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2010.05.12

意思表示の取消と双務契約における両債務の成立上の牽連関係について?

「申込み」特定の内容を有する契約を締結しようという意思をもって他人に対
してなされる意思表示(我妻=有泉コンメンタール民法第2版総則・物権・債権966p)

「承諾」申込みに対してこれを応諾し,申込み通りの契約を締結しようという意思表示(967p)

「契約」申込みと承諾という二つの向き合った意思表示の合致したもの(196p)

「法律行為」行為者が一定の法律効果を生じさせようとして行為をし,その欲したとおりの効果を生じる行為(195p)

「意思表示」一定の法律効果を欲する意思を表示する行為(211p)。
例,契約の申込みや承諾。

民法96条1項
詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことが出来る。

1)売買の場合の「申込みの具体的内容」及び「承諾の具体的な内容」は?
2)売買(の承諾[=意思表示])を詐欺を理由として取り消す場合に,具体的にどのような内容(=意思表示?)のものが取り消されるのか?
3)それに牽連して,「申込み」が宙に浮いてしまって?消滅する?(牽連性?)
4)そのときに消滅する「申込み」の具体的な内容は?

    (テレビの所有権移転)
A   ・・・・・・・・・・・ → B
  ← ・・・・・・・・・・・ 
     (金銭の移転)

・Aの申込みの内容
テレビの所有権をAからBに移転させるので,Bの金銭をAに移転させてください?
・Bの承諾の内容
テレビの所有権をAからBに移転させること及びそれに対してBの金銭をAに移転させることを了解します?
(このような理解でよいのか?)

詐欺による取消の対象となる承諾(=意思表示)は
「Bの承諾の内容:テレビの所有権をAからBに移転させること及びそれに対してBの金銭をAに移転させることを了解します」の部分?

では,売買の規定にある「約し」というのは何を意味するのか?
申込み及び承諾の中のそれぞれに存在している,2つの法律効果(財物の移転と金銭の移転)に向けられた要素(?)が,合致すること?


「双務契約」契約の双方の当事者が対価的意義を有する債務を負担する契約である(981p)

「成立上の牽連関係」一方の債務が原始的履行不能・公序良俗違反その他の理由で成立しないときは,原則として,他方の債務も不成立に終わる。また,一方の債務が制限行為能力・詐欺・脅迫などの理由で取り消されるときは,原則として他方の債務もその効力を喪失する。このことは,民法に規定されていないが,判例・学説の均しく認めるところである。

実はこの説明がよくわからないのである。
前段部分において債務が「不成立」とされているが「不成立」で良いのかという疑問がある。とりあえず,そのことはさておく。
問題は,中段部分。
成立上の牽連関係を示すものとして
「一方の債務が制限行為能力・詐欺・脅迫などの理由で取り消されるときは,原則として他方の債務もその効力を喪失する。」
との記載はよく見られる。
しかし,詐欺などで取り消される対象は「意思表示」である。意思表示の代表例は,上記の通り「申込み」と「承諾」である。そして申込みと承諾を分析すると上記の通りであろうと考えられる。従って,イコール債務ではない。
仮に、そうだとすると,一方の「債務」が詐欺などの理由で取り消されるときというのは,具体的にはどのようなケースなのだろうか?
考えてみると,この具体例が思い浮かばない。

(贈与)第549条 
一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し
相手方が受諾をする

(売買)第555条
一方がある財産権を相手方に移転することを約し
相手方がこれに対してその代金を支払うことを約する

(交換)第586
当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約する

(消費貸借)第587条
一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約し
相手方から金銭その他の物を受け取る

(使用貸借)第593条 
一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約し
相手方からある物を受け取る

(賃貸借)第601条
一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し
相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約する

(雇用)第623条 
一方が相手方に対して労働に従事することを約し
相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する

(請負)第632条
一方がある仕事を完成することを約し
相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する

(委任)第643条
一方が法律行為をすることを相手方に委託し
相手方がこれを承諾する

(寄託)第657条 
一方が相手方のために保管をすることを約し
ある物を受け取る

(組合契約)第667条
各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約する

(終身定期金契約)第689条 
一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約する

(和解)第695条 
当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約する

平井利明のメモ

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