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2008.12.02

平成20年09月16日京都地方裁判所第1民事部判決(人格権に基づくフェンスの設置等について)

平成18(ワ)1266目隠しフェンス設置等請求事件
平成20年09月16日京都地方裁判所第1民事部判決 

判示事項の要旨
1 自宅から葬儀場での葬儀の様子が観望できることによって,平穏な生活を送る人格権ないし人格的利益が侵害されているとの主張が認められた事例
2 第1種住居地域内の葬儀場の営業によって隣家居住者が受ける人格権ないし人格的利益の侵害が,入棺及び出棺の様子が隣家の居室から観望できる限度で受忍限度を超えているとして,隣家居住者が葬儀場経営者に対してした目隠しフェンスの嵩上げ請求の一部が認容された事例
3 第1種住居地域内で葬儀場を経営している業者が,隣家居住者から入棺及び出棺の様子の観望を妨げる遮蔽物の設置を求められながら,これに応じないで葬儀場の営業を続けたことが隣家居住者に対する不法行為に当たるとされた事例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=04&hanreiNo=36930&hanreiKbn=03

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081021142200.pdf

主文
1 被告は,原告Aに対し,別紙物件目録第1の(1)記載の土地上に設置しているフェンスのうち,別紙図面のロ点からイ点の方向に8メートルの範囲のフェンスを,現在設置されているものと同様の材質及び色調で,その高さを現在のものより1.2メートル高く付け加えて設置せよ。
2 被告は,原告Aに対し,金20万円及び内金10万円に対する平成18年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らの被告に対する将来の損害の賠償を求める訴えをいずれも却下する。
4 原告Aの被告に対するその余の各請求及び原告Bの被告に対するその余の各請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。

「(1) 人が,他者から自己の欲しない剌激によって心を乱されないで日常生活を送る利益、いわば平穏な生活を送る利益は,差止請求権の根拠となる人格権ないし人格的利益の一内容として位置づけられるべきである。
(2) 一般に,生者が死者に対して抱く態度には,恐怖と思慕の念が交錯しており,死者のためにあの世への再生復活と死霊の安息を祈るとともに,反面,死者の祟りを恐怖し,死者との関係を排除しようとする願望があるとされる。したがって,人は,近親者や知人の葬儀に対しては,上記の二面的な思いを抱くが,縁のない他人の葬儀に対しては,恐怖の念のみを抱くことになる。人が葬儀に接したときの感情については,その者の年齢,経験,性格,宗教的感情の多寡,信じる宗教の有無,その教えの内容等に応じて様々であると考えられるが,程度の差はあれ,縁のない他人の葬儀に接することにより,上記の恐怖の念を抱き,心の静謐を乱されるのは一般的なことと考えられる。また,上記の恐怖の念は,葬儀に接する者をして,心の静謐を乱されるに止まらず,葬儀の厳粛な雰囲気を傷つけてはならないという行動規制まで働かせることになる。
(3) そうすると,通りがかりの者が一回的に縁のない他人の葬儀に接する場合や,反復していても,それが職場や通勤経路等において接する場合とは異なり,人が最も安息と寛ぎを求める自宅において,日常的に縁のない他人の葬儀に接することを余儀なくされることは,その者の精神の平安にとって相当の悪影響を与えるものといわなければならない。
(4) 原告居宅は,幅員15.3メートルの南北市道を隔てて本件葬儀場と隣接しており,1階の各部屋からは,本件目隠しフェンスのために本件葬儀場敷地内への視線が遮られるものの,2階の各居室からは,本件目隠しフェンス越しに本件葬儀場敷地内を見渡すことができ,本件ホールへの遺族や参列者の出入りのみならず,遺体が納められた棺が本件ホールに搬入される状況や出棺の状況を観望することができる。そうすると,原告居宅2階の北東居室を仕事室兼寝室として使用している原告Aは,自宅において,このような状況に置かれることによって,心の静謐を乱され,平穏な生活を送る人格権ないし人格的利益を侵害されているというべきであって,この侵害が受忍限度を超えている場合には,人格権ないし人格的利益に基づいて,その差止めを求めることができるというべきである。」

「上記のとおり,被告の現状における本件葬儀場の営業は,原告Aが原告居宅2階の各居室等から棺の搬入及び出棺の様子を観望できる状況で行っている限りにおいて違法であるというべきであるから,原告Aは,人格権ないし人格的利益に基づく妨害排除請求として,被告に対し,本件目隠しフェンスを嵩上げする方法で,少なくとも,原告居宅2階の各居室から,本件ホール玄関への棺の搬入及び本件ホール玄関からの出棺の様子の観望を妨げる遮蔽物の設置を求めることができるというべきである。」

平井利明のメモ

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