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2011.11.23

平成23年11月22日最高裁判所第三小法廷判決(求償権と原債権関連)

平成22(受)78求償債権等請求事件
平成23年11月22日最高裁判所第三小法廷判決

【破棄自判】

原審
大阪高等裁判所
平成21(ネ)924
平成21年10月16日

裁判要旨
弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81775&hanreiKbn=02

判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111122145843.pdf

判決文より
「本件は,平成19年8月29日に破産手続開始の決定を受けたA(以下「破
産会社」という。)の従業員らの同年7月分の給料債権(以下「本件給料債権」という。)を同社のために弁済した上告人が,上記従業員らに代位して,同社の破産管財人である被上告人に対し,破産手続によらないで,本件給料債権の支払を求める事案」

「弁済による代位の制度は,代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために,法の規定により弁済によって消滅すべきはずの原債権及びその担保権を代位弁済者に移転させ,代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり(最高裁昭和55年(オ)第351号同59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号885頁,同昭和58年(オ)第881号同61年2月20日第一小法廷判決・民集40巻1号43頁参照),原債権を求償権を確保するための一種の担保として機能させることをその趣旨とするものである。この制度趣旨に鑑みれば,求償権を実体法上行使し得る限り,これを確保するために原債権を行使することができ,求償権の行使が倒産手続による制約を受けるとしても,当該手続における原債権の行使自体が制約されていない以上,原債権の行使が求償権と同様の制約を受けるものではないと解するのが相当である。そうであれば,弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができるというべきである。このように解したとしても,他の破産債権者は,もともと原債権者による上記財団債権の行使を甘受せざるを得ない立場にあったのであるから,不当に不利益を被るということはできない。以上のことは,上記財団債権が労働債権であるとしても何ら異なるものではない。したがって,上告人は,破産手続によらないで本件給料債権を行使することができるというべきである。」

