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2006.12.14

ノクターン集(巨匠の演奏)

なんとも言えない演奏である。右手の旋律の歌い方。左手による心の表現。ピアノってなんて凄い楽器なんだと思わされる。そして,この奏者,何者やねん!と感じざるを得ない。
アルトゥール・ルービンシュタイン(Artur Rubinstein)
ポーランド出身のピアニスト
1887年1月28日 - 1982年12月20日
彼が,70歳代に弾いたと思われる,ショパン作曲のノクターン集やワルツ集をときどき聴く。
本当に,何とも言えない演奏。
繰り出される曲の流れが,聴く者に有無をいわさない。
聴けば聴くほど恐ろしさすら感じさせる演奏。
その恐ろしさは,ある面,枯れたものの良さなのだろうと思う。
それだけに,はまりたくないという思いがある。
もっと,活気のあるやつ,ばーんと一発行こうぜ!なんておもうのだが,その魅力にとりつかれるとなかなか逃げおうせることは難しいのかもしれない。
彼の演奏を,最初に耳にしたのは,ベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」だろう(指揮はバレンボイム)。まだ,私が中学生だったか高校生だった頃の出会い。
そのころは,私は,夜な夜な,ラジオの前にかぶりついて,番組で流されるクラシック音楽を一生懸命カセットテープで録音していた。
その中の1曲だった。
朗々とした演奏だった。今でも記憶している。
なお,彼が88歳のときの演奏だったとのこと。

朝比奈隆の指揮する演奏にも同じような印象があった。
何事にも動ぜず,劇的な中にも朗々と流れていく音楽。
何にも枉げられることのない音楽。
このような音楽は,余分なものをそぎ落とされた尽くした人しか,導くことがきっと無理なのだろう。
そう思わせるに至るには何年の鍛錬を必要とするのだろうか。
彼の演奏で,もう1つだけライブ演奏を聴けるとすればどの曲?と聞かれれば・・・
難しい選択だろうが,多分私は,チャイコフスキーの第5番のシンフォニーを選択するだろう。正直,彼の演奏を聴くまでは,この曲はあまり好きな曲ではなかった。
でも,それは,この曲が悪いからではなく,それまで聞いたいくつかの演奏が曲の魅力を引きだすことが出来なかったからに過ぎない。
彼の演奏を聴いたときはまさに衝撃的だった。たった1つのモチーフを結末に向けて,堂々と且つ朗々とそしてまがうことなくして進めていく有様,それも謳歌しながら。そんな音楽に接すると,感動以外をもって表現し得ない。

円熟の演奏で忘れられないものがもう一つある。
確か,車を運転しているときにラジオで流れてきたもので,ライブ演奏の録音だったように記憶している。曲の途中から聴いたので,演奏者が誰かは当初わからなかった。
曲は,ベートーベンのピアノソナタ「ワルトシュタイン」。
なんてみずみずしい演奏なんだ。なんて壮大に歌うんだ。
それまでワルトシュタインという曲,それほど好みの曲ではなかったが,一気に好きになってしまった。
この演奏家はきっと将来無茶苦茶大物になるだろうなんて,勝手に思いこんでしまった。
ピアニストの名はクラウディオ=アラウ。そのとき彼は80歳を超えていた。

芸術家という存在の凄さを感じざるを得なかった。

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