« 平成23年07月15日最高裁判所第二小法廷判決(更新料と消費者契約法関連) | トップページ | 個人債務者の私的整理に関するガイドライン平成23年7月(東日本大震災で被災者の二重債務問題を踏まえたもの) »

2011.07.15

平成23年07月15日最高裁判所第二小法廷判決(弁護士であるテレビ番組出演者の発言についての不法行為成否関連)

平成21(受)1905損害賠償請求事件  
平成23年07月15日最高裁判所第二小法廷判決

原審
広島高等裁判所
平成20(ネ)454
平成21年07月02日

裁判要旨
弁護士であるテレビ番組の出演者において特定の刑事事件の弁護団の弁護活動が懲戒事由に当たるとして上記弁護団を構成する弁護士らについて懲戒請求をするよう呼び掛けた行為が,不法行為法上違法とはいえないとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81507&hanreiKbn=02

判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110715165447.pdf

判決文より
「本件は,弁護士である平成21年(受)第1905号上告人・同第1906号被上告人(以下「第1審原告」という。)らが,平成21年(受)第1905号被上告人・同第1906号上告人(以下「第1審被告」という。)がテレビ番組で第1審原告らについて弁護士法58条1項所定の懲戒請求をするよう呼び掛けるなどしたことは,第1審原告らの名誉を毀損するとともに,名誉毀損とは別個の不法行為を構成するなどと主張して,第1審被告に対し,第1審原告らの被った精神的苦痛について慰謝料等の支払を求める事案」

「刑事事件における弁護人の弁護活動は,被告人の言い分を無視して行うことができないことをその本質とするものであって,被告人の言い分や弁護人との接見内容等を知ることができない場合には,憶測等により当該弁護活動を論難することには十分に慎重でなければならない。前記認定事実によれば,第1審被告は,本件被告人本人の言い分や本件弁護団との接見内容等本件弁護活動の当否に関する重要な情報を直接に有しているわけではないにもかかわらず,これを論難し,本件呼び掛け行為を行ったというのであって,第1審被告が,弁護士であることを考慮すると,刑事弁護活動の根幹に関わる問題について,その本質についての十分な説明をしないまま,上記(1)のような考えの下に,多数の視聴者が懲戒請求をすれば懲戒の目的が達せられる旨の発言をするなどして視聴者による懲戒請求を勧奨する本件呼び掛け行為に及んだことは,上記の問題の重要性についての慎重な配慮を欠いた軽率な行為であり,その発言の措辞にも不適切な点があったといえよう。そして,第1審原告らについて,それぞれ600件を超える多数の懲戒請求がされたことにより,第1審原告らが名誉感情を害され,また,上記懲戒請求に対する反論準備等の負担を強いられるなどして精神的苦痛を受けたことは否定することができない。」

「しかしながら,本件呼び掛け行為は,懲戒請求そのものではなく,視聴者による懲戒請求を勧奨するものであって,前記認定事実によれば娯楽性の高いテレビのトーク番組における出演者同士のやり取りの中でされた表現行為の一環といえる。その趣旨とするところも,報道されている本件弁護活動の内容は問題であるという自己の考えや懲戒請求は広く何人にも認められるとされていること(弁護士法58条1項)を踏まえて,本件番組の視聴者においても同様に本件弁護活動が許せないと思うのであれば,懲戒請求をしてもらいたいとして,視聴者自身の判断に基づく行動を促すものである。その態様も,視聴者の主体的な判断を妨げて懲戒請求をさせ,強引に懲戒処分を勝ち取るという運動を唱導するようなものとはいえない。他方,第1審原告らは,社会の耳目を集める本件刑事事件の弁護人であって,その弁護活動が,重要性を有することからすると,社会的な注目を浴び,その当否につき国民による様々な批判を受けることはやむを得ないものといえる。そして,第1審原告らについてそれぞれ600件を超える多数の懲戒請求がされたについては,多くの視聴者等が第1審被告の発言に共感したことや,第1審被告の関与なくしてインターネット上のウェブサイトに掲載された本件書式を使用して容易に懲戒請求をすることができたことが大きく寄与しているとみることができる。のみならず,本件懲戒請求は,本件書式にあらかじめ記載されたほぼ同一の事実を懲戒事由とするもので,広島弁護士会綱紀委員会による事案の調査も一括して行われたというのであって,第1審原告らも,これに一括して反論をすることが可能であったことや,本件懲戒請求については,同弁護士会懲戒委員会における事案の審査は行われなかったことからすると,本件懲戒請求がされたことにより,第1審原告らに反論準備等のために一定の負担が生じたことは否定することができないとしても,その弁護士業務に多大な支障が生じたとまでいうことはできない。
(4) これまで説示したところによれば,第1審被告の本件呼び掛け行為は,弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとして,弁護士会における自律的処理の対象として検討されるのは格別,その態様,発言の趣旨,第1審原告らの弁護人としての社会的立場,本件呼び掛け行為により負うこととなった第1審原告らの負担の程度等を総合考慮すると,本件呼び掛け行為により第1審原告らの被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く,これを不法行為法上違法なものであるということはできない。」

裁判官竹内行夫の補足意見がある。

平井利明のメモ

|

« 平成23年07月15日最高裁判所第二小法廷判決(更新料と消費者契約法関連) | トップページ | 個人債務者の私的整理に関するガイドライン平成23年7月(東日本大震災で被災者の二重債務問題を踏まえたもの) »

裁判例」カテゴリの記事