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2006.11.23

平成18年11月21日最高裁判所第三小法廷決定

平成18年11月21日最高裁判所第三小法廷決定
事件名 法人税法違反,証拠隠滅教唆被告事件
事件番号 平成17(あ)302

原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成16(う)521
原審裁判年月日 平成16年12月06日

裁判要旨
甲が自己の刑事事件に関する証拠の偽造を乙に依頼した行為が,これに先立ち乙においてその具体的な方法を考案して甲に積極的に提案をしていたという事情があっても,証拠偽造教唆罪に当たるとされた事例

主文
本件上告を棄却する。

理由
弁護人五木田彬の上告趣意は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法40 5条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,職権で判断する。
1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,第1審判決判示第2の事実に関する事実関係は,以下のとおりであると認められる。
(1) 被告人は, スポーツイベントの企画及び興行等を目的とする株式会社K の代表取締役として同社の業務全般を総括していたものであるが,同社の平成9年9月期から同12 年9月期までの4事業年度にわたり,架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿し,虚偽過少申告を行って法人税をほ脱していたところ,同社に国税局の査察調査が入るに及び,これによる逮捕や処罰を免れるため,知人のAに対応を相談した。
(2) A は, 被告人に対し, 脱税額を少なく見せかけるため, 架空の簿外経費を作って国税局に認めてもらうしかないとして, Kが主宰するボクシング・ショーに著名な外国人プロボクサーを出場させるという計画に絡めて,同プロボクサーの招へいに関する架空経費を作出するため,契約不履行に基づく違約金が経費として認められることを利用して違約金条項を盛り込んだ契約書を作ればよい旨教示し,この方法でないと所得金額の大きい平成11年9 月期と同12 年9月期の利益を消すことができないなどと,この提案を受け入れることを強く勧めた。
(3) 被告人は,A の提案を受け入れることとし,A に対し, その提案内容を架空経費作出工作の協力者の一人であるBに説明するように求め,被告人,A及びBが一堂に会する場で,A がBに提案内容を説明し,その了解を得た上で,被告人がA及びBに対し,内容虚偽の契約書を作成することを依頼し,A 及びBは,これを承諾した。
(4) かくして,A 及びB は, 共謀の上,B がK に対し上記プロボクサーを上記ボクシング・ショーに出場させること,KはB に対し,同プロボクサーのファイトマネー1000 万ドルのうち500 万ドルを前払すること,さらに,契約不履行をした当事者は違約金50 0万ドルを支払うことなどを合意した旨のKとBとの間の内容虚偽の契約書及び補足契約書を用意し,B がこれら書面に署名した後,K 代表者たる被告人にも署名させて, 内容虚偽の各契約書を完成させ,Kの法人税法違反事件に関する証拠偽造を遂げた。
(5) なお,A は, 被告人から, 上記証拠偽造その他の工作資金の名目で多額の資金を引き出し,その多くを自ら利得していることが記録上うかがわれるが,Aにおいて,上記法人税法違反事件の犯人である被告人が証拠偽造に関する提案を受け入れなかったり,その実行を自分に依頼してこなかった場合にまで,なお本件証拠偽造を遂行しようとするような動機その他の事情があったことをうかがうことはできない。
2 このような事実関係の下で,被告人は, A及びBに対し,内容虚偽の各契約書を作成させ, Kの法人税法違反事件に関する証拠偽造を教唆した旨の公訴事実により訴追されたものであるところ,所論は,A は被告人の証拠偽造の依頼により新たに犯意を生じたものではないから,A に対する教唆は成立しないというのである。
なるほど,A は,被告人の相談相手というにとどまらず,自らも実行に深く関与することを前提に,Kの法人税法違反事件に関し,違約金条項を盛り込んだ虚偽の契約書を作出するという具体的な証拠偽造を考案し,これを被告人に積極的に提案していたものである。しかし, 本件において, Aは,被告人の意向にかかわりなく
本件犯罪を遂行するまでの意思を形成していたわけではないから,A の本件証拠偽造の提案に対し,被告人がこれを承諾して提案に係る工作の実行を依頼したことによって,その提案どおりに犯罪を遂行しようというAの意思を確定させたものと認められるのであり,被告人の行為は,人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせたものとして,教唆に当たるというべきである。したがって,原判決が維持した第1
審判決が,B に対してだけでなく,Aに対しても,被告人が本件証拠偽造を教唆したものとして, 公訴事実に係る証拠隠滅教唆罪の成立を認めたことは正当である。
よって,刑訴法414 条,386 条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官那須弘平裁判官上田豊三裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男)

原文
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=33822&hanreiKbn=01
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061122113715.pdf

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