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2010.10.28

無給での司法修習について

1)新司法試験を合格した者は,1年間の修習(=研修)を受けなければなりません。その後,試験に合格して法曹資格(裁判官,検察官,弁護士となる資格)を得ることになります。

2)修習期間中は,専念義務があるためアルバイト等は禁止されています。そのため,現在,この修習の期間中は,国から給与が支給されています。そうしなければ生活が出来ないからです(現行の裁判所法第67条2項は「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。(以下略)」としています)。

3)しかし,裁判所法が改正されており,「無給」となることが予定されています。更に,「その修習に専念しなければならない」=バイト等禁止も法律上明記されることになりました。従って,研修を受けることは義務ですが,その間,別途生計を立てることを禁ずると言うことになります。つまり,研修中は生活する糧を失います。

3)生活の糧を失った者のために,法律は,研修中の者に生活に必要な資金を貸し付ける制度を創設しました。
 裁判所法第67条の2 1項「最高裁判所は、司法修習生の修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、司法修習生に対し、その申請により、無利息で、修習資金(省略)を貸与するものとする。」という条項を追加したのです。
 つまり,蓄えのない者,生活費を援助の方法が無い者は,1年間生活費等を借りて,義務的研修を受けることを余儀なくされることになりました。

4)一定の国家資格を与えるために研修を義務づけて,その間に生活費を稼ぐことを一切禁止して,生活費を貸し付けるということは,私には不合理としか思えません。そんな制度であるならば,研修制度(司法修習制度)そのものをやめてしまうべきではないかと思います。

5)しかしここで考えなければならないことは,国がわざわざ研修制度(司法修習制度)を設けてそれを義務づけているのはなぜかということです。
 裁判官,検察官,弁護士という制度は,憲法にも定められた制度です。人類の歴史においては数々の人権抑圧の歴史がありましたが,人権を守るために必要なものとして歴史的に意義のあることが確認されたものとしてこれらは憲法にわざわざ示されているのです。

6)裁判所が,国の立法や行政権からの人権侵害に対する砦としての役割を担う面があることは多くの方が理解されていることでしょう。弁護士も人権擁護の側面から言うと同じです。そして,検察官も(今現在は色々と言われていますが),警察等による人権侵害等に対するチェック機能があります。
 このような重要な役割を担うものであるから,十分な研鑽を積む必要があるとして,司法試験という簡単ではない試験を合格した者に対して,それだけでは足らないとして,国は,更に,国の施設での研修を義務づけているのです(研修期間中は,最高裁判所に属する身分となります)。
 
7)研修(司法修習)中にどのような研修を受けるのかと言えば,裁判所に配属されて裁判の実務の研鑽(判決の書き方を習得したり裁判所の仕組みを裁判所の内部から体験する等),検察庁に配属されて検察官の仕事を体得する(例えば,起訴状など検察官が裁判所に提出書類を作成したり,取り調べ等も行います),弁護士事務所に配属されて弁護士としての仕事や役割も覚えます。
 すべての修習生は,これらの全ての研修を受けなければなりません。このような研修を経て,更に,修了試験を受けて合格して始めて,裁判官,検察官そして弁護士の道へと分かれていくことになるのです(修習の間に,各人が進む道を選択します)。

8)このような研鑽を受ける期間中(現在は1年間),生活のための費用を借金をしなければならないということが正しいとは私には思えません。
 我が国では,研修(司法修習)を受けなければ裁判官,検察官,弁護士になれないことが原則です。しかし,研修期間にも生きていくためには生活費等が必要であり,経済的な裏付けがあるか,借金をしなければ乗り越えることが出来ません。そして仮に,新たに用意された借金をしようとすれば,保証人を要求されます。保証人がなければ,上記の借入は出来ません。
法曹になろうとするものは借金してでもというぐらいの気概が無ければならないとい考えは1つの考えでしょう。そして,そのような気概のある者は少なからずあるだろうと思います。でも,現実論で考えると,経済的な裏付けのあるものしか,裁判官,検察官,弁護士になれないということになってしまうでしょう。そのことを危惧します。

9)その研修に大いなる価値があって,だからこそ研修を国が義務づけるのであれば,その研修の期間中,生活のために必要な資金等については国が支給すること,これは当然であると私は思っています。

平井利明のメモ

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