« 大阪に戻り | トップページ | これからヘンデルでやす(バッハ・コレギウム・ジャパン ヘンデル没後250年記念特別プログラム) »

2009.07.15

平成21年07月09日最高裁判所第一小法廷判決( 従業員らの不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務関連)

平成20(受)1602損害賠償請求事件
平成21年07月09日最高裁判所第一小法廷判決

【破棄自判】

原審
東京高等裁判所   
平成20(ネ)280
平成20年06月19日

裁判要旨
株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされたことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37819&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090709152854.pdf

判決文より

本件は,上告人の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,その後同事実が公表されて上告人の株価が下落したことについて,公表前に上告人の株式を取得した被上告人が,上告人の代表取締役に従業員らの不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があり,その結果被上告人が損害を被ったなどと主張して,上告人に対し,会社法350条に基づき損害賠償を請求する事案である。被上告人は,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)261条3項,78条2項が準用する民法(平成18年法律第50号による改正前のもの)44条1項に基づく請求をするが,会社法の制定により,同法にこれと同内容の規定である350条が設けられ,同法の施行前に生じた事項にも適用されるものとされた(会社法附則2項)ので,同法施行後は同法350条に基づく請求をするものと解される。

本件不正行為当時,上告人は,①職務分掌規定等を定めて事業部門と財務部門を分離し,②C事業部について,営業部とは別に注文書や検収書の形式面の確認を担当するBM課及びソフトの稼働確認を担当するCR部を設置し,それらのチェックを経て財務部に売上報告がされる体制を整え,③監査法人との間で監査契約を締結し,当該監査法人及び上告人の財務部が,それぞれ定期的に,販売会社あてに売掛金残高確認書の用紙を郵送し,その返送を受ける方法で売掛金残高を確認することとしていたというのであるから,上告人は,通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていたものということができる。そして,本件不正行為は,C事業部の部長がその部下である営業担当者数名と共謀して,販売会社の偽造印を用いて注文書等を偽造し,BM課の担当者を欺いて財務部に架空の売上報告をさせたというもので,営業社員らが言葉巧みに販売会社の担当者を欺いて,監査法人及び財務部が販売会社あてに郵送した売掛金残高確認書の用紙を未開封のまま回収し,金額を記入して偽造印を押捺した同用紙を監査法人又は財務部に送付し,見掛け上は上告人の売掛金額と販売会社の買掛金額が一致するように巧妙に偽装するという,通常容易に想定し難い方法によるものであったということができる。また,本件以前に同様の手法による不正行為が行われたことがあったなど,上告人の代表取締役であるAにおいて本件不正行為の発生を予見すべきであったという特別な事情も見当たらない。さらに,前記事実関係によれば,売掛金債権の回収遅延につきBらが挙げていた理由は合理的なもので,販売会社との間で過去に紛争が生じたことがなく,監査法人も上告人の財務諸表につき適正であるとの意見を表明していたというのであるから,財務部が,Bらによる巧妙な偽装工作の結果,販売会社から適正な売掛金残高確認書を受領しているものと認識し,直接販売会社に売掛金債権の存在等を確認しなかったとしても,財務部におけるリスク管理体制が機能していなかったということはできない。以上によれば,上告人の代表取締役であるAに,Bらによる本件不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるということはできない。

平井利明のメモ

|

« 大阪に戻り | トップページ | これからヘンデルでやす(バッハ・コレギウム・ジャパン ヘンデル没後250年記念特別プログラム) »

裁判例」カテゴリの記事