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2006.05.20

最高裁判所平成18年03月30日判決(損害賠償請求事件)

事件番号 平成17(受)1628
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成18年03月30日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集巻・号・頁

原審裁判所名 仙台高等裁判所
原審事件番号
原審裁判年月日 平成17年06月10日

判示事項
裁判要旨
自動車損害賠償保障法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において,裁判所は,同法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができる

主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。


理由
上告代理人原田策司,同井野直幸,同小林ゆかの上告受理申立て理由について
1 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 平成15年10月10日午後5時29分ころ,A(以下「A」という。)の運転する自動車(以下「本件車両」という。)が,道路を横断中のB(以下「B」という。)に衝突する事故(以下「本件事故」という。)が発生した。Bは,本件事故により,同日午後6時47分,死亡した。
(2) Bの相続人は,Bの夫のC(以下「C」という。)と子の被上告人であったが,平成15年12月6日,Cが死亡し,被上告人がCの遺産を相続した。
(3) Aは,上告人との間で,本件車両を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険契約を締結していた。
(4) 被上告人は,上告人から,本件事故による損害賠償額の支払として,合計1809万2496円の支払を受けた。
2 本件は,被上告人が,上記支払額以上に損害賠償額が存在するとして,上告人に対し,自動車損害賠償保障法(以下「法」という。)16条1項に基づいて,本件事故による損害賠償額の残額の支払を請求する事案である。上告人は,法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において,裁判所は,法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定することはできないところ,上告人は,支払基準に従って本件事故の損害賠償額を算定して被上告人に対する支払を行ったから,既に損害賠償額全額を支払済みであるなどと主張している。
3 法16条の3第1項は,保険会社が被保険者に対して支払うべき保険金又は法16条1項の規定により被害者に対して支払うべき損害賠償額(以下「保険金等」という。)を支払うときは,死亡,後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従ってこれを支払わなければならない旨を規定している。法16条の3第1項の規定内容からすると,同項が,保険会社に,支払基準に従って保険金等を支払うことを義務付けた規定であることは明らかであって,支払基準が保険会社以外の者も拘束する旨を規定したものと解することはできない。支払基準は,保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に従うべき基準にすぎないものというべきである。そうすると,保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合の支払額と訴訟で支払を命じられる額が異なることがあるが,保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合には,公平かつ迅速な保険金等の支払の確保という見地から,保険会社に対して支払基準に従って支払うことを義務付けることに合理性があるのに対し,訴訟においては,当事者の主張立証に基づく個別的な事案ごとの結果の妥当性が尊重されるべきであるから,上記のように額に違いがあるとしても,そのことが不合理であるとはいえない。したがって,法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において,裁判所は,法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができるというべきである。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官横尾和子 裁判官甲斐中辰夫 裁判官泉徳治 裁判官島田仁郎 裁判官才口千晴)

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