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2009.12.10

平成21年12月10日最高裁判所第一小法廷判決(教育債務履行等に関するもの)

平成20(受)284教育債務履行等請求事件
平成21年12月10日最高裁判所第一小法廷判決

【破棄自判】

原審
東京高等裁判所   
平成18(ネ)5308
平成19年10月31日

裁判要旨
学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容や指導方法の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成する場合
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=38246&hanreiKbn=01

判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091210115218.pdf

判決文より

「上告人が設置するA中学校又はB高等学校(以下「本件各学校」という。)に在籍していた生徒の親である被上告人らが,上告人に対し,上告人が,本件各学校の生徒を募集する際,学校案内や学校説明会等において,論語に依拠した道徳教育の実施を約束したにもかかわらず,子の入学後に同教育を廃止したことは,上告人と被上告人らとの間で締結された在学契約上の債務不履行に当たり,また,被上告人らの学校選択の自由を侵害し,不法行為を構成するなどと主張して,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償等を求める事案」

「親は,子の将来に対して最も深い関心を持ち,かつ,配慮をすべき立場にある者として,子の教育に対する一定の支配権,すなわち子の教育の自由を有すると認められ,このような親の教育の自由は,主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられる(最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)。」
「そして,親の学校選択の自由については,その性質上,特定の学校の選択を強要されたり,これを妨害されたりするなど,学校を選択する際にその侵害が問題となり得るものであって,親が子を入学させる学校を選択する際に考慮した当該学校の教育内容や指導方法(以下,両者を併せて「教育内容等」という。)が子の入学後に変更されたとしても,学校が教育内容等の変更を予定しながら,生徒募集の際にそのことを秘して従来どおりの教育を行う旨説明,宣伝したなどの特段の事情がない限り,親の学校選択の自由が侵害されたものということはできない。」

「被上告人らの主張は,上告人が生徒募集の際に行った説明,宣伝により,論語に依拠した道徳教育が本件各学校に入学した子に施されると期待,信頼したにもかかわらず,上告人が同教育を廃止したことによって,その期待,信頼が損なわれたことを問題とし,その期待,信頼の侵害が不法行為を構成するとの趣旨をいうものとも解される。」
「親が,学校が生徒募集の際に行った教育内容等についての説明,宣伝により,子にその説明,宣伝どおりの教育が施されるとの期待,信頼を抱いて子を当該学校に入学させたにもかかわらず,その後学校がその教育内容等を変更し,説明,宣伝どおりの教育が実施されなくなった結果,親の上記期待,信頼が損なわれた場合において,上記期待,信頼は,およそ法律上保護される利益に当たらないとして直ちに不法行為の成立を否定することは,子に対しいかなる教育を受けさせるかは親にとって重大な関心事であることや上記期待,信頼の形成が学校側の行為に直接起因することからすると,相当ではない。」
「他方,上記期待,信頼は,私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものではない。生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容等の受け止め方やどこに重きを置くのかは,個々の親によって様々であり,すべての親が常に同じ期待,信頼を抱くものではないし,同様の期待,信頼を抱いた親であっても,ある教育内容等が変更されたことにより,その期待,信頼が損なわれたと感じるか否かは,必ずしも一様とはいえない。そうすると,特定の親が,子の入学後の教育内容等の変更により,自己の抱いていた期待,信頼が損なわれたと感じたからといって,それだけで直ちに上記変更が当該親に対する不法行為を構成するものということはできない。
また,学校教育における教育内容等の決定は,当該学校の教育理念,生徒の実情,物的設備・施設の設置状況,教師・職員の配置状況,財政事情等の各学校固有の事情のほか,学校教育に関する諸法令や学習指導要領との適合性,社会情勢等,諸般の事情に照らし,全体としての教育的効果や特定の教育内容等の実施の可能性,相当性,必要性等を総合考慮して行われるものであって,上記決定は,学校教育に関する諸法令や学習指導要領の下において,教育専門家であり当該学校の事情にも精通する学校設置者や教師の裁量にゆだねられるべきものと考えられる。そして,教育内容等については,上記諸般の事情の変化をも踏まえ,その教育的効果等の評価,検討が不断に行われるべきであり,従前の教育内容等に対する評価の変化に応じてこれを変更することについても,学校設置者や教師に裁量が認められるべきものと考えられる。」

「したがって,学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容等の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するのは,当該学校において生徒が受ける教育全体の中での当該教育内容等の位置付け,当該変更の程度,当該変更の必要性,合理性等の事情に照らし,当該変更が,学校設置者や教師に上記のような裁量が認められることを考慮してもなお,社会通念上是認することができないものと認められる場合に限られるというべきである。」

平井利明のメモ

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