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2008.04.25

平成20年04月24日最高裁判所第一小法廷判決(チーム医療における説明義務に関して)

平成18(受)1632損害賠償請求事件
平成20年04月24日最高裁判所第一小法廷判決

【破棄差戻し】

原審
大阪高等裁判所平成18年06月08日判決   
平成17(ネ)9

裁判要旨
1 チーム医療として手術が行われる場合にチーム医療の総責任者が患者やその家族に対する手術についての説明に関して負う義務
2 チーム医療として手術が行われ,チーム医療の総責任者が患者やその家族に対する手術についての説明を主治医にゆだねた場合において,当該主治医の上記説明が不十分なものであっても同総責任者が説明義務違反の不法行為責任を負わない場合

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=36310&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080424152757.pdf

事案の概要(判決文より)
大動脈弁閉鎖不全のためA大学医学部附属病院(以下「本件病院」という。)に入院して大動脈弁置換術(以下「本件手術」という。)を受けたBが本件手術の翌日に死亡したことについて,Bの相続人である被上告人らが,本件手術についてのチーム医療の総責任者であり,かつ,本件手術を執刀した医師である上告人に対し,本件手術についての説明義務違反があったこと等を理由として,不法行為に基づく損害賠償を請求する事案

判決文よりの抜粋(なお,下線,色は管理人が付したものである)
一般に,チーム医療として手術が行われる場合,チーム医療の総責任者は,条理上,患者やその家族に対し,手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮すべき義務を有するものというべきである。」
「しかし,チーム医療の総責任者は,上記説明を常に自ら行わなければならないものではなく,手術に至るまで患者の診療に当たってきた主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有している場合には,主治医に上記説明をゆだね,自らは必要に応じて主治医を指導,監督するにとどめることも許されるものと解される。」
「そうすると,チーム医療の総責任者は,主治医の説明が十分なものであれば,自ら説明しなかったことを理由に説明義務違反の不法行為責任を負うことはないというべきである。」
「また,主治医の上記説明が不十分なものであったとしても,当該主治医が上記説明をするのに十分な知識,経験を有し,チーム医療の総責任者が必要に応じて当該主治医を指導,監督していた場合には,同総責任者は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。」
「このことは,チーム医療の総責任者が手術の執刀者であったとしても,変わるところはない。」
「前記事実関係によれば,上告人は自らB又はその家族に対し,本件手術の必要性,内容,危険性等についての説明をしたことはなかったが,主治医であるC医師が上記説明をしたというのであるから,C医師の説明が十分なものであれば,上告人が説明義務違反の不法行為責任を負うことはないし,C医師の説明が不十分なものであったとしても,C医師が上記説明をするのに十分な知識,経験を有し,上告人が必要に応じてC医師を指導,監督していた場合には,上告人は説明義務違反の不法行為責任を負わないというべきである。ところが,原審は,C医師の具体的な説明内容,知識,経験,C医師に対する上告人の指導,監督の内容等について審理,判断することなく,上告人が自らBの大動脈壁のぜい弱性について説明したことがなかったというだけで上告人の説明義務違反を理由とする不法行為責任を認めたものであるから,原審の判断には法令の解釈を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。」
「原判決のうち上告人の敗訴部分は破棄を免れない。そして,C医師の説明内容,C医師が本件手術の必要性,内容,危険性等について説明をするのに十分な知識,経験を有していたか等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。」

管理人のコメント:
医療という場面もさることながら,現代において,多くの方々が連携して一つの作業を行うことは極めて一般的なこと。
その中で,適任者が適切な説明を行えば足りることは明かであろう。
説明とは,説明を受ける者が適切な判断等ができる内容の説明を受ける機会があったか否かが重要なのであって,適切な機会を与えうる者であれば説明者が誰であったとしても,(損害賠償義務が発生するか否か,言い換えれば違法なものであるか否かという観点から言えば)少なくとも最低限のレベルはクリアされると言わなければならない。
必ず総責任者(行為者)が自らが説明を行わなければならないとすることは,説明の目的をそもそも十分に理解せず且つ非現実的なものと批判されてもやむを得ないであろう(そのことは広く言えることであろうし,医療の世界でも同様だろう)。
そう考えると,最高裁判所の考え方は極めて常識的なものであって,高裁の判断は明らかに妥当でないと言える。

平井利明のメモ

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