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2011.12.08

平成23年2月8日京都地方裁判所決定(医療事故報告書についての提示命令申立て関連)

決定

(当事者略)

 京都地方裁判所平成22年(モ)第357号訴え提起前の証拠保全事件(以下「本件証拠保全事件」という。)について,申立人が,相手方は,申立人に係る医療事故に関して医師賠償責任保険事故・紛争通知書を作成し,その写し(以下「本件書類」という。)を所持していると主張し,本件書類について提示命令の申立て(以下「本件提示命令申立て」という。)をしたので,当裁判所は,次のとおり,決定する。

主文
本件提示命令申立てを却下する。

理由
第1 申立ての趣旨と答弁等
 本件申立ての趣旨及び理由は,別紙1「意見書」写し,別紙2「意見書(2)」写し,別紙3「意見書(3)」写し各記載のとおりである。これに対する相手方の主張は,別紙4「意見書」写し,別紙5「意見書2」写し各記載のとおりである。
(注:意見書はいずれも略)
第2 当裁判所の判断
1 一件記録によれば,申立人の求める医療賠償責任保険事故・紛争通知書の写し(本件書類)が存在し,これを相手方が所持していることが認められ,本件書類は,検証物目録第11項に記載の「その他医師賠償責任保険に関して作成された記録一切(電磁的記録を含む)」に該当すると認められる。
2 検証物提示命令は,文書提出義務がある場合に限って発すべきであり,本件書類が「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(民事訴訟法220条4号ニ,以下「自己利用文書」という。)に該当するか否かが問題となるところ,本件書類は,事故通知書の控えであるが,その情報としての実質は,事故通知書記載の内容にあるから,上記判断にあたっても,控えとしての形式面よりも,情報としての実質に着目して判断を行うこととする(最高裁判所平成19年(許)第18号同年8月23日第二小法廷決定・最高裁判所裁判集民事225号345頁参照。)。
3  ところで,ある文書が,その作成目的,記載内容,これを現在所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示される個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は自己利用文書に当たると解するのが相当である(最高裁平成11年(許)第2号同年11月12日第二小法廷決定・民集53巻8号1787頁参照)。
 この点,申立人は,本件書類は,医療機関が,外部機関である保険会社に対し,紛争が生じた際に提出する目的で作成するものであるなどとして,本件書類は外部の者に開示することを予定されていないとはいえず,むしろ積極的に開示することを予定している旨主張する。
 しかし,一件記録によれば,本件書類の原本は,医療機関が医師賠償責任保険に加入する際に保険会社との聞で締結した契約に基づき,保険会社が,医療機関において医療事故が起こった際に,当該事故に対して保険金の支払をするか否かを判断するため,医療機関に作成させた文書であること,本件書類の原本には,「初診時の状況」,「初診時より身体障害発生までの経緯」及び「身体障害発生後の医療上の処置」等の客観的な事実経過のみならず,「身体障害発生の状況とその原因」,「患者側のクレーム内容」,「患者のクレームに対する反論・見解」及び「事故の背景・要因」等が記載されていることがそれぞれ認められるところ,本件書類の原本の前記作成経緯や作成目的,記載内容に加え,本件書類の原本が保険会社及び医療機関間の純然たる私的契約に基づいて作成されていること等も合わせ考慮すると,本件書類の原本は,医療機関及び保険会社以外の外部者に開示されることは基本的に予定されていない文書といえ,また,本件書類の原本作成にあたって,保険会社は医療機関にとっての外部者ではなく,内部者に当たるといえる。したがって,本件書類の原本は,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書というべきであり,それと同内容が記載された本件書類についても同様である。よって,申立人の前記主張は,採用することができない。
 また,本件書類の原本には,前記のとおり,「身体障害発生の状況とその原因」,「患者側のクレーム内容」,「患者のクレームに対する反論・見解」等が記載されており, こうした記載内容が開示されれば,医療機関による忌憚のない意見を記載することが躊躇され,保険会社による保険事故の有無等の判断も著しく困難となる。そうすると,本件書類の原本の開示により,医療機関及び保険会社における自由な意思形成が阻害され,本件書類の所持者の側に著しい不利益が生じるといえ, これは,それと同内容の本件書類についても同様である。
 本件において,前記特段の事情は認められないから,本件書類は, 自己利用文書に当たるといえる。
4  よって,本件書類に対する提示命令申立ては,これを却下する。

平成23年2月8日

京都地方裁判所第4民事部
裁判官 遠藤謙太

注:事務所で担当した案件の決定文をOCR処理等したものを利用しており誤変換等が含まれている可能性があります。

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