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2006.05.20

最高裁判所平成18年03月28日判決(損害賠償等請求事件)

事件番号 平成17(受)1751
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成18年03月28日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集巻・号・頁

原審裁判所名 名古屋高等裁判所 金沢支部
原審事件番号
原審裁判年月日 平成17年05月30日

判示事項
裁判要旨
自家用自動車総合保険契約の記名被保険者の子が,胎児であった時に発生した交通事故により出生後に傷害を生じ,その結果,後遺障害が残存した場合には,「記名被保険者の同居の親族」に生じた傷害及び後遺障害に準ずるものとして,同契約の無保険車傷害条項に基づいて保険金の請求をすることができる

主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。


理由

上告代理人児玉康夫,同松村太郎の上告受理申立て理由について
1 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人X (以下「被上告人X 」という。)は,被上告人X (以下「被上告人X 」という。)の父であり,被上告人X (以下「被上告人X 」という。)は,被上告人X の母である。
(2) 平成11年1月5日午前10時ころ,被上告人X の運転する自動車(以下被害車両」という。)が,交通整理の行われていない交差点において,Aの運転する自動車(以下「加害車両」という。)と衝突する事故(以下「本件事故」という。)が発生した。本件事故は,Aの加害車両の運転における過失に起因するものである。
(3) 本件事故当時,被上告人X は,妊娠34週目であったが,本件事故後運ばれた病院で緊急帝王切開手術を受けて,同日午後0時58分,被上告人X を出産した。
被上告人X は,重度仮死状態で出生し,「低酸素性脳症,てんかん」の傷害を負い,病院に入院して治療を受けた。平成12年12月5日,被上告人X の症状が固定し,重度の精神運動発達遅滞(痙性四肢麻痺)の後遺障害が残存した。被上告人X の後遺障害は,自動車損害賠償保障法施行令(平成13年政令第419号による改正前のもの)別表第1級3号に該当する。
被上告人X の上記傷害及び後遺障害(以下「本件傷害等」という。)は,本件事故により引き起こされたものである。
(4) 被上告人X は,上告人との間で,被害車両を被保険自動車とし,被上告人X を記名被保険者とする自家用自動車総合保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた。
本件保険契約に係る保険約款(以下「本件約款」という。)には,無保険車傷害条項があり,同条項には,次のような定めがあった。
ア上告人は,無保険自動車の所有,使用又は管理に起因して,被保険者の生命が害されること,又は身体が害され,その直接の結果として後遺障害が生じることによって被保険者又はその父母,配偶者若しくは子が被る損害に対して,賠償義務者がある場合に限り,保険金を支払う。
イ被保険者とは,次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(ア) 記名被保険者
(イ) 記名被保険者の配偶者
(ウ) 記名被保険者又はその配偶者の同居の親族
(エ) 記名被保険者又はその配偶者の別居の未婚の子
(オ) 前各号以外の者で,被保険自動車の正規の乗車装置又は当該装置のある室内に搭乗中の者
ウ相手自動車(被保険自動車以外の自動車であって,被保険者の生命又は身体を害した自動車)について適用される対人賠償保険等(自動車の所有,使用又は管理に起因して,他人の生命又は身体を害することにより,法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して保険金又は共済金を支払う保険契約又は共済契約で,自動車損害賠償保障法に基づく責任保険又は責任共済以外のもの)がない場合には,相手自動車は,無保険自動車に当たる。
エ上告人が保険金を支払うべき損害の額は,賠償義務者が被保険者又はその父母,配偶者若しくは子が被った損害に対して法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額によって定める。
(5) 加害車両は,上記(4)ウの「無保険自動車」に当たる。
2 本件は,被上告人らが,上告人に対し,被上告人X に生じた本件傷害等によって被上告人らが被った損害について,本件約款の無保険車傷害条項に基づいて保険金及びこれに対する遅延損害金の請求をする事案である。
3 民法721条により,胎児は,損害賠償の請求権については,既に生まれたものとみなされるから,胎児である間に受けた不法行為によって出生後に傷害が生じ,後遺障害が残存した場合には,それらによる損害については,加害者に対して損害賠償請求をすることができると解される。前記事実関係によれば,被上告人Xには,胎児である間に発生した本件事故により,出生後に本件傷害等が生じたのであるから,被上告人らは,本件傷害等による損害について,加害者に対して損害賠償請求をすることができるものと解される。また,前記の本件約款の定めによると,無保険車傷害条項に基づいて支払われる保険金は,法律上損害賠償の請求権があるが,相手自動車が無保険自動車であって,十分な損害のてん補を受けることができないおそれがある場合に支払われるものであって,賠償義務者に代わって損害をてん補するという性格を有するものというべきであるから,本件保険契約は,賠償義務者が賠償義務を負う損害はすべて保険金によるてん補の対象となる(ただし,免責事由があるときはてん補されない。)との意思で締結されたものと解するのが相当である。そして,被上告人X は,本件保険契約の記名被保険者の子であり,上記のとおり,被上告人らは,本件傷害等による損害について,加害者に対して損害賠償請求をすることができるのであるから,被上告人らは,本件傷害等による損害について,記名被保険者の同居の親族(前記1(4)イ(ウ))に生じた傷害及び後遺障害による損害に準ずるものとして,本件約款の無保険車傷害条項に基づく保険金を請求できると解するのが相当である。
したがって,本件傷害等による損害について,被上告人らは,本件約款の無保険車傷害条項に基づいて保険金の請求をすることができると解した原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官藤田宙靖 裁判官濱田邦夫 裁判官上田豊三裁判官堀籠幸男)

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