« 似た画像の検索(画像検索) | トップページ | 動産売買の先取特権についての対抗要件具備の要否 »

2013.04.23

平成25年04月19日最高裁判所第三小法廷決定(文書提出命令関連)

平成25(行フ)2文書提出命令申立一部認容決定に対する許可抗告事件
平成25年04月19日最高裁判所第三小法廷決定

【破棄自判】

原審
広島高等裁判所
平成22(行タ)1
平成24年11月16日

裁判要旨
全国消費実態調査の調査票情報を記録した準文書が民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の「その提出により…公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たるとされた事例」

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83206&hanreiKbn=02

決定文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130422160241.pdf

「本案訴訟は,広島県内に居住して生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている相手方らが,同法の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)の数次の改定により,原則として70歳以上の者を対象とする生活扶助の加算が段階的に減額されて廃止されたことに基づいて所轄の福祉事務所長らからそれぞれ生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定を受けたため,保護基準の上記改定は憲法25条1項,生活保護法3条,8条,9条,56条等に反する違憲,違法なものであるとして,上記福祉事務所長らの属する地方公共団体を被告として上記各保護変更決定の取消し等を求める事案」
「本件は,相手方らが,本案訴訟の控訴審において,厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たって根拠とした統計に係る集計の手法等が不合理であることを立証するために必要があるとして,抗告人の所持に係る下記の準文書(以下「本件申立て準文書」という。)につき,文書提出命令の申立て(以下「本件申立て」という。)をした事件」

「本件申立てに関し,民訴法231条において準用する同法223条3項所定の当該監督官庁である総務大臣は,同項に基づく意見聴取手続において,仮に本件申立て準文書が本案訴訟において提出されると統計行政に対する信頼を損ない,今後の統計調査の実施に著しい支障が生ずることなどを理由として,本件申立て準文書が同法220条4号ロ所定の「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たる旨の意見を述べ,また,本件申立て準文書の所持者である抗告人は,同様の理由により本件申立て準文書を提出すべき義務を負わない旨の意見を述べた。」

「基幹統計調査としての全国消費実態調査における被調査者の当該統計制度に係る情報保護に対する信頼の確保に係る上記(1)の要請に加え,全国消費実態調査に係る調査票情報である本件準文書に記録された情報の性質や内容等に係る上記(2)の事情も併せ考慮すれば,仮に本件準文書が本案訴訟において提出されると,上記(1)及び前記1(5)ウのように調査票情報に含まれる個人の情報が保護されることを前提として任意に調査に協力した被調査者の信頼を著しく損ない,ひいては,被調査者の任意の協力を通じて統計の真実性及び正確性を担保することが著しく困難となることは避け難いものというべきであって,これにより,基幹統計調査としての全国消費実態調査に係る統計業務の遂行に著しい支障をもたらす具体的なおそれがあるものといわなければならない。
以上によれば,本件準文書は,民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の「その提出により…公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たるものというべきである。」

