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2006.03.01

最高裁判所判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成15年(受)第1103号 所有権移転登記抹消登記手続請求事件

判例 平成18年02月23日 第一小法廷判決 平成15年(受)第1103号 所有権移転登記抹消登記手続請求事件
要旨: 不実の所有権移転登記がされたことにつき所有者に自らこれに積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重い帰責性があるとして民法94条2項,110条を類推適用すべきものとされた事例

内容:  件名 所有権移転登記抹消登記手続請求事件 (最高裁判所 平成15年(受)第1103号 平成18年02月23日 第一小法廷判決 棄却)
 原審 福岡高等裁判所 (平成14年(ネ)第486号)

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 上告代理人河野浩,同千野博之の上告受理申立て理由1について
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,平成7年3月にその所有する土地を大分県土地開発公社の仲介により日本道路公団に売却した際,同公社の職員であるAと知り合った。
 (2) 上告人は,平成8年1月11日ころ,Aの紹介により,Bから,第1審判決別紙物件目録記載1の土地及び同目録記載2の建物(以下,これらを併せて「本件不動産」という。)を代金7300万円で買い受け,同月25日,Bから上告人に対する所有権移転登記がされた。
 (3) 上告人は,Aに対し,本件不動産を第三者に賃貸するよう取り計らってほしいと依頼し,平成8年2月,言われるままに,業者に本件不動産の管理を委託するための諸経費の名目で240万円をAに交付した。上告人は,Aの紹介により,同年7月以降,本件不動産を第三者に賃貸したが,その際の賃借人との交渉,賃貸借契約書の作成及び敷金等の授受は,すべてAを介して行われた。
 (4) 上告人は,平成11年9月21日,Aから,上記240万円を返還する手続をするので本件不動産の登記済証を預からせてほしいと言われ,これをAに預けた。
 また,上告人は,以前に購入し上告人への所有権移転登記がされないままになっていた大分市大字松岡字尾崎西7371番4の土地(以下「7371番4の土地」という。)についても,Aに対し,所有権移転登記手続及び隣接地との合筆登記手続を依頼していたが,Aから,7371番4の土地の登記手続に必要であると言われ,平成11年11月30日及び平成12年1月28日の2回にわたり,上告人の印鑑登録証明書各2通(合計4通)をAに交付した。
 なお,上告人がAに本件不動産を代金4300万円で売り渡す旨の平成11年11月7日付け売買契約書(以下「本件売買契約書」という。)が存在するが,これは,時期は明らかでないが,上告人が,その内容及び使途を確認することなく,本件不動産を売却する意思がないのにAから言われるままに署名押印して作成したものである。
 (5) 上告人は,平成12年2月1日,Aから7371番4の土地の登記手続に必要であると言われて実印を渡し,Aがその場で所持していた本件不動産の登記申請書に押印するのを漫然と見ていた。Aは,上告人から預かっていた本件不動産の登記済証及び印鑑登録証明書並びに上記登記申請書を用いて,同日,本件不動産につき,上告人からAに対する同年1月31日売買を原因とする所有権移転登記手続をした(以下,この登記を「本件登記」という。)。
 (6) Aは,平成12年3月23日,被上告人との間で,本件不動産を代金3500万円で売り渡す旨の契約を締結し,これに基づき,同年4月5日,Aから被上告人に対する所有権移転登記がされた。被上告人は,本件登記等からAが本件不動産の所有者であると信じ,かつ,そのように信ずることについて過失がなかった。
 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件不動産の所有権に基づき,Aから被上告人に対する所有権移転登記の抹消登記手続を求める事案であり,原審は,民法110条の類推適用により,被上告人が本件不動産の所有権を取得したと判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。
 3 前記確定事実によれば,上告人は,Aに対し,本件不動産の賃貸に係る事務及び7371番4の土地についての所有権移転登記等の手続を任せていたのであるが,そのために必要であるとは考えられない本件不動産の登記済証を合理的な理由もないのにAに預けて数か月間にわたってこれを放置し,Aから7371番4の土地の登記手続に必要と言われて2回にわたって印鑑登録証明書4通をAに交付し,本件不動産を売却する意思がないのにAの言うままに本件売買契約書に署名押印するなど,Aによって本件不動産がほしいままに処分されかねない状況を生じさせていたにもかかわらず,これを顧みることなく,さらに,本件登記がされた平成12年2月1日には,Aの言うままに実印を渡し,Aが上告人の面前でこれを本件不動産の登記申請書に押捺したのに,その内容を確認したり使途を問いただしたりすることもなく漫然とこれを見ていたというのである。そうすると,Aが本件不動産の登記済証,上告人の印鑑登録証明書及び上告人を申請者とする登記申請書を用いて本件登記手続をすることができたのは,上記のような上告人の余りにも不注意な行為によるものであり,Aによって虚偽の外観(不実の登記)が作出されたことについての上告人の帰責性の程度は,自ら外観の作出に積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重いものというべきである。そして,前記確定事実によれば,被上告人は,Aが所有者であるとの外観を信じ,また,そのように信ずることについて過失がなかったというのであるから,民法94条2項,110条の類推適用により,上告人は,Aが本件不動産の所有権を取得していないことを被上告人に対し主張することができないものと解するのが相当である。上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は,結論において正当であり,論旨は理由がない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 �コ治 裁判官 才口千晴)

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