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2006.11.23

平成18年10月27日最高裁判所第二小法廷決定(競売申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件)

平成18年10月27日最高裁判所第二小法廷決定
競売申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
事件番号 平成18(許)21

原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成18(ラ)174
原審裁判年月日 平成18年04月05日

裁判要旨
登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,債権者による当該自動車の占有の事実が認定されていなくとも,民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たる

主文
原決定を破棄し,原々決定を取り消す。
本件を東京地方裁判所に差し戻す。

理由

抗告代理人佐藤歳二,同相澤光江,同希代竜彦の抗告理由について
1 記録によれば,本件の経緯は,次のとおりである。

(1) 抗告人は, 相手方は平成17 年6 月19 日に抗告人の店舗の駐車場( 以下「本件駐車場」という。)に相手方の所有に係る自動車(以下「本件自動車」という。民事執行規則86 条所定の自動車( 以下「登録自動車」という。) に該当する。)を駐車することによって,抗告人との間で本件駐車場の使用契約を締結したが,同年6月2 0日から同年1 0月19 日までの間の本件駐車場の駐車料金87万8400 円を支払わないと主張して,相手方に対し,上記契約に基づき,上記駐車料金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める訴訟を東京簡易裁判所に提起した。同裁判所は,同年12月6 日,抗告人の主張に係る上記事実を認定し,抗告人の請求を全部認容する判決を言い渡し,同判決は確定した(以下,この確定判決を「本件確定判決」という。)。
(2) 抗告人は, 本件確定判決の正本を提出し, 本件自動車について, 上記駐車料金等の支払請求権を被担保債権とする民法上の留置権による競売を申し立てた(以下,この申立てを「本件申立て」という。)。抗告人は,留置権による競売は担保権の実行としての競売の例によるところ( 民事執行法195 条),本件確定判決は民事執行規則176 条2項により登録自動車を目的とする担保権の実行としての競売に準用される民事執行法18 1条1項1 号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たると主張している。
2 原審は,以下のように判断して,本件申立てを却下した原々決定に対する抗告人の抗告を棄却した。
本件確定判決においては,留置権が訴訟物自体又は訴訟物である権利関係の発生原因若しくは抗弁となっているものではなく, したがって,裁判所が留置権の発生原因事実を特定して認定し,この認定事実に対して民法29 5条の規定の適用を肯定する判断を示しているものではないから,留置権の存在を「証する」判断が明示されているとはいえず,本件確定判決は,民事執行法181 条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」には該当しない。
3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 民事執行法181 条1 項は, 担保権の存在を同項所定の法定文書によって証すべき旨を規定するところ, 民法上の留置権の成立には,①債権者が目的物に関して生じた債権を有していること(目的物と牽連性のある債権の存在)及び②債権者が目的物を占有していること(目的物の占有)が必要である。
留置権の成立要件のうち目的物の占有の要件については,債権者が目的物と牽連性のある債権を有していれば, 当該債権の成立以後,その時期を問わず債権者が何らかの事情により当該目的物の占有を取得するに至った場合に,法律上当然に民法29 5条1項所定の留置権が成立するものであって,同要件は,権利行使時に存在することを要し,かつ,それで足りるものである。そして,登録自動車を目的とする留置権による競売においては,執行官が登録自動車を占有している債権者から競売開始決定後速やかにその引渡しを受けることが予定されており,登録自動車の引渡しがされなければ,競売手続が取り消されることになるのであるから(民事執行法195 条,民事執行規則17 6条2項,95 条,97 条,民事執行法120 条参照),債権者による目的物の占有という事実は,その後の競売手続の過程においておのずと明らかになるということができる。留置権の成立要件としての目的物の占有は,権利行使時に存在することが必要とされ,登録自動車を目的とする留置権による競売においては,上記のとおり,競売開始決定後執行官に登録自動車を引き渡す時に債権者にその占有があることが必要なのであるから,民事執行法181 条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」としては,債権者による登録自動車の占有の事実が主要事実として確定判決中で認定されることが要求されるものではないと解すべきである。
したがって,登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該登録自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,民事執行法181 条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たると解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると, 本件確定判決においては, 抗告人が本件自動車を占有していることは主要事実として認定されていないものの,上記駐車料金等の支払請求権が本件自動車に関して生じたことが認定されているから,本件確定判決は,「担保権の存在を証する確定判決」に当たり,その正本の提出によって競売手続を開始することができるというべきである。
4 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり, 原決定は破棄を免れない。そして,上記説示したところによれば, 本件申立てを却下した原々決定は不当であるから,これを取り消した上,本件を東京地方裁判所に差し戻すこととする。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官津野修裁判官滝井繁男裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官古田佑紀)

原文
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=33737&hanreiKbn=01
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061031114749.pdf

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