裁判官田原睦夫の補足意見より
「私は,法廷意見に与するものであるが,民訴法220条4号ロの意義に関して判示する最高裁平成17年(許)第11号同年10月14日第三小法廷決定・民集59巻8号2265頁につき私の理解するところについて述べたうえで,基幹統計と同条4号ロの要件との関係につき,以下のとおり補足して意見を述べる。
1 民訴法220条4号ロの「その提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」の意義について
(1) 上記最高裁平成17年決定
同決定は,「民訴法220条4号ロにいう『その提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある』とは,単に文書の性格から公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずる抽象的なおそれがあることが認められるだけでは足りず,その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要である」との一般的な判示をしているところ,その判示するところを理解するうえで,事案の内容と同判示の関係について以下にみておく。
事案は,労災事故に係る労働基準監督署等の調査担当者作成の災害調査復命書に対する文書提出命令の申立てであり,その内容には,事故に係る客観的な事実関係のほか,以下の二種類のものが含まれていた。
① 当該調査担当者が,事業場や労働者らから聴取したところを取纏めたもの,事業者から提供を受けた関係資料や当該事業場内の見分等に基づいて推測,評価,分析した事項。
② 再発防止策,行政指導の措置内容についての当該担当者の意見,署長判決及び意見等の行政内部の意思形成過程に関する情報。
同決定は,①の情報に係る部分が本案訴訟において提出されても,関係者の信頼を著しく損ない,また以後調査担当者が労働災害に関する調査を行うに当たって関係者の協力を得ることが著しく困難となるということや,提出によって災害調査復命書の記載内容に実質的な影響が生ずるとは考えられないので,公務の遂行に著しい支障が具体的に存在するということはできないとして,同号ロ該当性を否定した。
他方,②の情報に係る部分は,行政内部の意思形成過程に関する情報が記載されたものであり,その記載内容に照らして,これが本案事件において提出されると,行政の自由な意思決定が阻害され,公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが具体的に存在することが明らかであるとして,同号ロ該当性を肯定した。
(2) 文書の内容と同号ロ該当性の判断
文書の内容が同号ロに該当するか否かは,上記最高裁平成17年決定を踏まえると,以下のとおり解析することができるものと解される。
ア 公共利益を害する文書該当性
文書の記載内容自体に高度の公益性があり,それが公表された場合には,公共の利益を害することが明らかな文書がそれに当たると解される。例えば,防衛秘(東京高裁平成20年2月19日決定・判例タイムズ1300号293頁は,元海上自衛隊員の自殺事故に関する報告書について,自衛艦の乗員数,泊地等につき同号ロ該当性を肯定した。),外交秘,治安関係事項に関する文書等がそれに当たるであろう。
イ 公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれのある文書該当性
公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれの有無が問題になり得る文書は,以下のとおり分類できる。
(ア) 当該文書の内容から,それが公表されること自体が公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあると認められる文書
例えば,行政内部の意思形成過程の文書で,公表が予定されていない文書(同条4号ニ本文の「内部文書」に相当する文書),具体的には,上記平成17年決定の②の文書,病院の医療事故に関し病院内部で作成された報告書等(広島高裁岡山支部平成16年4月6日決定・判例時報1874号69頁,東京高裁平成23年5月17日決定・判例タイムズ1370号239頁等),相手方との信頼関係保持との関係上,公表することが予定されていない文書(最高裁平成17年(行フ)第4号同年7月22日第二小法廷決定・民集59巻6号1888頁・外務省が口上書の形式で外国公機関に交付した文書の控え等),非公開の委員会の議事録等がそれに当たると解される。
(イ) 当該文書の内容が,訴訟当事者に直接関係し,あるいは訴訟の争点に関連する事項を内容とする文書
a 訴訟当事者に直接関連する事項を内容とする文書例えば,事故に係る損害賠償請求訴訟において,当該事故に関する報告書のうち,当該訴訟当事者に直接関係する部分等については,それが公表されることにより生じ得る支障の事項,内容を具体的に想定し得るのであり,それが著しい支障と評価すべきものか否かは,当該訴訟の内容に応じて個別具体的に検討されるべきものである(多くの場合,その支障は否定されるであろう。)。
b 訴訟当事者に間接的に関連する事項を内容とする文書
例えば,訴訟の対象たる事故の遠因を調査するための第三者からの聴取書,再発防止策のための検討資料等がそれに当たるであろう。
かかる文書の場合には,①それを公表すること自体により当該第三者の利益を侵害し,そのことが公務の遂行に著しい支障を生じるおそれをもたらす場合と,②その公表により,同種の事故が生じた場合に同様の調査を行うことが困難となることとなって公務の遂行に著しい支障が生ずる場合とが想定される。
そのうち,①については,具体的なおそれの有無を個別事案毎に検討することが可能であるが,②については,将来予測であるだけに,その具体的なおそれの認定は,①に比すれば具体性の程度を緩やかに解さざるを得ないと言える。
かかる観点から4号ロの要件該当性を肯定したものとして,最高裁平成15年(許)第48号同16年2月20日第二小法廷決定・裁判集民事213号541頁(漁業補償交渉資料として作成された補償額算定資料),前掲東京高裁平成20年2月19日決定の事故報告書の一部等がある。
(ウ) 当該文書が訴訟当事者と関係なく作成された文書である場合
その場合も(イ)bと同様に,①それが公表されることにより,その内容に関わる関係者の利益を直接侵害するおそれがあり,そのことによって公務の遂行に著しい支障を来すか否かという点と,②その公表により,将来それと同種の文書を作成することに困難を来し,その結果,爾後の公務の遂行に著しい支障を来すか否かが問題となり得る。
そのうち①の点は,ある程度具体的に検討することが可能であるが,本件統計調査の如く,法廷意見に記載したようにその対象者が多数に上る場合には,ある程度緩やかなレベルで判断せざるを得ないと言えよう。また②の点は,より一般的な将来予測であるだけに,(イ)bの場合に比して,具体性の程度をより緩やかに解さざるを得ないと言えよう。
ウ 小括
以上検討したとおり,公務の遂行に著しい支障が生ずるか否かの認定における具体性の程度は,当該文書の内容(訴訟当事者との関係及びその記載内容)との関係から,比較的明確に認定し得るものから,その生ずるおそれの事項や内容について相当程度まで具体的に想定し得ても,それが生ずるおそれの認定についてはある程度緩やかなレベルに止まらざるを得ないものがあると言える。
本件準文書についても,以上に述べたところを前提に検討する必要があるといえよう。なお,その公務の遂行に著しい支障が生ずるか否かの認定においても,後記3に記載する相関的な観点から認定がなされるべきものと解される。
(以下略)」

【コメント】
田原先生の意見には,最高裁平成17年(許)第11号同年10月14日第三小法廷決定をふまえながら「民訴法220条4号ロ」の「その提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」の意義について書かれていますね。
「(ア) 当該文書の内容から,それが公表されること自体が公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあると認められる文書」は文書提出義務がないとしているのですが,その中に「病院の医療事故に関し病院内部で作成された報告書等(広島高裁岡山支部平成16年4月6日決定・判例時報1874号69頁,東京高裁平成23年5月17日決定・判例タイムズ1370号239頁等)」が具体例として示されていますね。

|

« 似た画像の検索(画像検索) | トップページ | 動産売買の先取特権についての対抗要件具備の要否 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事