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2013.03.03

「日本と韓国における医療者と患者の対話 -ADR,産科補償制度,クレーマー患者問題などについての日韓の対応」@「医療と法」関西フォーラム

「日本と韓国における医療者と患者の対話 -ADR,産科補償制度,クレーマー患者問題などについての日韓の対応」
平成25年3月2日(土)14:00~
大阪市北区中之島 大阪大学中之島センター4階406号
報告
日本側:石川寛俊先生(関西学院大学法科大学院教授,弁護士)
韓国側:金敏圭先生(東亜ロースクール教授)

韓国では,医療事故被害救済及び医療紛争調停等に関する法律」が制定され2012年(平成24年)4月8日に施行されています。
その法律によると,調停や仲裁を扱う「医療仲裁院」が設立され,医療事故鑑定団を抱えて原則60日(最長90日)以内に医療鑑定を行い,原則90日(最長120日以内)に調停決定を行うとのことであります。
日本の実態から考えると,かなり先鋭的な内容で有ることから関心をもっていたのだが,それに関する研究会があるとのことで拝聴に行ってきました。

なお,制度については,龍谷大学の紀要に非常勤講師の李庸吉氏による『韓国における「医療事故被害救済及び医療紛争調停等に関する法律」』という論文が掲載されています。
(この度の会には,李先生もおられました)。
韓国医療紛争調停仲裁院の日本語パンフレットもあります。

研究会の後には,懇親会も有り,その懇親会も含めて面白い話を多数聴くことが出来ました。

韓国は人口が日本の37%程度のようですが医療訴訟の提起件数は日本を上回っているようですね。
その事と関連するのでしょうが,韓国では医療機関の責任(過失)の認められる割合が4割を超えるようですね。
なお,韓国でも,過失の前提として(我が国から輸入された)医療水準論が議論されるようですね。ただし,日本では,どちらかというとそれまで極めて高度の基準が設けられていたところ,未熟児網膜症の議論等を経て,現実的なベースに引き戻すために医療水準論が論じられるような経緯があったところ,韓国では,そのような歴史的経緯が無い状態で医療水準論が導入されたために,医療水準論は比較的高めのもの?となっているようで,それが(日本と比較したところの)医療過誤認容率の高度化に繋がっているようですね
また,医療事件が刑事事件に持ち込まれるケースも多いようですね。
そして,これらのことが,新たな制度を設ける要因にもなっているようですね。
因みに,韓国では,医師賠償責任保険に入れない医師も少なくないようですね。医師会加入者については3000万ウォンの範囲ではベースとなるような共済(但し,医師会は強制加入ではないので医師会加入者でなければそのカバーもない)があるようですが,それでは損害賠償額に満たないことがあり,医師賠償保険に加入できない医師や医療機関は差額分は自腹となるため,結果的には,損害賠償責任が認められても,医師や医療機関から支払われないケースも生じているようですね。
このような背景があるからこそ,新たな制度の構築が必要になったことのようですね。

ところで,この新しい制度では,調停が成立すると刑事的な免責を得られるように個人的に思っていましたが,実際には,かならずしもそうでは無いようですね。
なお,和解への応諾のあったケースでは,法律に規定された通り,60日以内に鑑定がなされまた90日以内に和解決定がなされているようですが,今のところ,鑑定団による鑑定(これは調停制度に組み込まれているので,鑑定のための費用は別途当事者負担とならないとのこと)結果は5割を超える過誤認定率(6割程度)になっているようですね。なお,裁判上の和解等における鑑定人に対する報酬は,日本と比べると驚くほど低いようですね。そのこともあって,出来上がった鑑定意見書は必ずしも精度の高いものでは無いようですね。
これらの事にも関連するのかも知れませんが,新たな調停制度でも,和解のテーブルに着くことを応諾する率もそれほど高くないようですね(現時点では,3割台,但し,未だ始まったばかりの制度なので,正確な率を出すにはさらに期間を要するのだと思います)。
今日の話を聞いていると,医療機関側において,調停での解決を無理に選択する必要性は低いようにも感じられました。インセンティブが低すぎるということでしょう。

ところで
鑑定の結果が悪ければ,調停の結果も自然の流れの結果となりますが,医師賠償保険に入ることが出来ない方が一定以上あるとすれば,支払えないという事態が結構生じそうですね。
そのような現実があるからこそ, 韓国では医療機関の支払能力が大きく問われて、国家等による代払制度が議論されるようで,この度,調停で合意した金額が支払われない場合には代払いがなされるとのこと。
新しい法律では代払いのことも強調されているのですが,日本ではそのような議論は今のところあまり起こっていないところ,韓国ではそのような支払の点がなぜ力説されるのだろうかと不思議に思っていたのですが,色々な実情に関するお話を伺って納得出来ました。
色々な点で日本とは事情が大きく異なるようですね。

なお,懇親会の席では,中国の情報にも接する機会がありましたが,中国では医師に対する個人攻撃も過激な場合が有り,医師を含めた医療スタッフの死者もそれなりの数となるようですね。怖ろしいことです。

その国の制度は,国情をベースとするものであることから,その国の実情を知らなければ理解できるものではないでしょう。
その意味で,今宵は,貴重な機会でした。

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