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2009.10.16

平成21年10月16日最高裁判所第二小法廷判決(米国の州についての民事裁判権関連)

平成20(受)6解雇無効確認等請求事件
平成21年10月16日最高裁判所第二小法廷判決

【破棄差戻し】

原審東京高等裁判所    平成18(ネ)4593 平成19年10月04日

裁判要旨米国ジョージア州港湾局の我が国における事務所に勤務し,解雇された者が,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び解雇後の賃金の支払を求めて提起した訴訟において,同州は我が国の民事裁判権から免除されるとした原審の判断に違法があるとされた事例 

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=38074&hanreiKbn=01

判決文

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091016114317.pdf

判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091016114317.pdf

判決文より
アメリカ合衆国(以下「米国」という。)ジョージア州港湾局(以下「州港湾局」という。)の我が国における事務所の職員として被上告人に雇用されていた上告人が,被上告人のした解雇が無効であると主張して,被上告人に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び解雇後の賃金の支払を求める事案

外国国家は,その主権的行為については,我が国の民事裁判権から免除され得るところ,被上告人は,連邦国家である米国の州であって,主権的な権能を行使する権限を有するということができるから,外国国家と同様に,その主権的行為については我が国の民事裁判権から免除され得る。しかし,その私法的ないし業務管理的な行為については,我が国による民事裁判権の行使がその主権的な権能を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,我が国の民事裁判権から免除されないと解するのが相当である(最高裁平成15年(受)第1231号同18年7月21日第二小法廷判決・民集60巻6号2542頁参照)。
前記事実関係によれば,上告人は,極東代表部の代表者との間で口頭でのやり取りのみに基づき現地職員として被上告人に雇用されたものであり,勤務を継続することにより州港湾局の企業年金の受給資格を得ることが可能であるのみでなく,極東代表部には我が国の厚生年金保険,健康保険,雇用保険及び労働者災害補償保険が適用されていたというのであるから,本件雇用関係は,被上告人の公権力的な公務員法制の対象ではなく,私法的な契約関係に当たると認めるのが相当である。極東代表部の業務内容も,我が国において被上告人の港湾施設を宣伝し,その利用の促進を図ることであって,被上告人による主権的な権能の行使と関係するものとはいえない。以上の事情を総合的に考慮すると,本件雇用関係は,私人間の雇用契約と異なる性質を持つものということはできず,私法的ないし業務管理的なものというべきである。
そして,本件解雇は,極東代表部を財政上の理由により閉鎖することに伴い,上記のような雇用契約上の地位にあった上告人を解雇するというものであり,私人間の雇用契約における経済的な理由による解雇と異なるところはなく,私法的ないし業務管理的な行為に当たるものというほかはない。
原審は,免除条約のうち雇用契約に関する11条の規定についての議論の過程では,個人と外国国家との雇用契約から生ずる訴訟については一般的には裁判権免除の対象とならないが,被用者の「採用,雇用の更新,復職」が訴訟の主題となる場合は,裁判権免除の対象となるとの立場がほぼ一貫して採用されてきており,国際慣習としてほぼ定着しているか,少なくとも国際連合加盟各国で共通の認識となっているものと解するのが相当であるとした上,上告人が雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び解雇後の賃金の支払を求める本件請求も,同条2(c)の「復職」を主題とする訴訟に当たると解するほかはないと判示する。しかしながら,免除条約が平成16年12月に国際連合総会において採択されるまでに各国代表者の間で行われた議論においては,労働者が使用者である外国国家に対して金銭的救済を求めた場合に,外国国家は原則として裁判権から免除されないことが共通の認識となっていたところである(当裁判所に顕著な事実であり,その後成立した外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律9条1項,2項3号,4号もこのことを前提としている。)。原審の指摘する免除条約11条2(c)は,雇用関係を開始する場合に関する規定であり,そこにいう「裁判手続の対象となる事項が個人の復職に係るものである」とは,文字どおり個人をその職務に復帰させることに関するものであって,現実の就労を法的に強制するものではない上告人の本件請求をこれに当たるものとみることはできない。解雇が無効であることを理由に,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び解雇後の賃金の支払を求める本件請求は,同条2(d)にいう「裁判手続の対象となる事項が個人の解雇又は雇用契約の終了に係るもの」に当たると解すべきであり,この場合は,「雇用主である国の元首,政府の長」等が,「当該裁判手続が当該国の安全保障上の利益を害し得るものであると認める場合」に限り裁判権の免除が認められているところである。さらに,原審は,本件解雇の「正当事由」の有無について判断するため州港湾局の事務所閉鎖の必要性や被上告人の事業政策,財政状況等について審理することは主権の侵害に当たると判示するが,免除条約においては,上記のとおり,解雇の場合は,政府の長等によって安全保障上の利益を害するおそれがあるものとされた場合に限って免除の対象とされるなど,裁判権免除を認めるに当たり厳格な要件が求められていることに徴しても,原審の指摘するような事情が主権を侵害する事由に当たるものとは認められない。
前記のとおり,本件解雇は私法的ないし業務管理的な行為に当たるところ,原審が指摘するところは,我が国が民事裁判権を行使することが被上告人による主権的な権能の行使を侵害するおそれがある特段の事情とはいえないから,被上告人が我が国の民事裁判権から免除されるとした原審の前記判断は,外国国家に対する民事裁判権免除に関する判断を誤った違法なものといわざるを得ない。

平井利明のメモ

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