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2009.05.27

平成21年03月31日最高裁判所第三小法廷判決(代表訴訟関連)

平成20(受)442組合員代表訴訟事件
平成21年03月31日最高裁判所第三小法廷判決

原審
東京高等裁判所   
平成19(ネ)2816
平成19年12月12日

裁判要旨
1 農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,同組合の代表者として代表理事を記載した提訴請求書を同組合に送付したが,監事において,当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があった場合,上記組合員の提起した代表訴訟を不適法ということはできない
2 農業協同組合の合併契約に,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう等があったため新設組合が損害を受けたときは故意又は重過失のある被合併組合の役員が賠償責任を負う旨の条項がある場合,被合併組合の理事会で上記契約の締結に賛成した理事等は,上記条項に基づく責任を負う
3 上記条項が,被合併組合に貸倒引当金の過少計上があったときには,故意又は重過失のある被合併組合の役員に引当不足額相当額をてん補する義務を負わせる趣旨を含むとされた事例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37502&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090401103623.pdf

判決文より
「事案の概要:A農業協同組合(以下「A農協」という。)ほか三つの農業協同組合が合併して新設されたB農業協同組合(以下「B農協」という。)の組合員である上告人X1及び同X2が,上記合併に当たり,A農協の役員らと上記合併前の各農業協同組合との間には,A農協の貸倒引当金が過少に計上されていた場合に,引当不足額を上記役員個人としてB農協にてん補する旨の合意があったなどと主張して,A農協の役員であった者又はその相続人である被上告人らに対し,上記合意に基づき,上記合併後に明らかになった同農協の貸倒引当金の不足額をB農協に支払うことなどを求める農業協同組合の組合員代表訴訟」

「平成17年法律第87号による改正前の農業協同組合法(以下,単に「農協法」という。)39条2項において準用する同改正前の商法275条ノ4によれば,農業協同組合の理事に対する組合員代表訴訟を提起しようとする組合員の提訴請求を受けることについては,監事が農業協同組合を代表することとなる。しかし,上記のとおり監事が農業協同組合を代表することとされているのは,組合員代表訴訟の相手方が代表理事の同僚である理事の場合には,代表理事が農業協同組合の代表者として提訴請求書の送付を受けたとしても,農業協同組合の利益よりも当該理事の利益を優先させ,当該理事に対する訴訟を提起しないおそれがあるので,これを防止するため,理事とは独立した立場にある監事に,上記請求書の記載内容に沿って農業協同組合として当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを判断させる必要があるからであると解される。そうすると,農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,農業協同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を農業協同組合に対して送付した場合であっても,監事において,上記請求書の記載内容を正確に認識した上で当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があったといえるときには監事は,農業協同組合の代表者として監事が記載された提訴請求書の送付を受けたのと異ならない状態に置かれたものといえるから上記組合員が提起した代表訴訟については,代表者として監事が記載された適式な提訴請求書があらかじめ農業協同組合に送付されていたのと同視することができ,これを不適法として却下することはできないというべきである。」

「本件合併契約は,旧4農協を当事者とするものであり,被上告人Y7らを当事者とするものではない。しかし,被上告人Y7らのうちA農協の理事会に出席して同農協が本件合併契約を締結することに賛成した理事又はこれに異議を述べなかった監事に該当する者については,本件合併契約の中に,旧4農協のうちのいずれかの農業協同組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったためにB農協が損害を受けた場合には,そのことに故意又は重過失がある当該農業協同組合の役員は個人の資格において賠償する責任を負う旨を明記した本件賠償条項が含まれていることを十分に承知した上で,A農協が本件合併契約を締結することに賛成するなどして,その締結手続を代表理事にゆだねているのであるから,同農協の代表理事を介して,旧4農協に対し,個人として本件賠償条項に基づく責任を負う旨の意思表示をしたものと認めるのが相当である。また,旧4農協においても,本件合併契約の締結に至っている以上,上記の意思表示について承諾したものと認めるのが相当である。そうすると,少なくとも,被上告人Y らのうち上記のよ7 うな理事又は監事に該当する者については,旧4農協の権利義務を承継したB農協に対する関係でも,本件賠償条項に基づく責任を免れないものというべきである。」

「本件賠償条項においては,「賠償の責に任ずる」場合について,「新組合が損害を受けたとき」と定められているところであり,その文理に照らすと,原審のように解する余地もないわけではない。しかし,旧4農協のうちのいずれかの農業協同組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったために,B農協の資産が流出するなどして,同農協に具体的な損害が生じた場合には,当該農業協同組合の理事及び監事は,軽過失のときであっても,法律上当然に,B農協に対する損害賠償責任を負うのであるから(農協法33条2項,39条2項),故意又は重過失の場合に限って旧4農協の理事及び監事が責任を負うものとする本件賠償条項について上記のように解するのは,当事者の合理的意思に合致しないものというべきである。前記事実関係によれば,本件合併契約には,B農協に引き継がれる旧4農協の財産が貸借対照表等どおりのものであることを前提とする条項(4条1項)が設けられており,平成13年2月25日に開催されたA農協の臨時総会では,不良債権であるのに,そうでないように見せ掛けるなどした場合に,同農協の役員が本件賠償条項に基づく責任を負うことになることから,そのような事態の発生を回避するために,同農協の職員において注意して自己査定を行っている旨の説明がされているというのである。また,前記事実関係によれば,本件合併の前後を通じて,A農協及びB農協において,不良債権を適正に評価し,必要な貸倒引当金を計上し,財務の健全性確保に努め,自己資本比率の維持,向上を図っていくことが重要な課題となっていたことは,明らかである。これらの事情に照らすと,本件賠償条項は,不良債権が適正に評価され,必要な貸倒引当金が計上されていることを含めて,旧4農協の貸借対照表等が正確であることを担保する趣旨の定めというべきであり,旧4農協のうちのいずれかの農業協同組合において,不良債権が適正に評価されておらず,貸倒引当金が過少に計上されていることが判明した場合には,過少に計上したことに故意又は重過失のある当該農業協同組合の理事及び監事に対して,引当不足額相当額をB農協にてん補する義務を負わせる趣旨を含むものと解するのが相当である。」

平井利明のメモ

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