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2008.06.02

平成19(行ケ)10215審決取消請求事件(コカコーラの瓶に商標権を肯定したもの)

平成19(行ケ)10215審決取消請求事件
平成20年05月29日知的財産高等裁判所決定   

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=07&hanreiNo=36397&hanreiKbn=06

ザ コカ・コーラカンパニーが,特許庁の行った審決を取り消すために特許庁を相手に提起した訴訟についての判決。

主文
1 特許庁が不服2005-1651号事件について平成19年2月6日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080529172621.pdf

商標法3条1項3号についての裁判所の解釈
<以下,適宜,判決文より引用>
(1) 立体商標における商品等の形状
ア 商標法は,商標登録を受けようとする商標が,立体的形状(文字,図形,記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても,所定の要件を満たす限り,登録を受けることができる旨規定する(商標法2条1項,5条2項参照)。
 ところで,商標法は,3条1項3号で「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,数量,形状(包装の形状を含む。),価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受けることができない旨を,同条2項で「前項3号から5号までに該当する商標であっても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」旨を,4条1項18号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は,同法3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨を,26条1項5号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」に対しては,商標権の効力は及ばない旨を,それぞれ規定している。
 このように,商標法は,商品等の立体的形状の登録の適格性について,平面的に表示される標章における一般的な原則を変更するものではないが,同法4条1項18号において,商品及び商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標については,登録を受けられないものとし,同法3条2項の適用を排除していること等に照らすと,商品等の立体的形状のうち,その機能を確保するために不可欠な立体的形状については,特定の者に独占させることを許さないとしているものと理解される。
 そうすると,商品等の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない形状については,商品等の機能を効果的に発揮させ,商品等の美感を追求する目的により選択される形状であっても,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものであれば,立体商標として登録される可能性が一律的に否定されると解すべきではなく(もっとも,以下のイで述べるように,識別機能が肯定されるためには厳格な基準を充たす必要があることはいうまでもない。),また,出願に係る立体商標を使用した結果,その形状が自他商品識別力を獲得することになれば,商標登録の対象とされ得ることに格別の支障はないというべきである。
イ 以上を前提として,まず,立体商標における商品等の立体的形状が商標法3条1項3号に該当するか否かについて考察する。
(ア) 商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品・役務の出所を表示し,自他商品
・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる
そうすると,商品等の形状は,多くの場合に,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されると認められる形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,同号に該当すると解するのが相当である。
(イ) また,商品等の具体的形状は,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品等について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として,同号に該当するものというべきである。
 けだし,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切でないからである。
(ウ) さらに,需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには,商標法4条1項18号の趣旨を勘案すれば,商標法3条1項3号に該当するというべきである。けだし,商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に,商品等の機能の観点からは発明ないし考案として,商品等の美感の観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば,その限りおいて独占権が付与されることがあり得るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,商品等の形状について,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。

<本願商標の商標法3条1項3号該当性>
 「本願商標の立体的形状は,審決時(平成19年2月6日)を基準として,客観的に見れば,コーラ飲料の容器の機能又は美感を効果的に高めるために採用されるものと認められ,また,コーラ飲料の容器の形状として,需要者において予測可能な範囲内のものというべき」
 「原告の主観的な意図が,美感や機能を高めるためではなく,同形状に自他商品識別力を持たせることを目的とするものであったとしても,そのことにより,本願商標の立体的形状が有する客観的な性質に関する判断が左右されるものではない。また,需要者において予測し得ないような斬新な形状であるか否かは,原告が当該形状を採用した時点ではなく,審決時を基準として判断すべきであり,原告以外の同業者が当該形状を現実に採用していないとしても,そのことから直ちに同形状が予測し得る範囲を超えるということはできない。」
 「現時点において,本願商標に係る立体的形状を使用することを欲する原告以外の第三者が顕在していないとしても,そのことから直ちに,当該形状を独占させることが公益に反しないすることはできない
(小括)
「本願商標は,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該当するとした審決の判断に誤りはな」い。

