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2010.12.11

平成22年12月07日最高裁判所第三小法廷決定(株式の価格決定関連)

平成22(許)9株式価格決定申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
平成22年12月07日最高裁判所第三小法廷決定

【破棄自判】

原審
東京高等裁判所   
平成21(ラ)2163
平成22年02月18日

裁判要旨
振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に個別株主通知がされることを要する

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=80915&hanreiKbn=01

決定文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101210153607.pdf

「(1) 会社法172条1項所定の価格決定申立権は,その申立期間内である限り,各株主ごとの個別的な権利行使が予定されているものであって,専ら一定の日(基準日)に株主名簿に記載又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定め,これらの者による一斉の権利行使を予定する同法124条1項に規定する権利とは著しく異なるものであるから,上記価格決定申立権が社債等振替法154条1項,147条4項所定の「少数株主権等」に該当することは明らかである。
 社債等振替法154条が,振替株式についての少数株主権等の行使については,株主名簿の記載又は記録を株式の譲渡の対抗要件と定める会社法130条1項の規定を適用せず,個別株主通知がされることを要するとした趣旨は,株主名簿の名義書換は総株主通知を受けた場合に行われるものの,総株主通知は原則として年2回しか行われないため(社債等振替法151条,152条),総株主通知がされる間に振替株式を取得した者が,株主名簿の記載又は記録にかかわらず,個別株主通知により少数株主権等を行使することを可能にすることにある。そして,総株主通知と異なり,個別株主通知において,振替口座簿に増加又は減少の記載又は記録がされた日等が通知事項とされているのは(社債等振替法154条3項1号,129条3項6号),少数株主権等の行使を受けた会社が,振替株式の譲渡の効力発生要件(同法140条)とされている振替口座簿の上記記載又は記録によって,当該株主が少数株主権等行使の要件を充たすものであるか否かを判断することができるようにするためであるから,上記会社にとって,総株主通知とは別に個別株主通知を受ける必要があることは明らかである。同じ会社の振替株式であっても,株価の騰落等に伴ってその売買が短期間のうちに頻繁に繰り返されることは決してまれではないことにかんがみると,複数の総株主通知においてある者が各基準日の株主であると記載されていたということから,その者が上記各基準日の間も当該振替株式を継続的に保有していたことまで当然に推認されるものではないから,ある総株主通知と次の総株主通知との間に少数株主権等が行使されたからといって,これらの総株主通知をもって個別株主通知に代替させることは,社債等振替法のおよそ予定しないところというべきである。まして,これらの総株主通知をもって個別株主通知に代替させ得ることを理由として,上記価格決定申立権が会社法124条1項に規定する権利又は同項に規定する権利に関する規定を類推適用すべき権利であると解する余地はない。
また,社債等振替法154条2項が,個別株主通知がされた後の少数株主権等を行使することのできる期間の定めを政令に委ねることとしたのは,個別株主通知がされた後に当該株主がその振替株式を他に譲渡する可能性があるために,振替株式についての少数株主権等の行使を個別株主通知から一定の期間に限定する必要がある一方,当該株主が少数株主権等を実際に行使するには相応の時間を要し,その権利行使を困難なものとしないためには,個別株主通知から少数株主権等を行使するまでに一定の期間を確保する必要もあることから,これらの必要性を調和させるために相当な期間を設定しようとすることにあるのであって,少数株主権等それ自体の権利行使期間が,社債,株式等の振替に関する法律施行令40条の定める期間より短いからといって,個別株主通知を不要と解することはできない。
そして,個別株主通知は,社債等振替法上,少数株主権等の行使の場面において株主名簿に代わるものとして位置付けられており(社債等振替法154条1項),少数株主権等を行使する際に自己が株主であることを会社に対抗するための要件であると解される。そうすると,会社が裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において申立人が株主であることを争った場合,その審理終結までの間に個別株主通知がされることを要し,かつ,これをもって足りるというべきであるから,振替株式を有する株主による上記価格決定申立権の行使に個別株主通知がされることを要すると解しても,上記株主に著しい負担を課すことにはならない。以上によれば,振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に個別株主通知がされることを要するものと解するのが相当である。
本件において,抗告人が裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において相手方が株主であることを争っているにもかかわらず,その審理終結までの間に個別株主通知がされることはなかったから,相手方は自己が株主であることを抗告人に対抗するための要件を欠くことになる。
(2) 次に,抗告人が相手方に対し会社法172条1項所定の価格決定申立権の行使に個別株主通知がされることを要すると主張することが,信義則に反し,権利の濫用に当たるか否かについて検討すると,上記(1)で説示したところによれば,抗告人が,相手方が株主総会の基準日及び取得の基準日の株主であると記載された総株主通知を2回にわたって受けるなどしていたことをもって,相手方が,その間抗告人の株式を保有し続けており,その価格決定申立権の行使を否定すべき実質的な理由がないことを抗告人が知っていたと断ずることは困難である。原審の指摘する事情をもって,抗告人が,自らが株券電子化会社であることを奇貨とするものであるとも,背信的悪意者に準ずるものであるともいうことはできず,他にその主張が信義則に反し,権利の濫用に当たると評価し得るような事情もうかがわれない。したがって,抗告人が上記のとおり主張することが,信義則に反し,権利の濫用に当たるということはできない。」

平井利明のメモ

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