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2009.04.30

平成21年04月28日最高裁判所第三小法廷判決(不法行為に基づく損害賠償請求権の除斥期間経過による消滅に関連)

平成20(受)804損害賠償請求事件
平成21年04月28日最高裁判所第三小法廷判決

原審
東京高等裁判所   
平成18(ネ)5133
平成20年01月31日

裁判要旨
殺人事件の加害者が殊更に死体を隠匿するなどしたため,被害者の相続人が死亡の事実を知り得なかった場合において,相続人確定時から6か月内に権利が行使されたなど特段の事情があるときは,不法行為に基づく損害賠償請求権は除斥期間により消滅しない
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37556&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090428130810.pdf

判決文より
「殺人事件の被害者の有していた権利義務を相続した被上告人らが,加害者である上告人に対して,不法行為に基づく損害賠償を請求する事案であり,不法行為から20年が経過したことによって,民法724条後段の規定に基づき損害賠償請求権が消滅したか否かが争われている。」
「3 民法724条後段の規定は,不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり,不法行為による損害賠償を求める訴えが除斥期間の経過後に提起された場合には,裁判所は,当事者からの主張がなくても,除斥期間の経過により上記請求権が消滅したものと判断すべきである(最高裁昭和59年(オ)第1477号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁参照)。ところで,民法160条は,相続財産に関しては相続人が確定した時等から6か月を経過するまでの間は時効は完成しない旨を規定しているが,その趣旨は,相続人が確定しないことにより権利者が時効中断の機会を逸し,時効完成の不利益を受けることを防ぐことにあると解され,相続人が確定する前に時効期間が経過した場合にも,相続人が確定した時から6か月を経過するまでの間は,時効は完成しない最高裁昭和35年(オ)第348号同年9月2日第二小法廷判決・民集14巻11号2094頁参照)。そして,相続人が被相続人の死亡の事実を知らない場合は,同法915条1項所定のいわゆる熟慮期間が経過しないから,相続人は確定しない。これに対し,民法724条後段の規定を字義どおりに解すれば,不法行為により被害者が死亡したが,その相続人が被害者の死亡の事実を知らずに不法行為から20年が経過した場合は,相続人が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する機会がないまま,同請求権は除斥期間により消滅することとなる。しかしながら,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも,相続人は一切の権利行使をすることが許されず,相続人が確定しないことの原因を作った加害者は損害賠償義務を免れるということは,著しく正義・公平の理念に反する。このような場合に相続人を保護する必要があることは,前記の時効の場合と同様であり,その限度で民法724条後段の効果を制限することは,条理にもかなうというべきである(最高裁平成5年(オ)第708号同10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁参照)。そうすると,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。
4 これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,上告人が本件殺害行為後にAの死体を自宅の床下に掘った穴に埋めて隠匿するなどしたため,B,C及び被上告人らはAの死亡の事実を知ることができず,相続人が確定せず損害賠償請求権を行使する機会がないまま本件殺害行為から20年が経過したというのである。そして,C及び被上告人らは,平成16年9月29日にAの死亡を知り,それから3か月内に限定承認又は相続の放棄をしなかったことによって単純承認をしたものとみなされ(民法915条1項,921条2号),これにより相続人が確定したところ,更にそれから6か月内である平成17年4月11日に本件訴えを提起したというのであるから,本件においては前記特段の事情があるものというべきであり,民法724条後段の規定にかかわらず,本件殺害行為に係る損害賠償請求権が消滅したということはできない。」

裁判官田原睦夫の意見がある。
「私は,上告人の殺害行為によって死亡した被害者の遺族たる被上告人らの,本件損害賠償請求を認容した原判決は維持されるべきである,との多数意見の結論に賛成するものであるが,その理由は,多数意見とは異なる。私は,民法724条後段の規定は,時効と解すべきであって,本件においては民法160条が直接適用される結果,被上告人らの請求は認容されるべきものと考える。」として,民法724条後段の規定を「除斥期間」を定めたものではなく「時効」であると解すべきとして,最高裁昭和59年(オ)第1477号平成元年12月21日第一小法廷判決(
民集43巻12号2209頁,同規定は,除斥期間を定めたものと解すべきものとし,除斥期間の性質にかんがみ,その期間の経過により原告の主張する損害賠償請求権は消滅した旨の主張がなくても,裁判所は同期間の経過により,同請求権は消滅したものと判断すべきであり,除斥期間の経過を主張することが信義則違反又は権利濫用であるとの主張は,主張自体失当である,と判示)を変更すべきであり,且つ,現在,法務省で進められている債権法の改正作業に伴う時効制度の見直しに当たっても検討することを求めている。

確かに,多数意見の解釈は,除斥期間と消滅時効は異なるといいながら,時効制度についての解釈を援用する等かなり無理を重ねているように思われる(時効に関する制度の一部援用を認めるならば,時効に関する制度の一つ一つを吟味して,除斥制度についてそれを類推適用できるのか否かを検討する必要があることになるが,仮にそのような作業を行った結果が,消滅時効と理解する場合と,どれほどの違いが出るのだろうか?)。


しかし、
仮に、我がことで考えるならば、20数年前のことを云々とされてもほぼ記憶にないし、また、その頃の資料も殆どない。例えば、誰かが私に対して、「あなたは20数年前にこのようなことをした。」といわれて、それらしき何らかの証拠を示されたとしても、正直なところ、その証拠の適正さも含めてどうにも対処のしようがない。
昨今、消滅時効の延長なりが議論されているが、それほど長い時間を必要とするのだろうか?
不法行為の場合は短期3年であるからまだしも、一般の債権関係については現在でも10年である。4~5年前ぐらいなら何とか資料を集めることができるだろうが、10年ほどの昔のこととなるとどうにもならない。
確かに、デジタル化により保存されているものが多少なりとも増えている可能性はあるが、総てのものをデジタル化しているわけではなく、日常業務や日常生活を見渡すと、デジタル化されていないもののほうが圧倒的に多いのである。
人、物の動きが激しく、また、時代の進展の急激な昨今、極めて特殊な場合(例えば,故意による殺害等)を除いてそれほど長期の消滅時効等を必要とする場合がどの程度あるのか。
個人的にはかなり疑問を有している。
社会的の観点から、また個々人の観点から考えても、早期に物事を落ち着かせること、このことが重要だと思う。極めて例外的なものは、それをそのようなものとして扱えばいいのであって、そのような極めて特殊な場合があることをもって、それを一般化させる考え方が妥当であるようには思えない。

平井利明のメモ

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