付け重加算税賦課決定(603万7000円(賦課した重加算税額2112万9500円のうち過少申告加算税に相当する額)を超える部分を除く。)

|

« 最高裁判所判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成15年(受)第1103号 所有権移転登記抹消登記手続請求事件 | トップページ | 最高裁判所判例 平成18年02月24日 第二小法廷判決 平成17年(受)第882号 損害賠償請求事件 »

裁判例」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/219649/40134717

この記事へのトラックバック一覧です: 最高裁判所判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成16年(行ヒ)第326号 法人税更正処分等取消請求事件:

« 最高裁判所判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成15年(受)第1103号 所有権移転登記抹消登記手続請求事件 | トップページ | 最高裁判所判例 平成18年02月24日 第二小法廷判決 平成17年(受)第882号 損害賠償請求事件 »