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2007.02.27

インサイダー取引における没収・追徴

証券取引法
第198条の2  次に掲げる財産は、没収する。ただし、その取得の状況、損害賠償の履行の状況その他の事情に照らし、当該財産の全部又は一部を没収することが相当でないときは、これを没収しないことができる。
一  第197条第1項第5号若しくは第2項又は第197条の2第13号の罪の犯罪行為により得た財産
二  前号に掲げる財産の対価として得た財産又は同号に掲げる財産がオプションその他の権利である場合における当該権利の行使により得た財産
2  前項の規定により財産を没収すべき場合において、これを没収することができないときは、その価額を犯人から追徴する。

この法条によ,株式取引のインサイダー取引によって得た(購入した)株券は「犯罪行為により得た財産として」没収されることになる。
例えば,インサイダー情報に基づき,手持ち資金の4000万円を投下してある株式を100株を購入した場合には,その株式(株券という形となっている)は100株とも没収されると言うことである。
即ち,元々の手持ち資金に該当する部分を控除されるものではない。
更に,その株式100株は,犯罪発覚時に,既に売却済みであり(インサイダー取引の場合はこのようなケースが多いと思われる),その売値が仮に1億円だったとする(1億円-4000万円=6000万円の利益)。
この場合は,株券は既に他人のものになっているから没収の対象とはならない。
代わりに,(株券の)売価となる1億円全額が(株式100株に代わるものとして)追徴される。
この場合も同じく,投下資本の控除は認められていない(売値1億円-投下資金4000万円=6000万円とはならない)。
よって,この考え方を一貫させると,インサイダー情報に基づいて1億円の貸金を投下して株を購入したものの,,見込みはずれのため結果的に1億10万円で売ったとしまえば(利益10万円=1億10万円-1億円),その差額の10万円だけが追徴されるものではなく,手持ち資金をも含めた1億10万円全体が追徴の対象となるということに理論上はなる(なお,このような場合は,そもそもその情報が重要情報といえるかが問題となるだろうし,また仮に該当するとしてもまず立件されないだろうと思う)。
要するに,投下資本を含めて国家に召し上げられることになることが原則であるというルールになっている。したがって,獲得した「利益だけ」を返納すればそれで済むなどと考えていると,エライ目に遭うことになる。

インサイダー取引。
儲かることがほぼ確実な取引だけに,誘惑を断ち切ることは心情的に難しい面があるかも知れない。一線を踏み外してしまったとき,(一時的には)良い思いが出来るかもしれない。
しかし,処罰を受けるときには,懲役刑が科せられる(もちろん執行猶予の場合もある)ばかりか,経済的にもかなりの負担がかかってくるという,極めてリスクの高いものであることがわかる。

平井利明のメモ

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