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2008.01.16

労働審判への会社側での対応についてのメモ

労働審判手続における相手方(雇用者:会社側)代理人としてのメモ

<事実上の1回審理>
最大3回の期日が予定されている。規則上は,2回目の期日終了時までに張及び証拠書類の提出を終えればよいように思われるが,実際の運用においては1回目の手続で審理が事実上終了する。
従って,第1回目の期日までに(実際には,答弁書等の〆切期日までに),全ての主張及び証拠の提出を終える必要がある。

(迅速な手続)
労働審判法第15条 労働審判委員会は、速やかに、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をしなければならない。
2 労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日において、審理を終結しなければならない。


(主張及び証拠の提出の時期)
労働審判規則第27条 当事者は、やむを得ない事由がある場合を除き、労働審判手続の第2回の期日が終了するまでに、主張及び証拠書類の提出を終えなければならない。


<第1回目期日はいつ?>

受理後,40日以内の期日が指定される。
例えば,審判官から指定された初回期日が,会社の顧問弁護士に差し支えがあっても,この日は延期されないことが実情。

労働審判規則第13条
(労働審判手続の第1回の期日の指定・法第14条)
労働審判官は、特別の事由がある場合を除き、労働審判手続の申立てがされた日から40日以内の日に労働審判手続の第1回の期日を指定しなければならない。

<答弁書提出の締切日?>

受理後,30日頃が標準とされている。
つまり準備のための時間がかなり限られている!!

(答弁書の提出期限)
規則第14条 労働審判官は、答弁書の提出をすべき期限を定めなければならない。
2 前項の期限は、答弁書に記載された事項について申立人が前条の期日(以下「第1回期日」という。)までに準備をするのに必要な期間をおいたものでなければならない。

<答弁書の記載事項等>

(答弁書の提出等)
規則第16条 相手方は、第14条第1項の期限までに、次に掲げる事項を記載した答弁書を提出しなければならない。
一 申立ての趣旨に対する答弁
二 第9条第1項の申立書に記載された事実に対する認否
三 答弁を理由づける具体的な事実
四 予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
五 予想される争点ごとの証拠
六 当事者間においてされた交渉(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)その他の申立てに至る経緯の概要
七 代理人(代理人がない場合にあっては、相手方)の住所の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)
2 予想される争点についての証拠書類があるときは、その写しを答弁書に添付しなければならない。
3 答弁書を提出するには、これと同時に、その写し3通を提出しなければならない。

<準備の実情>

証拠には,関係者の陳述書等も含まれる。
よって,受任後,早急に事情聴取を行い事案を理解することが必要であることは勿論,陳述書化する必要もある。
社外の方が関与する場合には,その方の協力も求める必要がある。

主張書面(申立書,答弁書等)は,期日前に労働審判員に交付されようであるが,証拠関係が労働審判員に示されるのは審判の初回当日とのことであるのが運用の実際であるとのことで,証拠の内容を予め労働審判員に理解していただく必要があるときには,主張書面に証拠の内容を引用しておくことが必要となる。
なお,このようなことを行おうとすれば,関係者からの事情聴取及び陳述書の作成が既に完成に至っている必要がある。

第1回目期日には,事実上の証人尋問がなされる。よって,初回期日への出頭を確保しなければならず,又,初回期日までに証人テストも全て終了させておく必要がある(なお,事前に証拠[証人]申し出を行っておく必要はないとされている)。

(証拠調べ等)
法第17条 労働審判委員会は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをすることができる。
2 証拠調べについては、民事訴訟の例による。

また,調停が随時なされるので,期日には決裁権限者をも同行させる必要がある。

(調停)
規則第22条 労働審判委員会は、審理の終結に至るまで、労働審判手続の期日において調停を行うことができる。
2 裁判所書記官は、前項の調停において当事者間に合意が成立したときは、当該合意の内容並びに当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名を、調書に記載しなければならない。

労働関係の紛争は,多くの関係者から事情を聞かなければ,実態を把握したり,証拠を収集することがなかなか出来ない。
しかしながら,短期において多くの関係者から事情を聴取したり,証拠を収集することは容易ではない。そのため,かなり大変な事務処理を余儀なくされる。
特に,他の既に進行している案件を処理している最中に,一般的には会社側にとって大変なことの多いといえる労働事件であって且つ短期型の多大な作業を余儀なくされる手続を受任することには覚悟が必要となる。

社内の関係規則等を理解することだけでも容易でないことが多い。例えば,就業規則等を読んでも賃金体系等の具体的な内容を理解することが必ずしも容易でないことは少なくない。昨今,労働条件等の変更のあるケースもめずらしいものではなく,或いは,企業の統合等や関係会社間等における人事の交流等が活発な例もあり(このような場合には何らかの調整が行われていることが散見される)尚更である。
就業規則が周知されている資料をも集め,他にも関連する資料の提供を受け,その内容を把握して,更に不足する資料の準備を指示することも当然に行われる。
多くの関係者から事情聴取を行い,その都度文章化して等の作業も必要となる。
このような作業が連日続くことになる。提出締切日までは,徹夜に近い日が続く。

なお,労働審判制度の理解が世間一般に行き渡っているとまでは言えないのが実情と考えられるところ,申立書を受理した会社が,仮に,(通例の裁判と同様の認識で,例えば,社内決裁のために時間を要する等)ゆっくりとした対応を行い,実際に手続を依頼することになる弁護士のところに相談にいくことが遅れると,もっと大変な状況になる。
なにしろ時間がない

<準備や手続の意義>
限られた時間の中で最大限に出来ることを尽くす等のしっかりとした準備をして根拠のある資料を事前に示しておいて期日に臨めば,委員会の理解を得ることは可能である。
また,事案が早期に解決する可能性も高い(労働裁判の場合は解決までにかなり時間を要することが実情である)。
その意味で,頑張りがいのある制度でもある。

平井利明のメモ

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