裁判官田原睦夫の補足意見
「1 代位弁済に基づく求償権と原債権との関係に関する従前の判例法理について債権が第三者により代位弁済がなされた場合に代位弁済者が取得する求償権と原債権との関係については,法廷意見が引用する2件の判例によって,①弁済による代位の制度は,代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために,弁済によって消滅するはずの原債権及びその担保権を法の規定により代位弁済者に移転させるものであり,②代位弁済者に移転した原債権及びその担保権は,求償権を確保することを目的とする附従的性質を有する,との判例法理が確立された。本件に関する求償権及び原債権と倒産手続との関係についての見解の対立は,上記判例法理をいかに解するかに関連するものであるので,法廷意見を支持する立場から,上記の判例法理に関して私の理解するところを以下に述べる。
(1) 「求償権を確保するため」の意義について判例法理のいう「求償権を確保するため」の意義について,学説上種々の見解が説かれているが,私は,法廷意見が述べるように,原債権を「求償権を確保するため」の一種の担保として機能させることを意味すると解するのが相当であると考える。
代位弁済者の「求償権を確保するため」とは,「求償権の回収を確実ならしめるため」を意味するものと解されるのであり,その実質は,原債権を求償権者に法律上当然に移転させることによって,原債権をして求償権に対する担保的機能を果たさせようとするものであると言える。
その担保的機能としてどのような内容を有しているかについて,上記判例法理を踏まえた上で,原債権の保証や時効と求償権との関係等個別の論点について論じられてきた支配的見解を基に考察すると,原債権の移転による担保的機能とは,求償権確保のために原債権が譲渡担保の目的として求償権者に移転したのと同様の関係に立つと解するのが,両債権の関係を説明する上で最も理解しやすいと考えられる。
以下,そのような理解を前提に,求償権と原債権との主な関係についてみてみる。
ア 求償権と原債権とは別個の債権である。それゆえ,求償権と原債権とは以下のような関係になる。
① 原債権自体が求償権者に移転するのであるから,原債権それ自体の有する性質は,求償権者に移転することによって変化することはない。すなわち,原債権が一般の先取特権等優先権のある債権や,他の債権に後れてのみ行使が認められる劣後債権であるときは,原債権が求償権者に移転しても,その債権の性質が変化することはなく,求償権者は原債権の性質に従って原債権を行使することになる(なお,租税債権のごとく,弁済による代位自体がその債権の性質上生じない場合は別である。)。
② 求償権と原債権とは,それぞれ別個に時効が進行する。
③ 求償権者が原債権を行使する場合,債務者は原債権に対する抗弁を主張することができる。
イ 原債権は,求償権の確保のために移転するのであるから,求償権者が原債権を行使する場合において,債務者は,求償権に対する抗弁を主張することができる。
ウ 原債権の保証人は,原債権が担保目的とはいえ求償権者に移転するのであるから,求償権者が原債権を行使し得る限り,保証責任を追及される関係に立つ。
エ 原債権のために設定された担保権は,原債権が担保目的とはいえ求償権者に移転するのであるから,その随伴性により当然に求償権者に移転する。求償権者は,担保権設定者に対して,その移転に伴う対抗要件の具備を請求することができる。
また,求償権者は,原債権を行使することができる場合には,原債権のために設定された担保権を実行することができる。
(2) 原債権が「附従的性質」を有するとの意義について
判例法理にいう附従的性質の意義について,次のように理解することができると考える。
① 求償権が消滅すれば,当然に原債権も消滅する。
② 求償権につき,期限の猶予が与えられるなど,その弁済期が未到来の場合は,原債権の弁済期が到来していても,原債権を行使することはできない。
③ 債務者との関係で,求償権不行使特約や他の債権に劣後して行使する旨の劣後特約が締結されている場合などには,原債権それ自体に何らの制約が課されていなくても原債権を行使することができない。
2 倒産手続における求償権と原債権との関係について
倒産手続において求償権を行使するに当たっては,求償権者は破産法104条,民事再生法86条2項,会社更生法135条2項の基本的規律の下にその権利の行使が認められるが,求償権とともに原債権をも行使することができる場合の両債権の関係は,以下のとおりになると解される。
(1) 求償権者は,求償権と原債権の双方の債権につき倒産手続に参加(債権届出)することができる。その場合,両債権が重複する限度ではその一方の行使しか認められないが,求償権の額が原債権の額を上回るとき(多くの場合,遅延損害金の利率は求償権の方が原債権よりも高い。)には,その上回る範囲で求償権を行使することができる。また,原債権が倒産手続上の優先債権であるときは,求償権者は原債権の優先債権としての権利を行使することができる。
(2) 求償権者が債権届出をしていなくても,原債権の債権届出がなされているときは,求償権者が破産法104条(及び民事再生法,会社更生法で準用する場合)の要件を満たす限り,求償権者は原債権の届出名義の変更(破産法113条1項,民事再生法96条,会社更生法141条)をすることができるが,これは譲渡担保権の行使に類するものとしての届出名義の変更と理解することができる。
(3) 求償権が,倒産手続による制約を受けて倒産手続によってのみその行使が認められる場合であっても,原債権は求償権確保のための譲渡担保に類するものであるから,倒産手続上,原債権を上記制約を受けることなく行使することが認められるか否かを検討する必要がある。
そして,原債権が財団債権や共益債権である場合には,それらの債権は倒産手続による制約を受けることなく行使することができるから,求償権自体の行使が倒産手続による制約を受けても,原債権を行使することができ,求償権は原債権の行使によって満足を得る限度でその行使が制約されることになる。
次に,原債権が実体法上優先権のある債権である場合には,破産手続及び会社更生手続では,優先債権であっても,その行使は各手続による制約を受けるから各手続に参加する必要があるが,民事再生手続では,優先債権については再生手続による制約が存しないから自由に行使することができる。
なお,原債権につき担保権が設定されている場合には,破産手続や民事再生手続では別除権として行使でき,それによって満足を受けることができない限度で各手続に参加できること,会社更生手続では更生担保権として手続に参加できることはいうまでもない。」
「弁済による代位により求償権者に移転する原債権と求償権との関係は,求償権を担保するべく原債権が移転するもので,その移転の法的構成は,譲渡担保に類するものと解されるのである。以上よりすれば,財団債権たる性質を有する未払賃金債権を代位弁済した上告人は,破産手続による制約を受けることなく原債権それ自体を行使し得るのであって,それを否定した原判決は破棄を免れないものというべきである。」

平井利明(弁護士@中村・平井・田邉法律事務所)のメモ

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