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2010.04.13

平成22年04月13日最高裁判所第三小法廷判決(発信者情報の開示関連)

平成21(受)609発信者情報開示等請求事件
平成22年04月13日最高裁判所第三小法廷判決

原審
東京高等裁判所   
平成20(ネ)3598
平成20年12月10日

裁判要旨
インターネット上の電子掲示板にされた書き込みの発信者情報の開示請求を受けた特定電気通信役務提供者が,請求者の権利が侵害されたことが明らかでないとして開示に応じなかったことにつき,重大な過失があったとはいえないとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=80104&hanreiKbn=01

判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100413142909.pdf

判決文より
「本件は,インターネット上の電子掲示板にされた書き込みによって権利を侵害されたとする被上告人が,その書き込みをした者にインターネット接続サービスを提供した上告人に対し,① 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,上記書き込みの発信者情報の開示を求めるとともに,② 上告人には裁判外において被上告人からされた開示請求に応じなかったことにつき重大な過失(同条4項本文)があると主張して,不法行為に基づく損害賠償を求める事案」

「法は,4条1項において,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は,侵害情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが明らかであるなど同項各号所定の要件のいずれにも該当する場合,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し,その発信者情報(氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。)の開示を請求することができる旨を規定する一方で,同条2項において,開示関係役務提供者がそのような請求を受けた場合には,原則として発信者の意見を聴かなければならない旨を,同条4項本文において,開示関係役務提供者が上記開示請求に応じないことによりその開示請求をした者に生じた損害については,故意又は重過失がある場合でなければ賠償の責任を負わない旨を,それぞれ規定している。以上のような法の定めの趣旨とするところは,発信者情報が,発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘密にかかわる情報であり,正当な理由がない限り第三者に開示されるべきものではなく,また,これがいったん開示されると開示前の状態への回復は不可能となることから,発信者情報の開示請求につき,侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなどの厳格な要件を定めた上で(4条1項),開示請求を受けた開示関係役務提供者に対し,上記のような発信者の利益の保護のために,発信者からの意見聴取を義務付け(同条2項),開示関係役務提供者において,発信者の意見も踏まえてその利益が不当に侵害されることがないように十分に意を用い,当該開示請求が同条1項各号の要件を満たすか否かを判断させることとしたものである。そして,開示関係役務提供者がこうした法の定めに従い,発信者情報の開示につき慎重な判断をした結果開示請求に応じなかったため,当該開示請求者に損害が生じた場合に,不法行為に関する一般原則に従って開示関係役務提供者に損害賠償責任を負わせるのは適切ではないと考えられることから,同条4項は,その損害賠償責任を制限したのである。そうすると,開示関係役務提供者は,侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が同条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負うものと解するのが相当である。」

「本件書き込みは,その文言からすると,本件スレッドにおける議論はまともなものであって,異常な行動をしているのはどのように判断しても被上告人であるとの意見ないし感想を,異常な行動をする者を「気違い」という表現を用いて表し,記述したものと解される。このような記述は,「気違い」といった侮辱的な表現を含むとはいえ,被上告人の人格的価値に関し,具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく,被上告人の名誉感情を侵害するにとどまるものであって,これが社会通念上許される限度を超- 5 -える侮辱行為であると認められる場合に初めて被上告人の人格的利益の侵害が認められ得るにすぎない。そして,本件書き込み中,被上告人を侮辱する文言は上記の「気違い」という表現の一語のみであり,特段の根拠を示すこともなく,本件書き込みをした者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,本件書き込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず,本件スレッドの他の書き込みの内容,本件書き込みがされた経緯等を考慮しなければ,被上告人の権利侵害の明白性の有無を判断することはできないものというべきである。そのような判断は,裁判外において本件発信者情報の開示請求を受けた上告人にとって,必ずしも容易なものではないといわなければならない。そうすると,上告人が,本件書き込みによって被上告人の権利が侵害されたことが明らかであるとは認められないとして,裁判外における被上告人からの本件発信者情報の開示請求に応じなかったことについては,上告人に重大な過失があったということはできないというべきである。」

平井利明のメモ

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