« 社外取締役ガイドライン(日本弁護士連合会) | トップページ | 「これまでの議論の整理」@「統合医療」のあり方に関する検討会 »

2013.02.22

「胃癌と信じ込み手術実施,病変の変化を再検討せず有責」@日経メディカル2月号

「胃癌と信じ込み手術実施,病変の変化を再検討せず有責」
日経メディカル2月号 (Nikkei Medical 2013.2)

東京地方裁判所平成23年5月19日判決
(判例タイムズ1368号178頁)
「原告は,A医師が,本件生検標本について低分化腺癌・グループ〈5〉と診断したことについて,診断を誤った注意義務違反があると主張する。
この点に関し,原告は,A医師がグループ〈5〉(癌と確実に診断される病変)と診断したにもかかわらず,結果的には本件における原告の病変は癌ではなかったことから,A医師の注意義務違反が推定されると主張する。
しかしながら,通常の診療行為については,結果的に診断が後に判明した正しい診断と異なっていたからといって,担当医師の注意義務違反が直ちに推定されることにはならないところ,病理診断も,診断当時に得られた情報及び得ることのできた情報の範囲内で下されるべきものであることには何ら変わりがないから,原告の病変が結果的に癌ではなかったことのみから,直ちにA医師が確実な根拠がないのに,癌であると診断した注意義務違反があると推定されるものではない。」

医療事件を集中的に審理している裁判部(医療集中部)では,結果が悪いだけで,過失が推定されるものでは無いという判断のなされることが多いですね。
医療のもつリスクを十分に理解しているが故の考えだといえます。

その他の事件と一緒に医療事件も審理している裁判所等では,医学に対する理解の無いことが反映される判断が少なくないですね。
例えば,
那覇地方裁判所平成23年6月21日判決
(判例時報2126号105頁,判例タイムズ1365号214頁)
は,ERCPによって総胆管結石を確認した上、EPBDを施行して除去を試みたが、これによって除去することが出来なかったというケースについての判決ですが,次の通り判示しています。
「本件外科手術(除去失敗と嵌頓)について
ア結石除去の失敗と原因
丙川医師において、経胆のう管法、総胆管切開法の順で、本件外科手術を実施し、砕石鉗子、バルーン等も利用しながら原告の総胆管結石一個の除去を試みたが、これを実現できず、本件外科手術を断念したことは、前記(1)のとおり認められる。
そして、経胆のう管以外の方法で除去できなかった原因について、丙川医師は、経胆のう管法の実施中に結石を押し込めてしまうとともに、胆管内の壁に浮腫が生じ、結石の嵌頓により、その他の結石処理法が成功しなかった旨を証言しており、これらの証言は、入院診療録中の経過表の記載と照らし合わせても、信用し得るものである。
したがって、本件外科手術においては、経胆のう管法によって総胆管内の結石を除去することができず、むしろ嵌頓させてしまったため、最終的に結石の除去に成功しなかったものと認められる。
イ結石嵌頓の原因
丙川医師は、経胆のう管法による採石について、結石を取り出す操作に手間取り、手術自体が通常より長時間かかったこと、手術操作により粘膜面を刺激することになり、長く刺激するほど浮腫は出やすくなること、結石を押し込めてしまったことと浮腫が合わさって結石が抜けなくなったことをそれぞれ証言し、他方、なぜ操作に手間取ったかについては、「…うまく取れなかったとしか言いようがないです」と答えるのみで、何らその原因の説明ができていない。

例えば,気管内挿管などでも,ベテランの方が実施しても,上手くいかないときというのはあるそうです。なぜ,そのような場合に,上手くいかなかったことの理由が説明できるかといわれると,出来ないとのことです。
実は,全く同じ症例というのは存在しないのですね。
先日,ある(大学に勤務される)医師が話していましたが,「手術は毎回異なる。1秒1秒が新たな判断である」と。
実は,法律家が扱っている事件への対応も全く同じことなのですね。

|

« 社外取締役ガイドライン(日本弁護士連合会) | トップページ | 「これまでの議論の整理」@「統合医療」のあり方に関する検討会 »

活動」カテゴリの記事