<立体商標における使用による自他商品識別力の獲得>
 「商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができることを規定している(商品及び商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標を除く。同法4条1項18号)。
 立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該商標ないし商品等の形状,使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,当該形状に類似した他の商品等の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である。
 そして,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要する
 もっとも,商品等は,その製造,販売等を継続するに当たって,その出所たる企業等の名称や記号・文字等からなる標章などが付されるのが通常であり,また,技術の進展や社会環境,取引慣行の変化等に応じて,品質や機能を維持するために形状を変更することも通常であることに照らすならば,使用に係る商品等の立体的形状において,企業等の名称や記号・文字が付されたこと,又は,ごく僅かに形状変更がされたことのみによって,直ちに使用に係る商標が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥当ではなく使用に係る商標ないし商品等に当該名称・標章が付されていることやごく僅かな形状の相違が存在してもなお,立体的形状が需要者の目につき易く,強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである

<本願商標の商標法3条2項該当性>

 (本件における事実関係を前提とすれば)
「リターナブル瓶入りの原告商品は,昭和32年に,我が国での販売が開始されて以来,驚異的な販売実績を残しその形状を変更することなく,長期間にわたり販売が続けられ,その形状の特徴を印象付ける広告宣伝が積み重ねられたため,遅くとも審決時(平成19年2月6日)までには,リターナブル瓶入りの原告商品の立体的形状は,需要者において,他社商品とを区別する指標として認識されるに至ったものと認めるのが相当である。」
(小括)
(その余の事項について検討を加えた上で)
「本願商標については,原告商品におけるリターナブル瓶の使用によって,自他商品識別機能を獲得したものというべきであるから,商標法3条2項により商標登録を受けることができるものと解すべきである。」

なお,
<リターナブル瓶入りの原告商品及びこれを描いた宣伝広告には,「Coca-Cola」などの表示が付されているが,この点について>
 取引社会においては,取引者,需要者は,平面的に表記された文字,図形,記号等からなる1つの標章によって,商品の出所を識別する場合が多いし,また,商品の提供者等も,同様に,1つの標章によって,自他商品の区別をする場合が多く,また,便宜であるともいえる。しかし,現実の取引の態様は多様であって,商品の提供者等は,当該商品に,常に1つの標章のみを付すのではなく,むしろ,複数の標章を付して,商品の出所を識別したり,自他商品の区別をしようとする例も散見されるし,また,取引者,需要者も,商品の提供者が付した標章とは全く別の商品形状の特徴(平面的な標章及び立体的形状等を含む。)によって,当該商品の出所を識別し,自他商品の区別することもあり得るところである。そのような取引の実情があることを考慮すると,当該商品に平面的に表記された文字,図形,記号等が付され,また,そのような文字等が商標登録されていたからといって,直ちに,当該商品の他の特徴的部分(平面的な標章及び立体的形状等を含む。)が,商品の出所を識別し,自他商品の区別をするものとして機能する余地がないと解することはできない(不正競争防止法2条1項1号ないし3号参照)。
 そのような観点に立って,リターナブル瓶入りの原告商品の形状をみると,前記(2)アで認定したとおり,当該形状の長年にわたる一貫した使用の事実(ア(イ)),大量の販売実績(ア(ウ)),多大の宣伝広告等の態様及び事実(ア(エ)),当該商品の形状が原告の出所を識別する機能を有しているとの調査結果(ア(オ))等によれば,リターナブル瓶の立体的形状について蓄積された自他商品の識別力は,極めて強いというべきである。そうすると,本件において,リターナブル瓶入りの原告商品に「Coca-Cola」などの表示が付されている点が,本願商標に係る形状が自他商品識別機能を獲得していると認める上で障害になるというべきではない(なお,本願商標に係る形状が,商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標といえないことはいうまでもない。)

平井利明のメモ

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