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2008.12.16

平成20年12月16日最高裁判所第三小法廷判決(民事再生手続開始申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約の有効性)

平成19(受)1030動産引渡等請求事件
平成20年12月16日最高裁判所第三小法廷判決

原審
東京高等裁判所   
平成16(ネ)3679
平成19年03月14日

裁判要旨
いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約は,無効である
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37102&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081216142118.pdf

判決文より
「上告人が,民事再生手続開始の申立てがあったときは契約を解除できる旨を定めた特約に基づいてファイナンス・リース契約を解除したとして,同契約上の地位を承継した被上告人に対し,上記解除の日の翌日からリース物件返還の日又は返還不能となった日までのリース料相当額の損害金の支払を求める事案」

「本件リース契約には,ユーザーについて整理,和議,破産,会社更生などの申立てがあったときは,リース業者は催告をしないで契約を解除することができる旨の特約(以下「本件特約」という。)が定められている。民事再生手続開始の申立てがあったことも,本件特約に定める解除事由に含まれると解される。」
「本件リース契約は,いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約であり,本件特約に定める解除事由には民事再生手続開始の申立てがあったことも含まれるというのであるが,少なくとも,本件特約のうち,民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする部分は民事再生手続の趣旨,目的に反するものとして無効と解するのが相当である」
「民事再生手続は,経済的に窮境にある債務者について,その財産を一体として維持し,全債権者の多数の同意を得るなどして定められた再生計画に基づき,債務者と全債権者との間の民事上の権利関係を調整し,債務者の事業又は経済生活の再生を図るものであり(民事再生法1条参照),担保の目的物も民事再生手続の対象となる責任財産に含まれる。
「ファイナンス・リース契約におけるリース物件は,リース料が支払われない場合には,リース業者においてリース契約を解除してリース物件の返還を求め,その交換価値によって未払リース料や規定損害金の弁済を受けるという担保としての意義を有するものである」
「同契約において,民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする特約による解除を認めることは,このような担保としての意義を有するにとどまるリース物件を,一債権者と債務者との間の事前の合意により,民事再生手続開始前に債務者の責任財産から逸出させ,民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることにほかならないから,民事再生手続の趣旨,目的に反することは明らかというべきである。」

裁判官田原睦夫の補足意見がある。
「本件では,いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約がその対象とされているが,同契約の意義について実務法曹の間で若干の誤解が見受けられるので,その点について補足的に意見を述べるとともに,いわゆる倒産申立て解除条項と弁済禁止の保全処分との関係について,一応の私見を述べておくこととしたい。」
とのこと。
なお,裁判官田原睦夫の「倒産申立て解除条項と弁済禁止の保全処分との関係について」の私見の部分は次の通りである。
「法廷意見では,民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする特約の効力を否定すべきものとしているが,民事再生手続のその後の手続の流れとリース業者の権利の行使の関係について,若干補足する。
まず,本判決の結論は,再生債務者がリース料金を滞納した場合のリース契約の解除の可否には,当然ながら何らの影響を及ぼすものではない。再生債務者がリース料金を滞納していれば,リース業者は,その債務不履行を理由としてリース契約を解除することができるのは当然である。また,一般に,リース契約では,ユーザーが倒産手続開始の申立てをした場合,ユーザーは,リース料金についての期限の利益を失い,直ちに残リース料金の全額を支払うべきものとする定めが置かれているが,かかる期限の利益喪失条項の効力は,一般に否定されてはいない。そうすると,ユーザーが民事再生手続開始の申立てをしたときは,通常,ユーザーはリース料金の期限の利益を喪失するから,リース業者はリース料金の債務不履行を理由にリース契約を解除することができることとなる。
しかし,ユーザーたる再生債務者が,民事再生手続開始の申立てと共に弁済禁止の保全処分の申立てをし,その決定を得た場合,再生債務者は,その保全処分の効果として,リース料金についても弁済をなすことが禁じられ,その反射的効果として,リース業者も,弁済禁止の保全処分によって支払を禁じられた民事再生手続開始の申立て以後のリース料金の不払を理由として,リース契約を解除することが禁止されるに至るものというべきである(最高裁昭和53年(オ)第319号同57年3月30日第三小法廷判決参照)。
ところで,民事再生手続が開始された場合,その開始決定の効果として,再生債権の弁済は原則として禁止される(民事再生法85条1項)が,弁済禁止の保全処分は開始決定と同時に失効するので再生債務者は,リース料金について債務不履行状態に陥ることとなる。したがって,リース業者は,別除権者としてその実行手続としてのリース契約の解除手続等を執ることができることとなる。そして,再生債務者は,民事再生手続の遂行上必要があれば,これに対し,担保権の実行手続の中止命令(同法31条1項)を得て,リース業者の担保権の実行に対抗することができると考える。」

この補足意見を前提とすればリース債権者は開始決定後に,リース料不払いを理由として解除が出来る。それ故に,再生債務者は,リース料の支払を余儀なくされるが,それは期限の利益の喪失条項との兼ね合いで全額?
仮に,全額を支払わないならば(解除の効果として)リース物件の引き揚げが可能となってしまうとすれば,実際上の問題として,本件判決はどのような意味合いのあるものと理解すればよいのやら。
いずれにせよ,会社においては,社内の目に見えるものや目に見えないものまでが殆どリースという現実を考えると,開始決定(つまり企業継続)にまでこぎ着けるためには,リース債権者との間においても合意を取り付けておくことが不可避と言うこと。
当たり前といえば当たり前のことなのだが。

この補足意見をどの程度一般的なものと理解して良いのか不明だが「ユーザーが倒産手続開始の申立てをした場合,ユーザーは,リース料金についての期限の利益を失い,直ちに残リース料金の全額を支払うべきものとする定めが置かれているが,かかる期限の利益喪失条項の効力は,一般に否定されてはいない。」と最高裁の判決において示されていることは重要。
また,この理屈は,所有権留保や譲渡担保の際にも同様なのだろう(というより,これらの場合を別に考える理由が思い浮かばない)。


平井利明のメモ

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