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2008.11.28

平成20年11月25日最高裁判所第三小法廷決定(金融機関が所持する文書と文書提出命令関連)

平成20(許)18文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
平成20年11月25日最高裁判所第三小法廷決定

原審裁判所名
東京高等裁判所平成20年04月02日決定   
平成19(ラ)1724

裁判要旨
1 金融機関が顧客から提供された非公開の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4号ハの文書に該当しないとされた事例
2 金融機関が行った顧客の財務状況等についての分析,評価等に関する情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,金融機関は民訴法220条4号ハに基づきその提出を拒絶することができないとされた事例
3 事実審である抗告審が民訴法223条6項に基づき文書提出命令の申立てに係る文書をその所持者に提示させ,これを閲読した上でした文書の記載内容の認定は,特段の事情がない限り,法律審である許可抗告審において争うことができない。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37050&hanreiKbn=01

決定文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081128114749.pdf

<<金融機関の顧客が金融機関に提出した社外秘の文書>>
 金融機関は,顧客との取引内容に関する情報や顧客との取引に関して得た顧客の信用にかかわる情報などの顧客情報について,商慣習上又は契約上の守秘義務を負うものであるが,上記守秘義務は,上記の根拠に基づき個々の顧客との関係において認められるにすぎないものであるから,金融機関が民事訴訟の当事者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客が上記民事訴訟の受訴裁判所から同情報の開示を求められればこれを開示すべき義務を負う場合には,当該顧客は同情報につき金融機関の守秘義務により保護されるべき正当な利益を有さず融機関は,訴訟手続において同情報を開示しても守秘義務には違反しないと解するのが相当である(最高裁平成19年(許)第23号同年12月11日第三小法廷決定・民集61巻9号3364頁参照)
民訴法220条4号ハにおいて引用される同法197条1項3号にいう「職業の秘密」とは,その事項が公開されると,当該職業に深刻
な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうが(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照),顧客が開示義務を負う顧客情報については,金融機関は,訴訟手続上,顧客に対し守秘義務を負うことを理由としてその開示を拒絶することはできず,同情報は,金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有する場合は別とし
職業の秘密として保護されるものではないというべきである
本件非公開財務情報は,A(管理人注:顧客を示す)の財務情報であるから,抗告人(管理人注:情報の提供を受けた金融機関を示す)がこれを秘匿する独自の利益を有するものとはいえない。
<本件非公開財務情報についてAが本案訴訟の受訴裁判所からその開示を求められた場合にこれを拒絶できるか>
Aは民事再生手続開始決定を受けているところ,本件非公開財務情報は同決定以前のAの信用状態を対象とする情報にすぎないから,これが開示されても同社の受ける不利益は通常は軽微なものと考えられること,相手方らはAの再生債権者であって,民事再生手続の中で本件非公開財務情報に接することも可能であることなどに照らせば,本件非公開財務情報は,それが開示されても,Aの業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるとはいえないから,職業の秘密には当たらないというべきである。したがって,Aは,民訴法220条4号に基づいて本件非公開財務情報部分の提出を拒絶することはできない。
また,本件非公開財務情報部分は,少なくとも抗告人等の金融機関に提出することを想定して作成されたものと解されるので,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書とはいえないから,Aは民訴法220条4号に基づいて同部分の提出を拒絶することもできず(略)

<金融機関が作成した本件分析評価情報部分の提出義務>
文書提出命令の対象文書に職業の秘密に当たる情報が記載されていても,所持者が民訴法220条4号ハ,197条1項3号に基づき文書の提出を拒絶することができるのは,対象文書に記載された職業の秘密が保護に値する秘密に当たる場合に限られ当該情報が保護に値する秘密であるかどうかは,その情報の内容,性質,その情報が開示されることにより所持者に与える不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,当該民事事件の証拠として当該文書を必要とする程度等の諸事情を比較衡量して決すべきものである(最高裁平成18年(許)第19号同年10月3日第三小法廷決定・民集60巻8号2647頁参照)。
一般に,金融機関が顧客の財務状況,業務状況等について分析,評価した情報は,これが開示されれば当該顧客が重大な不利益を被り,当該顧客の金融機関に対する信頼が損なわれるなど金融機関の業務に深刻な影響を与え,以後その遂行が困難になるものといえるから,金融機関の職業の秘密に当たると解され,本件分析評価情報も抗告人の職業の秘密に当たると解される
しかし,本件分析評価情報は,前記のとおり民事再生手続開始決定前の財務状況,業務状況等に関するものであるから,これが開示されてもAが受ける不利益は小さく,抗告人の業務に対する影響も通常は軽微なものであると考えられる。一方,本案訴訟は必ずしも軽微な事件であるとはいえず,また,本件文書は,抗告人と相手方らとの間の紛争発生以前に作成されたもので,しかも,監督官庁の事後的検証に備える目的もあって保存されたものであるから,本件分析評価情報部分は,Aの経営状態に対する抗告人の率直かつ正確な認識が記載されているものと考えられ,本案訴訟の争点を立証する書証としての証拠価値は高く,これに代わる中立的・客観的な証拠の存在はうかがわれない。そうすると,本件分析評価情報は,抗告人の職業の秘密には当たるが,保護に値する秘密には当たらないというべきであり,抗告人は,本件分析評価情報部分の提出を拒絶することはできない。

とのこと・・・・・
このような事態となる覚悟を決めて,文書を金融機関等の取引先に提出すべきであり,また,社内で文書を作成すべきということなのだろう。

平井利明のメモ

わも

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