« やはりキツイ | トップページ | 巡行前の京都の夜 »

2009.07.13

所有権留保は,期限の付与?,停止条件の付与?,それとも?

 売買契約書において
 「代金完済時に売買目的物の所有権が売主から買主へと移転する。」
という旨の約定が設けられることはよく見られることである。
 これは,最高裁判所等が,民法176条の解釈において,現存する特定物の売買は売買行為によって所有移転が生じると判断していることを反映する条項である。
 では,所有権留保条項における,所有権留保は法的にどのような意味合いがあるのだろうか?
 次のようなものが考えられるのだろうか?
①民法176条及び民法555条の解釈問題(正しく意思表示の内容の解釈問題であって,「期限」や「(停止)条件」とは異なる問題)
②「期限」
③「(停止)条件」
④所有権留保は一種の物的担保の問題

 この問題がシビアな結果として出てくるのが危険負担の問題であろう。
 特定物の売買において,売買契約の成立後引渡までに売買の目的物が(当事者の責めに帰することなくして)滅失等した場合に,反対債務(売買代金支払債務)が存続するのか消滅するのかという問題,即ち,危険負担の問題の処理は必ずしもよく分からない。

 素直に解釈すれば,所有権留保というのは「停止条件」であるように感じられる。
 仮に,所有権留保が停止条件だと考えるならば,危険負担においては民法535条の適用の問題となると考えられるが,535条は「滅失」の場合を規定する第1項は債務者主義を採用しているので合理性が認められると言えるのだが,「損傷」の場合を規定する第2項は債権者主義を採用していることが問題となる。
 そもそも「双務契約における両債務の牽連性」を考えるのならば,危険負担の制度においては,いわゆる「債務者主義」を原則とすべきと考えられること,及び,「滅失」の場合(債務者主義)と「損傷」の場合(債権者主義)で結論が異なるとすることの合理性を見いだすことが困難であることを考えると,民法535条は適用範囲を可能な限り狭めるべきであるということになろう。
 そうだとするならば,所有権留保についてもできるだけ民法535条の適用を受けないような形で(具体的には,停止条件付きのものではない方向にて)解釈すべきと言うことになるのか?(535条において,2項のみを限定解釈することは容易ではないと思われる)
 では,「期限」と考えるべきなのだろうか?
 講学上,「条件」とは実現するかどうか不確実な事実であり,「期限」は将来必ず実現する事実とされている。
 「代金支払」という事項は,両当事者がそれを遵守しようと考えている点を捉えれば将来必ず実現する事実と評価できないこともないとは思えるが,その実現は,最終的には債務者の意向等にかかっていることを考えれば,やはり「条件」ということになるのでは。仮にそうだとすれば「期限」と考えることは困難か。
 そうだとするならば,例えば上記①のように「条件」「期限」の問題ではないと考えてしまう方法がストレートか。
 なお,我妻・有泉「コンメンタール民法(第2版)」999pには,所有権留保売買の場合については,通常の売買においては,所有権留保の特約に関係なく,民法534条の適用があり,但し,これを制限的に解釈して,危険は移転しないという結論になることが多いであろう,との旨の指摘がなされているのであるが,このような方向性を示すものと言えようか。
 なお,所有権留保は一種の物的担保の問題と考えるならば,売買における所有権留保の特約の存在は,売買における危険負担一般の問題として,所有権留保との関係では担保権の滅失の問題になると考えられることも指摘されている(上記コンメンタール同p)。

 自宅にある限られた資料を見ながらの考察・・・・
 ロースクールにて何らかの課題を出そうとするならば、やはり可能な限り正確性を期したいと考えるものではあるが、自らの能力の限界を感じることは少なくない。
 かといって、数多くある民法の教科書を総て読破して答えを見つけ出すということも、実務を扱いながらの現実を考えると、現実的にはなかなかでき得ない。
 そのような現実において、乏しい能力ながら、ある程度の所までは詰めて考えるので、少なくとも自らの鍛錬にはなっている。更に、それが院生に還元されるならば、願いかなったりということではある。

 会社法とは異なり、民法は、奥が深くまた範囲が広くて難しい。 
 しかし、はまってしまうととても面白いものでもある。

平井利明のメモ

|

« やはりキツイ | トップページ | 巡行前の京都の夜 »

法律関連」カテゴリの記事